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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
14/34

幼子三日会わざれば刮目して見よ⑤

 場面は変わってエリス対サリー&アン。

 エリスの猛攻を二人がかりで凌いではいるが、エリスがサリーを執拗に狙っているためなんとか軌道を絞り、捌ききれている。

 的を散らし始めるといよいよ手に負えなくなってしまう。

「恋敵への粘着するのは器量の狭さの表れじゃないかしら!」

 エリスの短剣を自身の短剣をもって弾き返すと、間にアンの氷が突き出てくる。

「氷槍」

 いくら格下の2等級とはいえ当たれば無傷とは行かない。

 エリスも同じ魔術をぶつけ相殺しながら一旦距離を取る。

 好機と見たのか術式を構築し始めたサリーへ足元から取り出したナイフを投げつけるが、アンの一振りで叩き落されてしまう。

「アン、ナイスフォロー」

 一息吸い込み、大きく吐き出す息は毒々しい色の煙となり周囲に漂う。

「風域」

 続けてサリーが風魔法で紫煙を前方へ向け動かし始める。

 漂う煙には即効性の麻痺を練り込んであり、一息吸えば大型の魔物でも3時間は動きを止められる。

 一般的に魔術には希少な系統が発現しやすいのだが、これにはそもそも魔術と魔法の切り分けが関係している。

 例えば火の性質を発言しようとした時に、ある程度の形にハマっているとそれは火魔法として授かることが多い。

 つまり、希少な系統は決まった型がなく自由な術式構築が多いため魔術として発現しやすい。だが、反面ありふれた属性や系統であっても型にはめずに魔術として構築する者もいる。

 そういった術者は総じて厄介な性格をしている場合が多い。

「毒ですか」

 そうエリスが呟くと、短剣を一振りして目の前に漂う毒煙を風で霧散させる。

「同じ風魔法ならわたくしの方が等級は上。対処の仕様はいくらでもありますわ」

「随分と素直な性格ですね!」

 煙の向こうでは剣先を向けたアンの姿。

「先輩。詰みです」

 両刃の剣が勢い良く飛び出してくる。

 −雷と風で加速装置代わりですか。

 確かに速度はあるが避けられない程ではない。

 この程度で詰みと言われるほど程度を低く見積もられていたことを残念に思いながら身体を捻り躱そうとするが、地面が腐ったように足元が沈みだしワンテンポ動作が遅れる。

「アンタの事は限りない格上に見てるのよ!それだけで終わるわけないじゃない!」

 勝ち誇った様にサリーが叫ぶが、エリスはそのまま飛び出した剣を弾き返すとそのままサリーを組み伏せる。

「!?」

 何をされたか理解が追いつかないまま後ろ手に拘束されその場に投げ出される。

「サリー!」

 助けに向かうか迷いが生まれる。

「迷いは動作を送れさせますよ?」

 足払いで体制を崩すとそのまま影を広げ拘束しようとするが、既の所で後ろへと逃げ出す。

「詰みとの事でしたが、ご自身達の事でしょうか?」

 圧倒的な実力差。

 激昂したフリも単調な攻撃もブラフだったのだろうか?

「アンタどこまで計算なのよ」

「少なくとも恋敵は本気ですかね」

 サリーの軽口に応えていると、死角から襲う氷の刃を余裕を持って躱し回し蹴りで応戦する。

 刃と脚が交差する2人。

「否定。まだ詰むほどの状況ではありません」

「そうかしら?」

 視線が頭の後ろに動くのを確認しアンはエリスの向こうへと回り込む。

 一瞬遅れて先程まで立っていた地点に赤い稲妻が落ちる。

「エリス。助けはいるかしら?」

 大きな斧を背負ったサリアが不敵な笑みを浮かべながら現れる。

「いいえ、恐らくは」

「投降。降参です」

【アン5小隊副隊長が投降しました】

 アンが離脱を宣言すると知らせが双方を駆ける。

「アンタはどうすんの?その状態でまだやる?」

 サリアが機嫌の良さそうな声でサリーに問い掛けると、サリーも同じく投降の意を示す。

【サリー1小隊副隊長が投降しました】



 高台に場所を取っていたイーグ達狙撃班だが、アレクの脱落の知らせを受け隊員を集めていた。

「なぁ、俺達は戦力は削られていないが、この状況は生き延びてると言っていいのか?」

 隊員に向け言葉を投げかけるが、伏し目がちな者が多く重い空気しか返ってこない。

「わりぃ。言い方が悪かった」

 頭を掻きながら言葉を続ける。

「今回は俺達の完全敗北だ。実践なら1人の敵に壊滅させられてる。俺の小さな意地で申し訳ねぇが降りさせてくれ」

 頭を下げ隊員へ頼み込む。

 普段から少し適当な物言いが多いが、イーグが副隊長になり得た理由はこの実直さだ。

「副隊長。我々に不満もありません」

 1人がそう言うと、俺も僕もと次々に同意の言葉が出てくる。

 2小隊を編成してすぐの頃に、アレクの無茶な要求に反発していたが、今回の戦いでその実用性を持って結果を示されてしまった。

 ここで認めなければただの意地の張り合いになってしまう。

 少なくとも、あの時意見を代弁してくれたイーグが非を認め敗北宣言までしたのだ。これに付いていかなければイーグの覚悟も踏みにじる事になる。


【イーグ2小隊副隊長が投降しました】

 投降の知らせが隊に回るが、この知らせがコノ後の戦況を少しだけ変えることになる。


拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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