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手向けの花  作者: 三四
木に縁りて魚を求む
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火蓋は落ち

 帝国暦562年7月25日


 周辺3国に対して一斉に攻勢を仕掛けたホーン帝国は、初めは勢いに乗り各国と互角の戦を繰り広げていた。

 だが、ダリア王国に攻撃を仕掛けた第3大隊を率いるキールは苦戦を強いられてた。

「くそぅ…まだ戦況報告は来ないのか!?」

 焦りが声に乗り野営地に響くが、周囲から納得のいく返事は中々返ってこない。

 初めの2.3日は調子が良かった。

 圧倒的な戦力差があるのにも関わらず帝国秘蔵の魔道具を活用し戦線を押し留めていたのだが5日程前だろうか、本部からの魔道具供給が突然停止し、あれよあれよという間に戦線は後退した。

 それからは早かった。僅かの時間で帝国と王国の国境に引いていた戦線は大きく下がり、帝国内へと押し進められる事になる。

 ダリア王国は薬術国家として名を馳せる一方3000年前から続く歴史と知識の積み重ねがある国だ。

 初めに供給されていた魔道具は9等級に相当する物だったのだが、それでも戦線を停滞するに留まってしまったのはダリア王国のもう一つの側面でもある剣術国家による所が非常に大きい。

 キールが率いる3大隊は力による制圧を方針にした超攻撃的な部隊である。

 キールと同じく火の法術が得意な人選により、複数人での大規模魔法を展開、広範囲を一気に焼き払う戦術が得意なのだが、今回は相手が悪かった。

 剣術国家としても名を馳せるダリア王国王国が先鋒を任せたのは帝国内まで名を響かせるリリス・ハイビスカスが鋒の如く戦場を切り開いてきたのだ。

 剣術の腕ももちろんの事なのだが、水魔法と併せた技術は一級品で水明すいみょうの二つ名が付くほどの大物だ。

 リリスが率いる小隊は僅か50人規模の部隊で正面からぶつかり、2つの中隊が壊滅するほどまで追い込まれた。

 始まるまでは帝国技術を信じて疑わないキールだったが、今回ばかりは敗戦の兆しを感じてしまう。

「なぜ本営からの物資供給がこないのだ!」

 八つ当たりと自覚はしているが、怒声を響かせて少しでも落ち着きをとりもどそうと躍起になってしまう。

 周りから返ってこない返事と静寂にすら苛立ちを感じる。

「もういい!貴様らも突っ立てってないで夜襲でも仕掛けてこい!」

 上官からいきなり伝えられる指示に困惑を覚えつつも渋々準備を始める中隊長達。

 戦況はどう向かうのだろうか。


 場所は変わり第2大隊。

 海洋国家連合を相手取るカブラス大隊長は初日から続く睨み合いに精神も摩耗していた。

「状況は?」

 カブラスが問いかけると横に控えていた1人がすぐに応える。

「はっ!以前膠着状態が続いております!恐らくは嵐を待っているのかと」

「そうか…嵐がくるのか…」

 朝から向きが変わった風を感じてはいた。

 嵐がくるとすれば、我々は非常に劣勢に立たされるのは目に見えてる。

 海洋国家連合は36の部族や小国から成り立つ連合国家だ。

 今年はムスリム族が盟主聞いているが、海洋国家というだけあり海での戦には滅法強い。

 それに海上であることや、独特の気候により独自の文化や法術が発展している地域も多いため状況判断能力が問われるだろう。

 嵐に紛れて攻め込まれては防戦一方となるだろうが、ガブラスとしてはそちらの方が有り難い。

 一般的に攻め込む戦よりも守り抜く戦の方が遥かに戦いやすいし、そちらの方が得意なのだ。

 この開けた入江を軸に陣を展開すれば奇襲は受けにくく、状況把握も行いやすいだろう。

 なんて事を考えてしばらく黙りこくってはいたが、不意に先程受け答えてくれた者から声を掛けられる。

「カブラス大隊長。何か視線を感じるのですが…」

「ドラコもか。何処かの間者ではあろうが場所までは捕まえられん。手練だな」

 外の敵なのか内の敵なのかはわからないが、このレベルの間者が各地に紛れ込んでるとしたら既に相当な劣勢にいるのだろう。

 視線の主から意識を外すとそう呟き装備を整えるため野営地の奥へと向かうのであった。

「ともあれ。まずは目の前の敵からだな」

拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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