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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
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魔視の薬瓶

 

 帝国暦562年6月7日


 今日はブランタークに依頼した薬術の結果を受け取りに行く日だ。

 蔦の模様を拵えた扉をゆっくりと開き中へと入ると、以前座らされた応接用のソファの横へ山の様に積まれた小瓶が目に入ってくる。


「クロウ君!待ってましたよ」

 横から笑顔で出迎えてくれるブランタークを見つけ軽く挨拶を交わす。

「ブランターク。結果に関しては聞かなくても問題なさそうだね」

「えぇ!今回は色々と勉強になりました!相変わらずクロウ君の視点を変えた意見には驚かされますね。特に…」

 と話し始めた同期を見ていると、横から細い手が伸びてくる。

「前回と同じ紅茶で恐縮ですが」

 前回お話したダリア王国のメイドさんだ。

「いや、あれ程美味しいものなら是非も無いね。ありがとう…えっと、メイドさん?」

「マリー・ハイビスカスと申します」

「ありがとうハイビスカスさん」

 −ハイビスカス…?どこかで聞いたことがあるような気がするが、どこだったっけな…

 と、思考を巡らせていると、ブランタークが現実に帰ってきたらしく用法の話になる。


「この魔視の薬瓶だが、1日2本までが限界だね。効果時間はクロウ君レベルで約40分程とまだそこまで長くはない。この点はいずれ改良してみせるよ。」

 −隊員レベルなら7.8分ってところか。1日2本って限度も考えると短時間で集中してやってもらわないとな。

「それと、魔力色は法術に合わせた物を用意してるが、法術での違いは用意してない。そこは測定器を活用して欲しい」

 正直細かい色分け等思ってもいなかったので、棚ぼただと嬉しく感じる。

 色分けまでしてくれてるのであれば、未知の敵に対しての戦略に幅を持たせることもできる訳だし、活用方法が増えるな。

「ブランターク。申し訳ないんだが、この薬に関しては暫く俺とだけの取引にしてほしい」

「そうですね。混乱が多い中で広めるのは得策ではないでしょうし。敵は外だけでは無さそうですからね」

「助かる」

 学校時代から無理を多く通してもらってる身としては感謝しかない。だが、これが流通すると秘匿したいウチの部隊の編成や作戦まで漏れかねない。

 特に俺の影魔術の様に一風変わった法術を使うものに取って初撃は大切だ。いくら等級が高くても対策を立てられては成す術も無くなる。

「じゃあ俺はそろそろ隊舎に戻るとするよ」

 魔視の薬瓶を影にしまい込み隊舎への道を戻る。



 帝都イスガルは中心の城を中心に円形に3層の街を形成する首都だ。

 城を含む一番内側の層は貴族街であり、侯爵家や公爵家等やんごとなき方々が住んでおり、上流階級特有の覇権争いなどが裏で行われている。

 二層目には大半の貴族や一部の豪商、軍の上層部の人が住まう邸宅や俺達の隊舎もこの層に用意されている。

 三層目は平民街と呼ばれており、店やギルド等の組合、それ以外の家が立ち並んでいる最も賑わった層だ。

 ブランタークの居る薬術組合もこの三層目に居を構えており、隊舎までは歩いて40分程とそこそこ離れているのだ。

 少し腹に何か入れようかと露店通りを歩きながら物色するが、右から左からお誘いの言葉を受け賑わいを実感しながら眼鏡に適う物を探し歩く。

「軍のにいちゃん!エルドボアの串なんてどうだい!」

 −エルドボアか…暫く食ってないな

「しかもコイツは今日卸たての新鮮だぜ!」

 エルドボアは体長3mはある豚に近い魔物だ。

 帝都が栄えてると言っても、街の外はそこそこに魔物が生息しているし、数年に一度の出現暴走スタンピードの時期には軍の力も駆り出される。

「久しぶりにいいな。親父、1本くれ」

「はいよ。12銭貨だよ」

 お金を払い串を受け取るが、少し気になることが出てくる。

 先程町の外には魔物が生息しているとはいったが、エルドボアは本来街の近くには出現しない魔物だ。

 前回の出現暴走は1年程前なので流石にまだだろうが、生態系に異変でも起きてるのだろうか?

 −そのうち冒険者ギルトにも情報を聞きに行こうか


 その後も隊舎へと向かいながら少しふらふらしていると、ちょっとした広場で吟遊詩人が詩を唄っている。

 その集団から歓声と少ししてからどよめきが上がる。

「おい、あれ白金貨だよな?」

「俺もそう見えたぞ」

 野次馬達が囃し立てるのを盗み聞きしているとどうやら誰かが白金貨を投げたらしい。

 帝国に限らず、この世界では基本的に通過は共通だ。

 一番下から、銭貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨となりそれより上の効果のみ各国で独自の硬貨を採用している。

 帝国では最上級の硬貨が帝国硬貨と呼ばれるものになり、噂によるとそれ1枚でそこそこの家が買える代物らしい。

 白金貨なんて大金を投げる物好きもいるものだと考えていると不意に正面から

「クリエ君じゃないか」

 と、真っ白な髪を揺らし筋骨隆々の身体の中年男性から声を掛けられる。

「コルド大隊長」

 新兵時代からの上官であるコルド大隊長とばったり鉢合わせるのであった。

拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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