幼子三日会わざれば刮目して見よ⑦
明日は16時に投稿します。
イーグの投降がスコルとスバルに届く頃、アレクは1人考える。
−僕は倒しきってないのに誰がいったんだろ
底に寝転がりながら考えるが、穴の中では答えなど見えないため考える事を辞めることにする。
−ふあぁ…もう少し寝るか
ものぐさな天才はもう一眠りにつくために身体を切り返し目を閉じる。
−クロウの見立てだとあと15分だったかな…
「残りは我々2人ってきりとなってしまいましたね」
頬を赤くしながら肩を組んでくるスコルを振り払い、
「そうだね。後は私達が仕掛けるだけですね」
クロウの姿を双眸に映しながら息を潜め好機を待つ。
「クロウくん。中々来ないね」
嬉しそうに言い出すジンを無視し、ユーグリットへと向き合う。
「ユーグリット先輩。3人の治癒に向かってもらえますか?」
「あ?」
「多分そろそろ終わると思うので」
「おぅ。行ってくるわ」
重そうに腰を上げ森の中へと消えていく姿を見送りながら相手の動きを待つ。
「おっ、動きがありましたね」
「そろそろ行こうか」
ユーグリットが姿を消すのを見届けてから素早く身体を動かし、敵前へと向かい走る。
「火槍」
走りながらクロウへ、槍を型どった炎を飛ばしながら更に距離を詰めていく。
「ようやく来てくれた!」
間に入るジンの足元を崩し、そのまま横を走り抜ける。
「あれ?無視?」
体勢が崩れながらも鞘を支え居合斬りを披露しようとするが、どうも腕に力が入り過ぎてしまう。
「スコル君かな?」
「ご明察ですね」
短い呟きに返事をしながらスバルへと肉体強化の魔法を掛け、スバルは更にクロウへと接近する。
「スバル。それが策なのかな?」
「さぁどうですかね」
得物を切り結ぶ2人。
肉体強化を掛けている分ややスバルが優勢だが、足元の影が不気味に揺らめく。
−影魔術ッ!!
たが、ココで引くと作戦がパーになる。
力で交差を弾き、僅かによろけた隙に拳を叩き込む。
「くッ」
思わず声が漏れる程の一撃が腹部へと入る。
その瞬間、一気に距離を取りスコルと合流する。
−これでいけるかな…
良い一撃だったが、致命傷には程遠く、驚きがある程ではない。
−このタイミングで距離を取るのは何故だ?
後追いをしようと刀を構えるジンを抑え、状況を分析する。
2人は何か策を持ってやってきてる。それは間違いない。
スバルは火と土を使え、スコルを治癒が使える。
少なくとも2人はアレクを落とした程の策があり、実際にそれを成功させてココまで来てるのだ。
油断してやる必要もない。
「クロウくん。多分スコルが何か身体の性能を弄ってるみたい」
ジンがコチラへアドバイスをしてくるが、流石というより無いだろう。
スコルの治癒魔術は5等級だが、身体の仕組みはユーグリットより熟知している。
今回はアレクに掛けたよりもより小さく筋力を弄っのだ。
流石にスコルが過剰治癒をしている事までは掴めてないが、身体機能の調子を狂わせている事だけでも分かれば上々。
クロウがどう出ようかと考えていると、
「クロウ先輩。これ」
スバルが手に持っているものを見せると、そこにはクロウが持っているはずの黒い指揮官バッジがぶら下がっている。
「いつの間に」
と咄嗟にバッジを持っていた左胸のポケットを手で触れる。
が、瞬間にスコルが再度強化魔法を掛け、スバルが矢のようにクロウへと突進する。
−チッ、やられた。随分と古典的な罠に引っ掛かった。
先程のバッジは恐らく土魔法で作成した贋作。
バッジの隠し場所を知るためだけに超接近戦を仕掛け、即離脱しタネを披露し始めたのだ。
眼前に迫ったスバルを見つめるが、自然と笑みが溢れてくる。
−これは驚き《・・・》だ。訓練は成功かな?
部下の成長を感じながらスバルが立てたであろう策を噛みしめる。
−クロウくん。悪い顔してるね。
「随分と良い作戦だな」
肉体同士がぶつかり合ったとは思えない衝撃が走り、草木が揺れ動くが、その中心ではクロウがスバルを片手で押さえ付けている。
「よぅし、終わりにするか」
そういうと2人の足元に忍ばせた影を広げ、瞬く間に肩まで引き摺り込む。
「なっ!?」
抵抗という抵抗もなく身動きを封じられ、スバルの服から指揮官バッジを外した影がそれをクロウへと渡す。
「2人共お疲れ様。良い動きだったよ」
良い笑顔で語りかけるクロウを見つめ顔が引き攣るスバルとスコル。
「クロウくん。今悪役みたいだよ」
ジンの呟きは誰にも答えられることも無いまま森の中へと消えていく。
【スバル4中隊副隊長が投降しました】
【スコル4小隊副隊長が投降しました】
拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。
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