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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
16/34

反省

「オオィ!!!俺の出番0じゃねーか!!!!」

 時刻は16時。

 最後の通知が回った後、一旦各々の指揮官の元に反省点を洗い出す時間を設けることにし、集合場所に戻ってくると開口一番にユーグリットがそんな事を叫びだす。

「まぁまぁ、治癒法術師の出番がないって事は良い事なんだからさ」

 ジンが慰めるように言うがユーグリットの怒りは収まらず更に捲し立てる。

「とは言ってもよォ。支援法術はクロウが禁止にしやがったからよォ。俺がしたのは熊公とアレクを引っ張って戻ってきただけだぜ?」

 引っ張って来たとは比喩でもなんでもなく、その言葉通り彼は二人を引き摺って帰ってきたのだ。

 気絶し泥だらけになって帰ってきたサリアと引き摺られながらも風魔法で浮いて悠々と帰還したアレク。

 目を覚ますとしこたまユーグリットに文句をぶつけたサリアだったが、アレクの「あんな罠にかかる方がダサい」の一言で口を閉ざし、赤い顔で隅へと引きこもってしまった。

「正直言うと、僕達側から脱落者が出ると思ってなかったんですよね」

 誰に向けるでもなくため息混じりに話し始めるが、それを聞いたサリアの周りの空気がより一層暗くなってしまう。

「いや、サリア先輩は本気で反省してて欲しいですけどね。予想以上に上手く立ち回られたなと…」

「クロウくんは随分と軽く見てたんだね。僕は3人位は落ちると思ってたかな?」

 6人中3人も落ちれば隊は半壊だ。

 随分と悲観的な予想をしてたんだなと思っているとジンが言葉を続けて話し始める。

「だって僕らが選んだ副隊長だよ?それくらいやってもらわなきゃ困るよね」

「そうですね。アンはわたくしに直接何ができるかを聞きに来てましたし、コチラのできることを把握した上での動きなのでそれくらいやると思ってましたわ」

 エリスが言葉を重ねて話すが、なるほど。

 何人かがコチラの情報を形振り構わず収集し、それを組み込んだ戦略だったと言うわけか。

 通りで2人も落とされる訳だ。

 サリーとアンを脱落に追い込んだ後、サリアはまた別行動をとり、戦場の各地に巧妙に隠された気絶スタンの罠にまんまとハマってしまった。

 恐らくアン辺りが仕込んだのだろう。

「とりあえず。反省点まとめますけど」

 今回の反省点は2つくらいだろうか?

 1つは言わずもがなサリアが罠にかかったことだが、これは次回以降問題無いだろう。

 サリアは今回相当恥ずかしい思いをしてる。ライバル視しているユーグリットにも痴態を晒しているし、何よりあの隅っこ暮らしモードはかなり凹んている時にしか見られない希少な姿だ。

 2つ目はアレクと合流するエレナが足止めを喰らって閉まったことだろう。

 あのエレナを止めるくらいだから相当な仕込みをしていたのだろうが、副隊長格が僅か2人でエリスを止めるとは思ってもいなかった。

 エレナに聞いても「大切な物を守る戦いでしたわ」と言うだけでそれ以上の状況がわからないので少し改善は難儀しそうだが。

「あれ?クロウくんがスバルの策にまんまとハマってた事は反省しなくていいの?」

 整った顔でニヤニヤとしながら聞いてくるが、

「アレは向こうの作戦の勝ちですね」

 と押し切る事にする。

 まぁ、甘く見過ぎていた事は改善点なのでそこは評価を見直すとするが。

 何にせよ。思ったよりの収穫があった。

 僅か10日の期間で情報を集め、それを活かした策を練り、遂行するだけの技量もある。

 今出来ることが何かは良くわかったはずだ。

 後は足りていない経験を積ませるのは俺達の仕事だ。



 場所は代わり副隊長陣営では、副隊長達が集まり反省会を開催中。

「すみません」

 と重い空気を纏いながらスバルが頭を下げるが、

「何が?」

 とすぐさまサリーから疑問が返ってくる。

「折角皆さんが繋いでくれたのに有効打を入れる事も出来ませんでした」

「そんな事?勿論サリー達も勝つつもりでやったわよ?でもそれだけで勝てるなら軍のレベルを疑うわ」

 それはそうなのだが、サリーとアンはエリス相手に相当な時間を稼いでくれた。シアはサリアを直接足止めしている。イーグは経験重視し引き際を見極めた訳だし、スコルを見事に2度も奇策を遂行してくれた。

 そんな皆と対象的に自分は奇襲を繰り返しただけで、最後の策もあっさりと突破されてしまったので少しブルーな気持ちのようだ。

「疑問。少なくとも今はコチラの策が通る事を経験として活かすべきでは?」

 アンが最もな事を言うが、

「そうなんだけどさ、やっぱ悔しいよね」

 わかっているようだが、気持ち的にはどうも悔しさが先行してしまうらしい。

「それは俺達も同じだ。上に立つものとして切り替える必要はあるだろ」

 イーグもスバルの気持ちは良くわかるらしく同調もするが、副隊長として果たすべき姿がある。

 イーグの言葉を聞いて息と共に気持ちを飲み込むと、もう一度、周りを見渡す。

「ごめん。ちょっと引きずり過ぎた」

「いいのよ。ただ、次はサリーにクロウ様とヤらせなさいよ」

 頭を小突きながらサリーが次回のマッチアップ要求をしてくる。

「ははっ。そうだね。そうするよ」

 笑いながらそう返すと本格的に改善策を話し出す6人。

 終わりまで3時間ある。

 敗北から反省し、改善点を洗い出し、出来る事を増やす事ができる。


 【14中隊実戦訓練報告書】

 実施時間:3時間45分。


 ◆クロウ陣営

 指揮官:クロウ中隊長

 残存者:クロウ中隊長、ジン小隊長、ユーグリット小隊長、エリス小隊長

 脱落者:アレク小隊長(土魔法による動きの封じ込め)、サリア小隊長(気絶の罠による気絶)


 ◇スバル陣営

 指揮官:スバル副隊長

 主な残存者:無し

 主な脱落者:スバル副隊長(影魔術による動きの封じ込め)、サリー副隊長(戦力差による投降)、イーグ副隊長(戦力差による投降)、シア副隊長(サリアとの戦闘にて気絶)、スコル副隊長(影魔術による動きの封じ込め)、アン副隊長(戦闘差による投降)

拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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