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手向けの花  作者: 三四
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
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幼子三日会わざれば刮目して見よ②

 サリアがシアと会敵した頃、中心地にほど近い森の中に姿を潜めているアレク。

 狙撃には実力も勿論必要だが、位置取りや天候等の運も関わってくるのが通説。

 木の上に腰を下ろし、自前の長銃を構えると周囲を見渡す。

「見晴らしの良い高台」

 今日の天候は間違いなく良い。であれば後は高台に場所を決めるだけだろう。

「見っけ」

 ボソリと呟いたアレクの瞳には15kmは離れているであろう距離に陣を構えるイーグの姿。

 アレクのギフトは鷹の目。

 離れた距離でも正確に見える能力だ。

 そして、纏化はその距離に確実に殺傷能力を付与するための物。

 なのだが、今回はどちらも使用が禁止されている。

 しかし、アレクの使う魔導銃は特注の品であり、銃身に温度探査の魔法を埋め込んである。

 見えている大きさは小指の爪より小さいが、天才と呼ばれる最年少小隊長には十分すぎる的だ。

 そっと引き金に指を掛け、優しく絞る。


「状況は?」

 自分の愛銃から目を離し、少し休憩しようと後ろに下がりながら近くにいた隊員に声を掛ける。

「サリア小隊長とシア副隊長率いる2班3班が戦闘中。1班は後方にて待機。4班5班は行動中です。」

「そっか。アレク隊長は見つけられたか?」

「いえ、狙撃に有利な位置を探ってはいますが、今の所見つけておりません」

 イーグは知っていた。というより予感していた。

 アレク隊長がそんな場所には居ないだろうという予感を。

「やっぱなぁ」

「やはり、あの言葉を体現しようとしてるのでしょうか?」

 1人の隊員が発したあの言葉とは、小隊へ配属された初日にアレクから指示された事である。

 −マジでやってるなら見つけることすら厳しいぞ…

 少し悲観的な考えが頭を過る。

 刹那。発砲音。

 突然の襲撃に指示を出そうとするが、その間にも数回の銃声が響き、前方で構えていた数人の頭が衝撃で跳ねる。

 −おいおい、殺すつもりか!

「全員少し後退しろ!被害の報告も!」

 急いで指示を飛ばし、後退させる。

 被弾者をどうしようかと前方を見ると、1人も残っていない。

 −くそ、衝撃で落下したか?

「イーグ副隊長」

 隊員の一人が退避の報告のため声を掛ける。

「あぁ」

全員・・退避完了しました」

「は?全員だと?」

 自分でもわかる程の間抜けな声が漏れる。


 状況を把握するために点呼を取ると、額に真っ赤な塗料を塗られた隊員が数名いる。

「ペイント弾か」

 実弾では無かったことに安堵するが、同時に感嘆の念も湧き上がる。

「探知魔法に反応は?」

「ありません。範囲に敵反応無しです」

 探知魔法は元々登録してある魔力以外を探る魔法だ。

 その魔法を5人掛かりで構築し、スバルの伝達で常時結果を共有されている。

 高台から顔を覗かせると狙撃される事がわかっている今、次作を考えていると再び発砲音が聞こえる。

「威嚇射撃か?」

 そう考えるが、少し離れた位置にいた隊員の肩へ真っ赤な花が咲く。

「馬鹿な!どうやって?」

 再び鳴り響く銃声で1人、また1人と体に赤い花が咲き始める。

「全員身を伏せろ!」

 アレクの怒声で身を伏せる隊員達。

 −どうやってやがんだ?



「アレクが楽しんでるね」

 ジンが嬉しいそうに話しかけてくるが、コチラとしては隊員の士気が失墜するのではないかと不安でしかない。

「やりすぎないと良いですけどね」

「それは大丈夫じゃないかな?彼めんどくさがりだし」

 確かにアレクはものぐさだ。だが、与えられた仕事はしっかりと完遂する。

 今回アレクに指示したのは狙撃隊の封じ込み。

 狙撃というものはそこにいるかもしれないと言うだけで牽制になる。

 それはお互いに同じだ。

 なので、戦場においても狙撃部隊の封じ込みは割と優先的に行われている。

 遠方から、法術での集中攻撃や隠密部隊での奇襲など、狙撃部隊の危険度は非常に高い。

「つーかよぉ、今回俺の仕事はあんのかァ?」

 気だるそうに頭の後ろで腕を組みながらユーグリットが呟くが、

「すみません。多分出番無いです」

 治癒術師であるユーグリットは誰かが怪我をしなければあまり出番は出てこない。

 支援法術自体も優れてはいるが、今回はクロウから使用禁止の命令が出ているのでお預け。

「まぁ、怪我は無い方がいいからなァ」

 ボヤくユーグリットを横目にアレクの支援を指示したエレナの事を考える。

「エレナ先輩。頼みますよ」


「…!!」

 何かを感じ取り後ろを振り返るがめの前には森が広がっているのみ。

「クロウ君が呼んでる気がしたのですが…」

 森を駆け出すエレナの役割は2つ。

 敵の隠密部隊の制圧とアレクの守護。

 既にアレクの近くには影を忍ばせてある。あとは隠密部隊を制圧すれば仕事は終わりだ。

 人の気配を感じ取り木陰に身を潜めると、少し離れた距離を敵と思われる部隊が通り過ぎる。

「アレは…サリーさんでしょうか?」

 頭を覗かせながらそう呟くと、風魔法を展開する。

拙い文章でしたが、ココまでお読みいただきありがとうございます。

誤字脱字等があればご指摘を、また、応援ブックマーク等の評価も是非お願い致します。

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