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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
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顔合わせ

「そこでだ、生き残るためのの方針として14中隊が目指すところは現状の把握と退路の確保だ」

 現状を把握する事は自身の分析と共に何ができるかを明確に確立し、生存確率を上げるための重要な要素だ。

 その為に進言して厄介な先輩達を小隊長として残して貰ったんだ。

 −その厄介な先輩達のせいで俺は中隊長へと大抜擢された訳だが。有り難くもないただの迷惑である。

 そして、退路の確保は上げた生存率を生存者数へ直結させる為に無くてはならない。

 こんな負け戦で散らす命などココには無いのだから。


「現状把握の一環として事前に測定した法術の結果を元に各部隊への編成を行う。自身の胸に付けている章を見ながらどのような人物が上官となるか見ておけ。」

 適材適所と言うやつだ。

 400年続く帝国でも未だにコネやお家柄、関係性での部隊配置が多く自身の思うように力を発揮できない事が非常に多い。

 そんな事をしていても無駄にしかならないので悪しき風習は即座に断っていく。


「先ず、攻撃の要となる141小隊はジン小隊長が務める。」

 右に起立している軽薄そうなイケメンが一歩前に出ると女性隊員から黄色い声がいくつか上がる。

「ジン小隊長は以前にも小隊長を経験しており、刀と魔法を組み合わせる纏化技術の担い手だ。」

 このイケメンは以前の部隊での先輩にあたり、主に女遊びに誘われる程度の人間だ。

 女性のみの部隊を解散に追いやった原因とも噂にされる程の女好きだが、刀に風魔法を付与した纏化技術は凄まじく、更には頭も切れる。

 女性関係だけ気を付けていれば超優秀なのだ。


「141小隊には38名の隊員を編成させる。14中隊でも1番の隊員数となるが、1番会敵の機会が多い部隊でもある。」

 纏化技術と聞いて安心を感じていた配属隊員も、会敵が多いとなれば命の危険が増えるため顔が曇っている。

「どうも、ジンです。命を預かる限り君たちを生きて帰すと約束しよう。」

 ジンの挨拶は軽い言い方なのに言葉は入ってくる。

 しかも、この男は教育の仕方は上手いのだ。現に俺も1番学ぶ事が多かったのはこの男だ。

 練度に関してはその腕を期待するしかない。


「次に狙撃部隊である142小隊だが」

 ジンの右の起立していた緑髪の優男が前に出る。

「隊員数18名をアレク小隊長が受け持つ。」

 民間兵の中から"あのアレクだ"との声が上がるが、この男は2人いる17歳での最年少小隊長記録保持者の内の1人で、長距離銃に風魔法を纏化し意識の外から狙撃する。

 帝国内でも鷹の目という異名があるくらいには名がしれている。

「説明はあまり要らないようだな。狙撃部隊は退却時の合流が遅れやすい。そこの改善を期待している。」

「よろしく。」

 アレクが挨拶をし、一礼をすると隊員の顔が少し明るくなってくる。

 −ただ、アレク先輩は年上に直ぐ手を出すからなあ…

 言葉も少ないので摩擦が生まれないか心配だが、そこはフォローしていかねばならない。


「143小隊だが」

 次の143小隊の紹介をしようとしたのだが、

「アタシね!」

 と、左に起立していた女性が可愛らしい声を上げて前に出る。

「ほら、クロウ中隊長!さっさと紹介しなさい!」

 −やっぱりやりやがったかこの女…

 豊かな茶髪と背中に背負った大斧を揺らしながら出て来たこの女は

「サリア小隊長だ。」

 先のアレクと同じく最年少での小隊長記録保持者なのだが、前に出たがる。

「隊員数は25名。役割としては戦場での撹乱と一点突破を期待している。そこd」

 続きを口に出そうとしていると横からサリアの声が上がる。

「サリアよ!命も武功もどっちも持って帰らせてあげるわ。」

 サリアは調子に乗りがちだが、実力も申し分ない。

 2mはある大斧に雷魔術を纏化させ一気に薙ぎ払う、対集団でも個人でもイケるバリバリの武闘派だ。

 新兵時代の訓練の際には10戦10敗と手も足も出なかった。今でも3勝出来るかどうかというところだろう。

 −というかあれは訓練だったのだろうか?

 このままにするとサリアが捲し立て始めてしまうので、一つ咳払いをして、

「143小隊では個人の戦力を上げてもらう。励め。」

 と無理矢理切って次に進むとしよう。


「続いて144小隊だが、ユーグリット小隊長が受け持つ」

 名前を紹介するとサリアの横にいた男が前に出る。

 ヤンキーの様な見た目のこの男は、軍内でも指折りの治癒法術の担い手だ。

「144小隊の11名は治癒支援部隊だ。君たちの練度で生存率は決まると思え。」

 治癒の法術には治癒と支援の2つの種類がある。

 どちらも戦場には不可欠の存在だが、近年は大きな戦争もなくその機会を奪われていた事から軍内での立場は低い。

 今回も治癒部隊として設立したのはウチだけの様だ。

 ユーグリットが挨拶をするが

「お前らァ。適当な事するなよ。テメェらの力量で救えるもんも救えなくなる。本気でやれよ。以上。」

 −ユーグリット先輩…"以上。"じゃないんだよなぁ…

 この人は口がめちゃくちゃ悪いんだけど、言ってる事はめちゃくちゃ優しい。

 気が短いから幾度となく調書の書き取りに巻き込まれたけど…

 しっかり隊員とコミュニケーションを取れれば良いんだけどね。


「最後に145小隊だがエレナ小隊長が受け持つ。隊員数は4名。」

 アレクの右に立っていた女性が礼をして前に出る。

「あれ薄氷だろ?」

 民間兵の中からいくつか声が上がるが、エレナは3年前まで冒険者として活躍しており、その時は切れ目と黒髪、氷魔術を使う事から薄氷なんて二つ名で呼ばれていたらしい。

 冒険者とは冒険者ギルドに属しているものの総称で、基本的にはどの国家にも属していない独立機関なのだが、コルド上官が熱烈にラブコールを送り軍へと引き抜いたようだ。

「145小隊は諜報部隊として動いてほしい。単独で動くことも多くゴールの見えにくい部隊だが、薄氷と呼ばれたエレナ小隊長が指揮する。」

 薄氷という単語で少し顔が赤くなっているのは申し訳ないが、名声として使えるものは使わせてもらう。

「みなさん。総勢5名という少ない人数ですが、クロウ最年少中隊長の為に戦果を持ち帰ります。」

 やりたくもなかった最年少中隊長という記録で多少カウンターを喰らう挨拶をされたが、なんとか持ち直し、部隊紹介を切り上げる。


「では、明日以降は各小隊へと別れ訓練へと入る。本日はここで解散とする。」

 隊員から大きな声が上がり段を降りる。

 この後は各小隊長と会議を行い、細かい方針の決定だ。

 隊舎へ入り、会議室へと向かう。


拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。


誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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