最愛なる日
トゥルートゥルールル
トゥルートゥルールル。
「もしもし?」
「こんにちは。昨日白い猫の件で電話番号を聞いたものです。梶谷修造と申します。僕、今回白猫のボブの飼い主として、本当に助けていただきありがとうございました。とても有り難いです。」
「あ!はい。わかります。ボブちゃんっていうんですね。良かった~。あなたから連絡来るのはとても嬉しいです。ボブちゃんもなんとなく、ここ3日間くらいソワソワしてて、寝る時も、落ち着かない様子だったので、あなたに会いたかったんでしょうね。連絡来てよかった。」
始めて話す女性の声。なのに…
懐かしく暖かな印象を受けていた僕は、早速、退院と言うか、倒れてしまった後片づけをして、彼女に早速逢いたいと言う事を伝えた。
その日、僕は、この家出、白猫ボブのおかげで、またかけがえのない人と出会うことになるのであった。
僕は、夏のこの日を忘れない。黄色いワンピースを着てきた彼女。薄いカーディガンも着ていただろうか。病院の近くの公園でくつろいでいた彼女。長い髪は薄い茶色をしていた。
一瞬僕の中で、時が止まっていた。彼女を見た瞬間。僕の中に赤い血が流れているのだとハッキリ分かったくらいだった。僕は、この時点で、彼女に心を奪われていたんだ。優しそうなほほえみをこちらに向けて、僕の事に気付いたらしい。ボブは、彼女の膝の上にいた。彼女の座っていたベンチに向かっていった僕は、シャイな部分のあるこの僕が、彼女と話ができた時、それは彼女の声が、懐かしくもあるような、そんな声に、助けられていたのだとすぐにわかった。
「こんにちは。」
「初めましてですね。昨日はお電話嬉しかった。ボブちゃん。元気にしてますよ。うちも前猫を飼ってた時のゲージがあってよかった。
ボブちゃんはとても元気な子で、ゲージに入れるのなかなか難しかったですよ。」
僕は、赤くなっていた頬を、隠しきれてはいなかっただろう。でもやっぱりボブは元気だったのかと思ってしまった。
「すみません。やはりボブは、元気だったですか?僕のボブの第一印象も元気な奴だったんですよ。僕、すみません。窓を開けっぱなしにしていた日がありまして。そこで僕後悔しました。」
謝る言葉しか彼女の前で出なかったのは恥ずかしかった。後々、このことを彼女に聞いてみると、真っ赤にした頬を私に向けてくれて本当にうれしかった。純粋さが伝わってきた。と、言っていた時があった。僕は…
僕は彼女に恋をした。ボブが起こした。家で騒動のおかげで、この後の人生どれだけ頑張れただろうか。
「ありがとうございました。また連絡させて下さい。ボブの恩人です。またこのボブを気に入ってくれてたら、見せたいです。」
思い切った僕の言葉に僕も驚きながら、彼女が言ってくれた言葉は、
「そうですね。綺麗な白猫。拾った時は、少しおびえていましたが、直ぐに、足元をすりすりしてきてくれましたからね。私も昔かってた猫を思い出しました。柔らかい毛並み。また会いましょう。その時はよろしくね。」
彼女の連絡先は、いまだに変わっていない。教えてくれたその番号は、僕のラッキーナンバーとなっていったことだろう。