始まりの終わり
今回で主人公?の男フルネームが分かります!多分勘がいい人はすぐに分かると思いますけど…
初めて君と顔を合わせた時すごい顔してたよね。
今思うとあれ、驚いてたんだね。そりゃ、そうだよね、あんな登場の仕方ならね。
でもまぁ、私はいい思い出だと思ってるよ。
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目の前に広がった水色ー、いや、正しくいえば青みがかった白、だろうか。
それは艶やかで光沢が有るかの様な、そんなーー髪だった。
蜘蛛なのに髪…?とズレた感想を考えながら、逃げなくてはとも思っていた。
しかし、体は言うことを聞かない、どうやら情けないことに腰が抜けてしまっている様だ。
ゆっくりと、ソレはこちらを振り向く、オッドアイのパッチリとした目、ドレスを思わせる、白が基調の服、出るところは出ていてくびれがしっかりと存在する。女性だった、いやーー、女性の様な何かだった。
口は下顎が有るべきはずの場所に、まるで虫の様な牙の並んだモノがあり、蜘蛛の様な体が太ももから下を覆っていた。
「うわぁぁぁぁぁあああ!!!??」
本気の叫び声が思わず出た、過去一番に驚いただろうか。そう思うほどにその姿は人間からかけ離れていた。要約するなら、昔、友人とゲームをしていた時に出てきたモンスター「アラクネ」によく似た姿だった。
このままだと食べられる!命の危機を感じた僕は申し訳ないと思いながら、さっきおばあちゃんから貰った柿を2、3個ほど目の前のモンスターに投げつけた。
モンスターがどんなものを食べるか分からないが、せめてもの命乞いだった。
きっと柿が気に入らなければ僕を食べるだろう。腰が抜けてしまっているから動けない僕はその時を待った、しかし返って来たのは思ってもいないセリフだった。
『大丈夫、ですか?』
壊れたラジオから聞こえる女性の様なその声は心配そうな口調でそう言って来た。
「…え?」
思わず顔を正面へと向ける、そこには器用に蜘蛛の足をたたみ、こちらに手を差し伸べてくる、モンスターの姿だった。
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『いやー、驚かしてすいませんでした!まさかそこまで驚くなんて』
えへ?っと戯けて笑って?見せるモンスター、もとい彼女。
誰でもあれぐらい、又はそれ以上に驚くと思う。虫が苦手な人なんで最初の蜘蛛の足の時点で卒倒待ったなしだと思うが…。
どうやら勘違いだったらしい、人を襲うと思っていた彼女はその見た目に反して、人を守る役割をしているそうだ。見た目に騙される。とはこのことなんだろう。
「で、…君は一体何者なんだい?」
そしてここからだ、僕の人生はここから変わった。いい意味で、とは捕捉がつくが。
『あ、そうですね。自己紹介をいたしましょう。』
ニッコリとこちらを見て目が嬉しそうに笑った。
『日本自衛隊特殊専門部隊所属』
こちらの目をしっかりと見て、
『第一人型多重脚ユニット「アラクネ」適正者、女郎シーエ、と言います!』
素直に言おう、あ、これヤベー奴に目をつけられた。そう思ってしまった。
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一つ彼女に当たってしまった柿を除き、投げてしまった柿を集める。
当たってしまった柿は『責任もって私が食べます!』とよだれを垂らした彼女が言って来たので、食べてもらっている。
虫の様な口で器用に手を使わず柿を食べており、目は綻んでいた。
「んで、なんで俺を追いかけて来たの」
さっきから聞けて居なかった疑問を投げつける。彼女は思い出したかの様に上半身に着ているドレスをまさぐり、見覚えのある長財布を取り出した。
『これ、貴方が本屋へ向かう途中で気づいていなかったかもしれませんが、鞄の空いている所から落ちましたよ?』
えっ!?と思い肩掛け鞄を見る、確かにチャックが開いてた。あ、危ない…。
「気がつかなかった、ありがとう。女郎さん。」
『いえいえ、あ、女郎じゃなくて、シーエって呼んでください!周りにはそう呼ばれてるんで!』
長財布を受け取り、中身を確認、うん。全部揃ってる。失礼かもしれないが一応確認しておいた。最近物騒なのでもしかしたら、と思ったが。無駄な心配だった。そりゃ、わざわざ持って来てくれるんだから、盗むなんてしないだろう。
用件はそれだけだったのか彼女は元来た道を戻ろうとする。
『では私はこれで…あ、その前にお名前伺いしてもよろしいですか?』
「あ、いいですけど…どうしてですか?」
『近いうちにまた会いそうなので』
ニッコリとまた笑う。
不思議に思った、そんな直ぐに会うようなことがあるだろうか、と。
まぁ、別にいいか、と考えるのをやめ、自分の名前を言った。
「恵寺 悠です、今日はありがとう御座いました」
『エムジ、ユウ。ありがとう御座います!では!御休みなさい!』
彼女は満足げに手を振りそのまま闇の中に消えていった。
不思議な体験だった。と帰路に着こうとし、そして思った。
てか道路どうすんだよ!あと、待てあいつ、ここまで来たって事はストーカーしてたってことか!?
目の前の凹んでしまった道を見て、恐怖したがさらに恐怖した。
…帰ろう。
家に帰り、シャワーを浴びてご飯を作り、寝た。
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『…、…ぽーん、ピンポーン』
朝起きたら仕切りにインターホンが鳴っていた。まだ6時。郵便などが来るには早すぎる。
自室からは玄関の方が近いのでそのまま玄関へ向かった。
玄関の扉を開けるとそこには…
『おはようございます!恵寺さん!』
昨日会った異形な彼女とムキムキマッチョメンなサングラスをかけた人が2人待っていた。
「Oh……」
きっとこれから俺はどこかに連行されるのだろう。しかしこれだけは言っておきたい。
「シーエさん、貴方また尾行しましたね?」
彼女はないはずの口で口笛を吹こうとした。
はい、てなわけで3話でした
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Twitterアカウント「女郎(蜘蛛の絵文字)シーエ」です!URLが何故か出ない…