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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
13/34

幼子三日会わざれば刮目して見よ④

明日は16時投稿になります。

 前方で上がる稲妻と土煙を視界の端に映しながら、先程銃弾を撃ち込んだ地点を観測するアレク。

「込めた魔力も飛散してるし、ちゃんと当たってるね」

 あれから何度も敵陣へ撃ち込んだアレクは満足そうな顔で頷く。


 先程後退した敵狙撃部隊へ命中させたのは少しカラクリがある。

 本来であれば纏化により銃弾自体へ術式を書き込むのだが、今回は纏化禁止中。

 と言っても、アレクがやった事は銃口からちょっとした空気の流れを加えただけだ。

 流れを変えて弾の回転を変化させる。

 今回は距離もあるのである程度さえ変化を加えれば後は勝手に曲がってくれる。


 覗いていても相手に動きが見えないため、他の動きを援護しようと登っていた木を降りようとするが、

「お疲れ様です、アレク副隊長」

 不意に投げ掛けられた言葉にギョッとし、声のする方へ銃を構えるが、

「誰かと思えばスコル君か」

「はい。スコルです」

 スコルの姿を見つけ安堵の表情を浮かべる。

 天才でも、スナイパーと言う事もあり接近戦は苦手なアレクは、相手が治癒術師のスコルであることが分かり息を漏らす。

「はぁ。1人…な訳ないよね」

「まぁそうですね」

 しかし、アレクも探知魔法は巡らせていた。

 ここまで接近に気付かないものだろうか?

 探知魔法は風魔法を媒介にしており、魔力探知には優れている反面高低差には弱い。

 しかしそこはアレクが風魔法を2重に掛け合わせることで空気の流れを作りカバーしているはずだ。

 近くに誰かは連れてきてるだろうと周囲を警戒するがそれらしきは見当たらない。

「よそ見ですか?」

 スコルが肘先程の長さの刃を振り抜くがアレクはヒョイと躱し木の上へと戻る。

「それくらい余裕があるって事だよ」

「最年少は可愛げがありませんね…」

 元々当たると思っていなかったのか、振り抜いた後も姿勢を崩さずに手元を見つめるスコル。

 −少し温度が上がってきたか。サリアの余波が来てるのかな?

 しかしとは言っても、アレクの分が悪い。

 元来のスナイパーであるアレクの法術構成は遠距離に特化している。

 唯一の火魔法も纏化無しでは1種類しか習得してない上に自身にも被害がある自爆型だ。

 さてどうしようかと眼前の敵を見つめ次の手を考えていると、突然足元の枝が崩れ落ちアレクの身体が宙に浮く。

「ッ!!」

「文字通り足元を救われましたね」

 目の前には銀の短剣を振りかぶったスコルの姿。

 −一発もらうな…

 一閃

 アレクの右腕に一筋の血が流れ、小さくない傷が付く。

 右腕を犠牲に地面へと降りたアレクはさっさと距離を取るために地を蹴ろうとするが、

「!?」

 身体が上手く動かずに倒れ込んでしまう。

「毒?」

「いいえ?治癒です」

 スコルが行ったのは治癒魔術による過剰治癒。

 本来であれば正常である身体を更に活性化させる事で、身脳のコントール機関と実際の体の稼働に齟齬を起こさせる。

「そっか。でもまだ足りないね」

 これで奪える時間は僅かに数秒。

 魔力操作に慣れているものであればその位にしか効果は無いのである。

 が、ココは戦場で相手は10日に渡り策を練ってきた敵。

 アレクが左で銃を構えようとした瞬間、体を支えていた地面が穴を開け底へと投げ出される。

「なにこれ」

 底から見上げながらスコルへ問い掛けるが、答えたのはスコルの側から出てきたスバルであった。

「何もかにも、罠ですよ。隊長殿」


 穴の底へと沈んだアレクは自身の怪我の度合いと5mはありそうな壁を見つめるが、これは出られない。

 纏化もなしでは天才といえどこんなもんだ。

「もう大した出来ること無いね」

 諦めたのか、腰を降ろしたアレクが呟くと、

「では降参ということでいいですかね?」

 とスコルが意志を確認してくる。

「ん。僕の仕事はしたし、後は任せる」

「そうですか、ありがとうございます」

「一つ聞かせて欲しい。探知はどうやったの?」

 アレクがスコルへ問い掛けると、

「あぁ!スバルさんの案ですよ」

 横にいるスバルへと回答権を渡す。

「土魔法で潜んでました!」

 なるほど、高低差に弱い探知魔法を掻い潜るために自身の体を土の下に潜り込ませたのか。

 機動力は削がれるが、狙撃手1人が対象ならそれほどのリスクは背負わない。

 思えば戦闘中に感じた気温の変化は体温の変化だったのだろう。

 だとすれば初めから意識をスコル1人に向けさせ、足元の木を腐敗させたのも体温の変化と気付かれないように意識の方向を変えさせたのか。

 わざわざ自分1人のためにここまで策を練ってくれるとは相当格上に見てくれているらしい。

「あーあ。他にも何人か負けないかな?」

 誰に向けてでもなくアレクが呟くと穴の上から

「今の所、アレク隊長のみですね」

 と笑顔でスコルが答える。

「アレク隊長。ありがとうございました」

 そう言い残すと2人の魔力が遠退いていく。

「結構悔しいな」

 痛む右腕を支えながら地面に寝転がり少し休憩に入る。


【アレク・ホークが棄権しました】

拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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