第2話【風星の魔術師(セレスティアル)】
「ほぉ、今月もアクアが1番の悪人確保数か。ご苦労だ」
「ハイハイお褒めに預かり光栄ですよ」
現在俺の目の前で椅子に座って資料を読んでいる男は「白狼 庄司」 俺が所属している「六星魔術師」の総司令官をしている男だ
50代後半にもなるのに今も尚第一線で活躍している
「これならNo.1になってもいいんじゃないか?」
「前にも言ったでしょ?No.1になると色々と面倒なことが増えるからあいつに任せてるんだって」
「そう言ってもなぁ、実績があるのだから」
「そうだよ!!こんな面倒事ばっかり押し付けてさぁ!!」
「おお、シルフィ居たのか」
「居たのかじゃないよ!!」
この騒いでいるのが「六星魔術師」の現No.1「風星の魔術師」の「シルフィ」事「五十嵐 柚希」だ
風の最上位能力使いということもありその能力はかなり強力なのだが今まで1回も俺との戦闘に勝ったことがない
だが何故No.1がこのシルフィなのかと言うと実は「六星魔術師」のNo.1になると様々なパーティーや会議に呼ばれるのだがそれがまぁめんどくさいめんどくさい
という経緯で俺はシルフィにNo.1を押し付け続けているのだ
ちなみに他のメンバー達もNo.1はしたくないためシルフィにその役割を全て投げやりである
「もぉ!指揮官からも何か言ってやって下さいよ!!」
「まぁワシとしてもアクアに是非No.1をしてもらいたいんだが…」
「ですよね!!」
「何しろアクアにはイージスの仕事もなるからなぁ、無理にやれということも出来ないんだ」
「それに比べてお前はいつも暇してるもんな」
「はぁ!?何よそれ!!」
俺がシルフィを煽るとシルフィはキレて俺の方向に風の刃を飛ばしてきたが俺はそれを水の壁で防いだ
「あ〜!ムッかつく!!その水の壁退けなさいよ!!」
「じゃあお前も風の刃を飛ばし続けるのやめろよ」
「そんなことしたら攻撃出来ないじゃない!」
「だから壁張ってんだよ」
「まぁまぁ落ち着いて。もうこれ以上事務所で暴れないでくれ」
司令官の言葉にシルフィは空中に浮かべていた4つの風の刃を消した
あんな即死級のものをバンバン放ってくるのだからこのバカはどうしようも無いのだ。普通の人間なら初めで死んでいる
そんな時事務所の扉が開く音がしたので扉の方向を見ると紡が資料を持って立っていた
「司令官さん、確保した全悪人の身元情報を持ってきました」
「あぁいつもありがとう紡くん」
「いえいえそんな、これも仕事ですので…ってシルフィさん、なぜここに?」
「つ〜む〜ぎ〜ちゃ〜ん!!」
「うわ!」
「久しぶりだね〜だいたい1週間ぶりくらい?」
「前回の『歴史報告書』の更新の時以来ですね」
『歴史報告書』 「特性」の初めての発現以来200年にわたって事件や新種の発見などを記してきた歴史書籍の事だ
これは国家の秘密禁書の1つであり扱えるのは国のトップ層、「六星魔術師」の6人、「学園防御委員」の選ばれた者のみだ。この禁書には1年ごとに特殊な契約をしなくてはいけなく、契約をしていないものが触れると能力の源となる「能力魂」を吸い取られるのだ
「よ〜し!じゃあ紡ちゃん、今からご飯食べに行こう!!もちろん私の奢りだよ!!」
「え?いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…」
『報告!報告!町外れの銀行にて強盗発生!犯人は3名、全員攻撃型の中位トレイトを所持の模様!』
事務所の壁に設置されている連絡用スピーカーから情報収集部と思われる報告が届いた
強盗はあまり珍しいものでは無いのだが中位級のトレイトを使用する強盗はあまり居ないのだ
「…シルフィ、ちょっとお昼ご飯の予定はお預けになりそうだな」
「だね〜。あ〜あ、久々に紡ちゃんとゆったりお話出来ると思ったのになぁ〜」
「さっさと用事済ませればいい話だろ」
「よく分かってんじゃん」
「それじゃあどっちが先に現場に着くか勝負ね!」
俺とシルフィは事務所から勢いよく飛び出して報告のあった現場の方向に向かった
『目的地はそこから10km先、第1銀行だよ!』
「了解」
俺はそびえ立つ建物の屋根から屋根に飛び移り建物の無いところは空中に水を浮かせてそこを走っているのだが、シルフィは風の能力の使い手なので空中を自由に飛ぶことが出来る
「あそこが目的地だね」
「ああ、これは相当暴れてるな」
目的地が目視で確認出来るところまで来たところで事件の現場を見ると強盗と見られる3人組が各々トレイトと見られる
火の玉などを展開しているようだった
せるとシルフィはニヤッとしてこっちの方向を見た
「それじゃあ安全に多くの犯人を捕まえた方が勝ちで負けた方はこと後のご飯奢りね」
「そんな急に勝負にすんなよ」
そう会話をしながら俺とシルフィは事件の現場に降り立った