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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
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実戦経験

帝国暦562年6月11日


隊舎から少し離れた3層の1角へと佇む店舗に6人の男女が集まり何やら熱く話を交わしていた。

「今日みんなに来てもらったのは、今朝通達があった20日に行われる実践訓練についてだよ」

 そう音頭を取るのは14中隊のスバル副隊長である。

「仮想敵は隊長格の6人。ギフトと纏化技術がなしの舐めプらしいから安心して叩き潰せるね!」

 神から送られる天性の贈り物とも呼ばれるギフトはエーテル神が現れる前から一部を対象に顕現していた。

 それに纏化も無ければ個人の突破力は大きく落ち込んでくる。絡めて、集団としての力も大きく落ちるというものだ。

「とは言ってもギフトなんて全体の2割しか持ってるやつはいないし、纏化なんて努力の結晶が使えるやつは10人もいないぜ?」

 少し乱暴な口調で指摘するのは4小隊のシア副隊長。

「それに、法術が使える者も7割程度だし、等級は平均2等級ってところかしら?」

 サリー1小隊副隊長もそう続けるが、

「とは言ってもやりよう次第だな。ワンポイントの戦術を重ねれば立派な戦略だぜ?」

「あら、イーグには何か考えがあるのかしら?」

「そうだなお嬢。おれの所の狙撃部隊が配置に着いてしまえばいくら隊長格でも行動は制限されるだろ?」

 戦場において狙撃部隊の重要度は非常に高い。居ると思わせるだけで牽制にもなり動きに幅を持たせる事ができる。

「同意。コチラの部隊でも動きを狭めれば勝機はあるかと考えます」

「そうですね。庭園出身のアンが居ればコチラの動きを気取られる事は抑えられそうですし、やり方次第ですね」

 そうスバルが言ってみても、相手は隊長連中。

 しかも良くも悪くも名のしれている塵の山出身の方々だ。

 更にクロウは卒業後に中隊長候補として入隊している光物であり、情報もさほどある訳でもない。

「しかし、クロウ中隊長は傲慢ですね。主なるエーテル神の教義にも人は謙虚であるべきと記載があるにも関わらず。それとも、本気でギフトも纏化も無しに渡り合うつもりでしょうか?」

 大袈裟な口調と手振りで話し始めたスコルを白い目で見つめながら、

「スコルは真面目だね」

 と、皮肉にも取れるスバルの物言いも通じずスコルは自分の世界へ入ってしまい、1人芝居を始めてしまう。

「なんにせよ作戦だ。流石に練らない事には立ち向かえない。」

 あーだこーだと幾度も幾日も議論を重ね、遂に当日がやってくる。




帝国歴562年6月20日


ムスリム山へとやってきた14中隊の面々は、中隊長の指示の下に各小隊へと別れて整列し上官の言葉を待つばかり。

 少しして全員の前にクロウがやってくると後ろ手に隊員を見渡しながら言葉を投げ始める。

「今日は皆が待ちに待った実戦の時間だ。事前に副隊長から通達があった通り夕方18時までと時間はたっぷりある。我々は大きな力を2つ封じる。」

 さほど大きな声ではないが、風魔法に乗せて響かせた言葉は全員へ伝わる。

「しかし、それでも遅れを取るとは思っていない。胸を貸してやるから我々に驚きを見せてみろ」

 傲慢で不遜な物言いは隊員達に油を注いだ。

 視線から雰囲気から態度から見て取れる。

 −これくらいで熱くなるなんて可愛いもんだね。

「以上1時間後の正午より始める。全体別れろ!」

 



「随分と悪徳上官っぷりが様になっていたね!」

「もしかして楽しい?」

 事前に決めていた隊長側の集合場所にやってくると、開口一番にジンとアレクから弄られる。

「そうですね。楽しいですよ。」

「クロちゃん性格悪いもんね!」

「やめてくださいよサリア先輩。楽しいと言っても成長が見れる事がですよ?」

「あら?てっきりクロウ君はその成長をねじ伏せるのが喜びだと思ってましたわ」

「そんなエレナ先輩みたいな事思いませんよ。僕はただ、ハンデを背負った状態で大敗し大きな力の差を感じる顔が見たいくらいですね」

 ニコニコ顔で答えるが、

「それも大概だろうがよォ」

 とユーグリットから呆れた声が聞こえる。

 さて、元気な幼子達は一体どう出てくるのだろうか。

 5小隊での奇襲?3小隊メインに開幕集中攻撃でも良いだろう。なんにせよ出来る事は星の数とは行かなくとも隊員の数ほどはある。

「にしても、クロウくん。」

「なんですか?」

「今回はクロウくんが動かないって本気?」

 今回は制限時間6時間、指揮官であるクロウとスバルが持っている指揮官バッジを奪う事が勝敗条件となる。

「そんなに猶予を与えて速攻取られるとかやめてよ?」

「そんなことになったらジン先輩に隊長を譲ってあげますよ」

「いやぁ、それは嬉しくない賭けだね」

 まぁ1時間もあれば入念過ぎるほど仕込めるだろう。

 ギフトと纏化を封じてるとはいえ幼子に負けるほどボケた面子でもない。

 あっても向こうにとってのチャンスは2度程だろう。

「さて、そろそろ1時間ですね。始めましょうか」

 クロウの言葉を合図にサリアが上空へと特大の花火を打ち上げる。

 −さぁ、どうくるかな?

拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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