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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
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ドーピング材料

 

 帝国歴562年6月4日


 高らかに薬漬け宣言をしたあとも2.3指示を出し、昨日の会議は閉廷となった。

 今日は朝からドーピングの為の薬を依頼しに行くため、わざわざ薬術組合の馴染みの薬術師の元へと向かっているのだが、どうも目的の部屋が騒がしい。

 目的の部屋の前までやってきたがそれなりに待遇の良い人物のため、扉も豪華に蔦の模様を細工した造りとなっている。


 騒がしい部屋に入ろうと、扉に手をかけたところで内側へと勢いよく扉が開かれる。

「二度と貴様の所へは頼まん!」

 中から飛び出て来た男と目が合う

「…チッ!!塵の山の中隊長か。この薬術師の評判を聞いて来たのだろうが、ハズレだぞ」

 それだけ伝えられると、肩で風を切りながら出口へと向かっていった。

 −3大隊長殿が直接来るなんて何の用件だろう?

 そんな事を考えて少し扉の前で立ち尽くしていると、中から如何にも研究者といった装いの線の細い男性が顔を覗かせてくる。

「はぁ…まだ何か用ですか?」

 視線を床に投げながら問いかけて来るが、残念ながら俺は大隊長殿ではない。

「大隊長殿では無くて悪いね。ブランターク。」

 ブランタークが訝しげに顔を上げると、

「おっ!クロウ君じゃないですか!てっきりさっきのゴリラがまだ文句をつけてくるのかと思ってしまいました。」

「とりあえず、中入っていい?」



 応接用のソファに座らされ、メイドからお茶を出される。

「それで?わざわざ私の所へ直接来るなんて、今度はどのような厄介事を持ち込んでくれるんですか?」

 ブランタークは軍人学校の同期であり、帝国内で13人目の特級薬術師だ。

「厄介事って…9等級の君からしたら大抵の事が物足りなくなる依頼じゃないのか?」

 ここで少し等級に付いて解説しよう。

 等級とは、魔力を使ったときに表せる結果を10段階に分けたもので、1〜2等級でなんとか条件が重なればワンポイントで戦術に組め込めるレベル。3〜5等級で実践的な戦術として組み込めるレベル。6〜8等級で兵器として戦略に組み込めるレベル。そして9〜10等級であれば災害クラスとして脅威を撒き散らせるレベルだ。


「そんな表面的な社交辞令は要りません。クロウ君が私に場を気にして接触してくるときは大抵が厄介な依頼の時ですから。」

 そんな事を言うが

「厄介な依頼は嫌いかい?」

「面白味があるならとても好きですね」

 等と言うくらいには学校時代から2人で色々と実験を重ねている。

 今回は部隊の生存率を上げるための重要な依頼をしにきたのだ、

「ブランターク。魔力の可視化が出来るようになる薬を作って欲しい。なるべく早く、それも大量に。」


 この世界に生まれた者は誰であれ、何かしらの法術適正を持っている。

 だが、民間兵達はそれに触れる機会が無かったため、魔力自体の動かし方を知らない。

 そこで可視化だ。

 魔力に慣れている者なら魔力の流れを感じる事など至極簡単に出来るのだが、この"流れを感じる"というのが法術を扱う上で非常に重要なのだ。

 魔術にしろ魔法にしろ、自身の魔力を使い結果に作用させる。この点は変わらないのだが、どう魔力を使うかを決めるのが魔力の流れという事だ。


「魔力の可視化って…あれは学校時代に不可能だって事にならなかったですか?」

 勿論、練度を飛躍的に上げることが出来ると考えた当時も可視化には挑戦した。

 だが、結果は失敗。感覚に頼る事を薬術で再現出来なかったのだ。


「あぁ、確かに失敗した。だか、アレは1人で可視化を完結される公式だった。」

「もしかして、2人でやらせようとしてます?」

「そうだ。それなら行けそうだろ?」

 魔力を感じられない者に魔力を感じろと言っても、食べた事のない味を再現するがの如く難しい。で

 では、魔力の流れを見えるようにするだけならどうだろう。

「以前のように魔力の流れを掴むものではなく、文字通り可視化するだけの薬術ですか…」

 そう。我々は隊を組んでいる。ならば人数を活かすよりないだろう。

「確かにそれだけなら…」

 ブツブツと考え始めた同期を見ながらお茶を啜る。

「紅茶か…旨いな」

 紅茶はダリア王国の特産物だが、ココまで香りの良いものは飲んだことが無い。

「ありがとうございます。」

 小さく呟いたつもりだったが先程のメイドに聞こえていたらしい。

「私の実家がダリアにあり、ブランターク様がクロウ様には1番良い物をお出ししろと仰りましたので。」

「そうか。今まで飲んだ中で1番旨い。」

 もう少し香りを楽しもうとすると


「クロウ君!行けるぞ!」


 どうやら天才が閃いたらしい。



「魔力を眼に集める」

 ブランタークが言うには魔力さえあれば魔力を見ることは可能らしい。

 使い方がわからない者が自身の魔力を使い、魔力を動かすなんてややこしい事をできる訳がない。

 そこで、魔力を眼に集め周りの魔力を見るだけに効果を絞る。それなら自身が感覚を知らなくても相手の魔力の動きを観察するだけだ。

 ただ、魔力には色が無いため見えやすく着色する術式を組み込む必要があるのと、個人の魔力量によって可視化出来る時間に差が出るらしい。


「だから、訓練時間には差が出ると思いますが、それでも良ければすぐにでも取り掛かれますよ?」

 ブランタークが聞いてくるがそれくらい承知の上だ。

「なら直ぐにでもお願いするよ。先ずは500人分欲しいんだけど、どれくらいで出来る?」

「それなら3日貰えれば出来ますよ」

 3日か、その間に色々と土台を固めるとするか。

「費用は後から請求してもらう形でいいか?」

「えぇ」

「ならまた3日後に来るよ。ありがとう」

 そう口に出し部屋を後にする。




 隊舎に戻ってきた後は夕方からの会議に向けて各部隊の資料に目を通しておく。

 −副隊長を選定するとは言ったけど、先輩方がどんなのを押してくるかなぁ

拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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