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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
17/34

受難①

すみません。扁桃腺が激腫れして高熱に苦しんでました。

今日分から投稿再開します。

明日は16時です

 帝国暦562年7月1日


 月も変わり、陽射しもより強くなってきた帝都イスガルは本日の気温は38度と猛暑を記録し人々からやる気を奪っていく。


「あつ゛〜い」

 訓練終わりに中隊長室へ駆け込んできたかと思えば机へとへたり込み、ダラしなく胸元のボタンを開け風を送り込むサリアとシア。

 なんというか、この2人には凡そ女性としての恥じらいというものが欠けている節がある。

 見麗しい2人の美少女の胸元を覗き込めると思えばラッキースケベ様々かも知れないが、1人はアホで暴力的な先輩であり、もう1人は直接ではないにしろ預かる部下だ。

 堂々と覗き込むことなどせずに7等級の影魔術である共振を机と本人達の間に出来た影へと滑り込ませる。

 この共振という魔術はなかなかに便利なもので、本来は自身の周りの影を伝い感覚を得て索敵や探索などに使ったりするのだが、お生憎とウチの隊でにはエリスがいるのでそんな機会など早々に来ないので専らこのような使い方しか出来ない。

 初めてジンに魔術の説明をしたとき、「それ夢の0距離サンドイッチに使えないかな」と言われたが、あの時程ジンに感謝した事はない。

 影を仲介し、感触を楽しみながら書類仕事を片付けていると、

「ねえクロちゃん。アレどうするのよ」

 と、不意にサリアが話しかけてくる。

「あぁ、アレね…」

 気だるげに返事を返すが、気乗りがしないしやる気も出ない。

 ぶっちゃけ今このタイミングでやるメリットがないんだよなぁ。

「なんですか?アレって?」

 と首を傾げながら聞いてくるスバルの為にも説明するが、

「3日くらい前の夜に知人が来たんだよね」



 帝国歴562年6月28日

 この日も訓練が終わり、各隊長格からの報告を受けたあとに1人中隊長室で上へ報告書類を纏めていると突然隊舎のドアが叩かれる。

「なんだ?」

「なんだろうね」

 暇だからという理由で部屋に残り、ご自慢の刀を手入れしていたジンに問い掛けて見るが来客の予定を伝え忘れていたわけではないらしい。

「何時だと思ってるんですかね」

 時刻は23時を回った所。

 今日は3層でチンピラ騒ぎがあり、駆けつけてみれば少し名のしれた常習犯が騒ぎを起こしており、それを連行したため報告書類が増えてしまったのだ。

「ちょっと、僕行ってくるよ」

 ジンが対応してくれると言うので任せて作業の続きに取り掛かるが、何やら少し言い合っているらしい。

 少し時間が経ち扉が開くと、そこにはジンだけではなくフードを被った女が共にいる。

「誰ですか?それ」

 コチラが問い掛けると、

「わかんない。クロウくんに合わせろの一点張りで、素性もクロウくんに伝えるんだってさ」

 とジンが答える。

「普通それで通します?」

 怪しさ満点どころが120点くらいの人物を連れてくる神経を疑うが、どうせこの人の事だ。美人センサーか面白そうセンサーに引っ掛かったのだろう。

「だって面白そうだったし」

 予想通りの答えを楽しそうに言ってくれる敬愛すべき先輩を見つめていると頭が痛くなる。

「それで、誰なんです?」

 今度はフードの主に顔を向け問い掛けるが、少なくともそんな言い方で会いに来る人物に碌でもない奴は居ないだろう。等と考えていると、

「ようやく見つけました。クロウ様」

 と突然膝をつき言い始める。

「私を覚えておりますか?幼少の頃にお世話をさせて頂いておりましたスイハです!」

「えっ、クロウくんお付きの人なんかいたの?結構良いとこの人?」

 感極まっているのか声を震わせながら言ってくるスイハとは対象的に、気のない口調で驚いて見せるジン。

 そして、やっぱり厄介な人物だったかとまた頭が痛くなるクロウ。

「ヴァルコック家当主であるホーエンハイム様から手紙を預かってきております」

 フードを脱ぎ、龍人族の特徴である頭の両側に生えた立派な角を晒すと、コチラへ手紙を渡してくる。

「…父上から?」

「えぇ、見つける事に手間取り5年の歳月が流れしまいましたが、ようやく努めを果たすことができました。」

 誇らしげに大きな胸を張るというか突き出しながら言うが、重要な事柄であれば5年の合間に状況も情報も変わってくる。

 龍人族の寿命は700年程と人族の平均寿命である70歳比べて10倍ほど長いため、時間に関しての感覚が少しおかしなところがある。

 手紙に目を通している間にジンとスイハが話を交わしているが、主に俺の素性に関しての事だ。

 そもそも俺が龍人族と知っている人が少なく、帝都ではブランタークとコルド大隊長くらいだろう。

 更に龍人族の国であるブレスコリアでは伯爵家としての地位があることを知るものなど1人もいない。

「スイハ。お疲れ様」

 一通り目を通し終わるとスイハに向けて声を掛ける。

「これ書いてる内容は知ってるの?」

「いえ、ホーエンハイム様より頂いた命は手紙のお届けのみです。なので中身は確認しておりません」

「そっか…」

「何かあったのでしょうか?」

 不安そうな顔で聞いてくるスイハだが、その不安は的中している。

「いやぁ、書いてる内容はさ、そろそろ顔を見せに帰ってこいとか、結婚はどうするんだとか、最近どうなんだとかそんな事ばっかりなんだけど」

「はぁ」

「最後にスイハを俺の預かりにするって書いてあるんだわ」

「はぁ!?」

 驚きの声が室内に響き、その音で他の小隊長達が飛んでくる。

「クロちゃん!大丈夫?」

 サリアが先陣を切り入ってくるが、後続の先輩方もろとも影を使い動きを止める。

「すみません先輩方。敵ではないので武器だけ降ろしてくれると助かるんですが」

 敵ではないと聞き武器を下ろす先輩方を横目に、スイハへ顔を向けると、

「そ!れ!は!良し!!偶にはあのジジイも良い事しますね!」

 と、両手を合わせて大喜びの舞を披露しているし、なんなら涙まで流している。

 あれ?そういう反応?もっと凹むと思ってたんだけど…


拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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