第4節 暗躍
魔王は元勇者パーティーと協力して俺を殺しにかかろうと計画を立ってていた。しかし、俺には精霊の加護と聖剣があった。そう簡単に俺を倒すことはできないとわかっていた。
そこで魔王はケインの持っている聖剣を魔剣へと変化させるものであった。魔剣は禁忌の精霊魔法のなかでもトップクラスの邪悪さをほこっていた。
ケインたちはまず俺への復讐として人間を捨て魔族へと転生したのである。魔剣を扱えるのは魔族だけだからである。転生をはたした元勇者メンバーは自分たちのもっていた武器を魔族が使う武器へと変貌させたのである。
転生したケイン達は堕落し、以前の姿をとどめてはいなかった。もはや邪悪そのものとなっていたのである。理性はあるものの攻撃性と復讐心は数倍にふくれあがっていた。
俺はそのことをしらずに、魔族から危害が及んでいる町や村を訪れ、それを討伐して回っていたのである。さすが最高の聖剣ユグドラシル魔族はあっさりかたがつく。それに俺の魔力永久機関で枯渇することのない魔力で
魔族たちを倒していたのである。
俺が徐々に魔王の領土に進行していくとそこにはケインの姿があった。まがまがしい姿は隠しており、人間の形を保っていた。
「ケイン何しにきた?俺に復讐しにきたのか?」
「ああ。そうだよ。お前勇者になったんだってな?さぞかしいい気分になってるだろう。」
「そんなもんじゃねえよ。勇者の役目は大変だ。魔族からの脅威をしりぞかなくちゃいけないんだからな。」
「そうだよ。俺はそんな大変な役目を背負ってたんだよ。だけどな。その見返りに優越感にひたってなんだってやっていいものだと思わないか?」
「俺はそんなことは思わない。大変な役目だからこそ人にやさしくなれるように努力をしなくちゃいけない。ましてや何でもやっていいというのはおおきな間違えだ。」
「はぁ?おまえばかじゃねえのか?勇者なんだぜ?勇者。横暴にふるまってなにが悪いんだ。人間を救えるのは勇者だけだからな。見返りを求めて当然だろ?」
「イタチごっこだな。くるならこいよ。おまえら俺を殺したくてきたんだろ?」
「ああそうさ。魔王に魂を売ってまでお前を殺す力を得たのさ。」
そうするとケインたちの形はみるみるかわり、まがまがしい姿へと変貌させたのである。
「おまえその姿。落ちるところまで落ちたな。」
「いい気分だぜ?おまえを殺せると思うと気分がいい。お前の聖剣に対抗するために新たな魔剣も用意したんだ。存分に味わっていけよ。」
ケインがそういうと一斉に俺に斬りかかってきたのであった。俺はとっさに魔力障壁と張った。
ケインたちの攻撃は俺のはった魔力障壁に防がれていた。
「厄介な結界をはりやがって。だけどな俺の魔剣の力はこんなものじゃないぞ。」
そういうとケインは禁忌の精霊魔法をつかい障壁を侵食していったのである。俺には聞こえていた。精霊たちの断末魔が、力をすわれ周りの木々が枯れていくのを感じる。
「どうだよこの力!すごいと思わないか?!」
俺は思わず聖剣をさやからとりだし、ケインたちをしりぞけたのである。
「おっと!その聖剣は調べがついてるぜ?くらったら魔王でも消滅しちまうくらいの聖剣なんだろ?」
ケインたちは調べがついていた。このユグドラシルのことについても事細かに知っていたのである。
もちろんこの情報も魔王にはつつぬけだということだ。
やるしかないのかと俺は思っていた。ケインたちも知らないユグドラシル本来の力をつかって消滅させる方法を。
俺は決断した。ユグドラシル本来の力を発揮させたのである。枯れていった木々が復活したのである。それに加え、精霊たちが蘇っていくのである。
「なんだ?!魔力を吸い取ったはずなのに周りの木々と精霊たちが復活してるぞ!」
ユグドラシルの本来の力は再生である。精霊魔法の根幹を象徴する聖剣であり、精霊たちに力を与えるのがこの聖剣の力である。しかも、一度再生した精霊たちは禁忌の魔法といえども魔力を再吸収することができないのである。
「おまえら今なら間に合う魔族をやめろ。俺はいくらクズだったお前らでも殺したくない。」
「何を言ってるんだ?!お前のせいでこうなったんだろうが!俺達にはお前に復讐する以外の道はねえんだよ!」
「復讐をはたしたところでなにになる!そのあとのことはどうでもいいのか?!」
「わからねえか?お前を殺した後は人間に復讐するんだよ!俺を追放した人間どもにな!」
俺は決意した。ケインたちを倒すしかないと。俺はユグドラシルに全魔力を注ぎ、ケインたちに向かって魔力の斬撃をあびせたのであった。
ケインたちはよける暇もなく跡形もなく消滅してしまったのであった。情けない話だユグドラシルの力をつかえば魔族から人間に戻ることができたのに。
俺は情けなかった。ケインたちを救えなかったことを。
こうして俺は後悔と勇者の役目の重さを改めて実感したのであった。