ハイビスカス
帝国歴562年7月9日
前日、10日後に攻勢開始の指示が降りてきたクロウはとある人物の元へと足を運ばせていた。
「よっ!元気?ブランターク」
国内に13人しかいない特級薬術師でもあるブランタークである。
声をかけられたブランタークは訪ねてきた知人の姿を見て露骨に顔を顰めるが、何も気付かないフリをして話を続ける。
「ちょっとした頼みがあるんだけどさ、あ」
「嫌ですね」
言葉を遮り拒否されてしまうがこんなのはいつもの事なので無理矢理話を続ける。
「あのさ、マリーさんいる?」
「嫌ですと言ってるんですけど」
「大丈夫大丈夫。ブランタークにはそんなに負担ないからさ」
今回はマリーさんに用事があってきたのだ。
直接マリーさんを訪ねても良かったのだが、彼女はブランタークのメイドだ。先にブランタークを訪ねるというのが礼儀だろう。
「クロウ君が大丈夫って言う時は大抵巡って大変な目に合うってわかってますか?」
どうも学生時代に無茶なお願いを重ねすぎたせいで頼み事には慎重になっているらしい。
というか、魔獣討伐の時も護衛任務を勝手に受けてた時も俺のせいでなにかなった訳ではない。
毎回何故かブランタークが大変な目に合っているだけなのだ。それを俺のせいにされても困るというもの。なんなら俺は悪くない。
「わかんないね。とりあえずマリーさんいる?」
「そんな一杯目みたいに聞かれても…」
「まぁまぁ、ちょっとマリーさんに頼み事があってさ」
何度も重ねるが本題はマリーさんへの依頼なのだ。このヒョロガリに危害が及ぶとは思えない。
「今は外に出てます。ちなみにどんな内容なんですか?」
今回持ってきた相談というのは少し厄介なものだというのは自覚している。
というのも、マリーさん経由で教国の伝手を頼りたいのだ。
「なぜマリーなんです?」
動揺しているのか、少し汗をかきながら疑問をぶつけてくるが、
「それを言っていいのか?聞いたら無関係じゃいられなくなるぞ?」
意趣返し。とは言ってもブランタークは聞く権利があるだろうし、聞きたいなら聞かせてやろう。
「まぁ、おそらくですけど、僕も無関係じゃないでしょうし聞きますよ」
「そうだろうね。じゃあさ、率直に聞くけどマリーさんの実家の権力で教国にいるルナに連絡が取りたいんだよね」
以前マリーさんから聞いた家名を思い出したのだ。
ハイビスカス家はダリア王国の公爵家である。
軍人学校へ交換留学へ来ていたルナへの取次をして欲しいのだ。
ルナはエルミナス教国の次期聖女。
母神の嫉妬というギフトを有しており、効果としては治癒魔術が10等級で扱えるが反面その他の魔術適性を一切無くすものらしい。
らしいというのは学生時代には特にそこまで深い交流が無かったのだ。
模擬訓練などの際に治癒を頼んだくらいだろうか。
つまり、個人的な交流が無いので権力を利用して交流を持とうと考えたのだ。
「その公爵家のお嬢様がなんで他国のブランタークのメイドなんかやってるのかは特に興味はないからさ」
どうせ色恋関係だろうけどね。
「そうですね…その内容を僕が断るというのも変な話ですし、僕も同席しても良いのであればマリーへ提案してみては?」
「やっぱ2人っきりにするのは嫌な感じ?」
ピンク色のオーラを若干感じてしまったので弄っておく。
「いや、勝手にまた僕を報酬に使われるとたまったもんじゃないだけですよ」
先述した護衛任務の時には勝手にブランタークの薬術を餌に使ったのを根に持ってるらしい。そりゃそうだ。俺でも根に持つ。
「マリーさんはどれくらいで戻ってくるかな?」
あまり時間が空くようなら出直そうかと考えていると扉が開きマリーの顔が見える。
「ブランターク様。戻りました。あら?クロウ様いらしたのですか?」
満面の笑みでただいまの挨拶をしたあとにコチラに気付くと問いかけてくる。
「マリーさん久しぶり。ちょっとマリーさんにお願いがあってね」
そう伝えるとキョトンした顔で見つめてくる。
拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。




