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手向けの花  作者: 三四
木に縁りて魚を求む
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 深々と頭を下げたあと、マリーの表情は硬いものだった。

 無理もない。

 友でもあるルナに国を裏切り八百長を仕掛けろと言っているのだ。

「わかりました」

 その一言を聞いて胸が震える。

「しかし、行うのは事情の説明までです。それを受けてルナがどう動くかまではわかりませんし、説明以上を伝えることもありません」

「ありがとう。そこまでしてもらったら充分だ」

 深々と頭を下げ、感謝の気持を伝える。

 機会すら無かったんだ、機会さえあれば後はそれを掴むだけ。なんてこと無い。


 帝国暦562年7月11日

 今日は1日暇をもらったので久し振りに自宅へと帰ることにする。

 とは言っても軍人となってから借りてはみたが、すごく事など月に一度あるか無いかくらいの頻度でしか使っていない。

 それでも自宅があるという安心感はとても大きく、家に帰れば不思議とゆっくりとできる。

 自宅は勿論三層目に位置するのだが、ブランタークとは隣に部屋を借りているので変な輩に住み着かれていることもないだろう。

 久し振りに階段を登ると直ぐに位置するのが我が家だ。

 扉を開けようと手を伸ばしたところで違和感に気付く。

 見た目に何か変化がある訳ではない。強いて言うなれば空間への違和感とでも言うのだろうか。

 扉の一部が霞むような、ぼやけて見えるようなそんな違和感。

 ブランタークが仕掛けたにしては綿密過ぎる。

 ブランタークが得意なのは薬術であって空間法術ではない。

 空間法術は担い手が少なく俺の使う影と同様希少法術だ。

 それを雌雄烏のギフトを持ってしても違和感程度しか感じ取れないとなると非常に高度な法術という事になる。

 少し俺のギフトについて説明しておこう。

 俺の持つギフト『雌雄烏』は物事の"境界"を曖昧にする能力だ。

 事実から掛け離れた認識をさせることは出来ないが、有り体に言えば誤魔化すことが上手くなるだけだ。

 副産物的な能力としてその誤魔化しに気付きやすくなる力も備わってはいるが、直接戦況を大きく変えることは出来ない。

 その力を持ってしても今回の空間法術(?)の事実に迫れないという事は相当上等な物が仕掛けられているという事になる。

 一体全体誰が何の目的で仕掛けたかは知らないが若干甘く見積もられているようだ。

 綻びさえ見つけられれば術式ごと飲み込んでしまえる。

 手の混んだイタズラにため息を漏らしつつも影で術式を飲み込む。

 朝から無駄な魔力を使ってしまい、小さなため息を漏らしながらドアノブに手を掛けるとドアに刻まれた術式が淡い光を放ち出す。

「マジかよ‼二重設置かよ‼」

 咄嗟に近くの手すりを掴むが、効力を発揮し始めた術式は基本的に止めることができない。

 驚きで漏れ出た声は誰に聞かれることもなく転送が始まる。

 辺りにはまるで家主等やってこなかったような静けさだけが残るのみ。



「あれ?クロウくんは?」

 14中隊の隊舎では既に溜まり場と化している中隊長室に入るなり部屋主の不在をジンが問いかけると、代わりに補佐を務めるスバルから答えが返ってくる。

「クロウ隊長は休ませました」

「え?なんで?体調悪いの?」

 あの憎たら可愛い後輩中隊長が体調を崩すなんて事があるのか、と驚いていると

「いえ、1ヶ月程休んでなかったので休ませただけです」

 と驚きのブラック勤務事情が由来だと説明され苦笑する。

 確かに彼はここしばらく張り切って働き漬けだったが、そこまで休んでなかったとは。

 実際に部隊が再編されてからこの部屋で彼を見なかった事は無かったなと思うと少々負担をかけ過ぎていたことに気付き反省の念が生まれる。

 自身たちより後輩に当たるが非常に優秀な上官として職務をこなす姿を見て、どうにも頼りっぱなしになっていたようだ。

「クロウくんの事だからたまの休みに何かの事件に巻き込まれていたりしてね」

 と上司の不幸を願うかのような発言を軽く口に出す軽薄男に対して、

「確かにありそうですね」

 と返す副隊長。

 そんな事を話している時には既に巻き込まれてしまっている訳だが。

 すると扉が開き茶髪を揺らしたサリアが入ってくるなり、

「あれ?クロちゃんは?」

 とジン同様の事を聞いてくるので、こちらも同様の事をスバルが返す。

「クロちゃんだし、なんか変な事に巻き込まれたりしそうね」

 とサリアがこれまた同様の事を口に出すが

「あの、そんなに中隊長は巻き込まれ体質なんですか?」

 流石に2度続けてとなれば過去に何かあったのではないかと気になったスバルが二人へと質問を投げかける。

「うーん。普段は何ともないんだけど、ちょっと忙しいときの休日は何回か訳のわからない事に首を突っ込んでたりしたね」

「あったわね〜!家に居たら窓から忍者が入って来たって聞いたときは涙が出る程笑ったわ‼」

「あと遠征先で自由時間もらったときは足元が崩れてダンジョンの奥に放り込まれたりしてね」

 それからそれからと次々に2人が盛り上がる程のエピソードを持つ人物を隊長に据えていて良いものかと思案顔にもなってしまう。

 -お願いなので今巻き込まれてしまうなんてことはやめてくださいね

 スバルの願いは既に棄却されてしまっている。


拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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