蒼空の色、華の色、太陽のいろ
花を摘む 草を刈る
木の実を集め 木の根を掘る
土も使う 泥にする
石を砕くことも 色を求める
湯を沸かす ぐらぐらと
糸を紡ぐ煮る 水にさらす
白なら何度もさらして
空の光に さらす
色を抜いていく
染めの時は 温度に気を使う
熱すぎては ゆるすぎては
思う色に 染まらない
星の数程 世界に溢れる
色それぞれ
碧と赤と白 国の紋章の色
即位の礼 王がまとう その衣装
染め物 刺繍が 国いちと
呼ばれた私が 選ばれた
心を込めて 誇らしく
願いを込めて 紋章を刺していく
碧と赤と白 国の紋章
喜ばしく ひと針 ひと針
国の泰平を願い
時をつぎ込み 刺していく
やがて それは出来上がり
王宮深く おさめられた
美しく 浮かび上がりし紋章
まといし者の 心を喜びに満たす
褒美をやる
王宮に呼ばれし 職人
見事なり
蒼空の色 白い華の色 赤い太陽の色
上手く出来てる 誉めてしんぜよう
職人は 失礼ながらと 言葉を述べた
碧は人民の涙 白は殯の色 赤は炎の色
国の紋章に 陛下が背負う 御身が背負う
紋章に 込められたお色の意味でございます
それを 忘れてはならない
神からの 戒めの お色で ございます
賢帝ならば それを 心に刻む
愚帝ならば それで 怒りをつくる
職人は 激しい叱責を受け
城を追い出された
それから 職人の事を
知る者は いない
花を摘む 草を刈る
木の実を集め 木の根を掘る
土も使う 泥にする
石を砕くことも 色を求める
湯を沸かす ぐらぐらと
糸を紡ぐ煮る 水にさらす
白なら何度もさらして
空の光に さらす
色を抜いていく
染めの時は 温度に気を使う
熱すぎては ゆるすぎては
思う色に 染まらない
星の数程 世界に溢れる
色それぞれ
燦々 赤い太陽の模様
唄う 碧空色の小鳥
はらひら舞い飛ぶ
白花弁 大輪の華
ひと針 ひと針 刺していく
村人に頼まれた
娘の晴れ着に
刺していく
幸せを願い
希望を願い
優しい模様を つくりだす
風の噂で
新王の 衣装の紋章
数多のやんごとない
身分の目に留まり
職人を抱え込むべく
探しているらしい
青の空
白い砂
繰り返す 水の唄
チチと 窓から入る 鳥の声
緑の木の葉は 艶やかで
それに絡む 赤の花
かじると酸っぱい
木の実の花は
白くて 香る
娘の晴れ着を
産着の模様を
独り静かに
刺していく
静かに 波唄う声聞きながら
優しく願いを込めて
布に 世界を 描いてく