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プロローグ


照りつける日差しと熱された砂の中をその男は歩いていた。赤々と降り注ぐ日差しは砂漠を歩くものに乾燥と死を与え、歩くたびにまとわりつく砂は足裏を焦がす。周囲には生き物一匹どころか、岩ひとつなく真っさらな大地が広がっていた。男は大きくため息をついた。

「...まだ夜に着かんのか...」

そう独り言を走ってから、それをした所で何も解決しない事に気づくとまた黙々と歩き出した。男は砂漠の茶赤に落ちたインクのような真っ黒な布を被っていた。背を伸ばせば2mはあるだろうが、強い日差しと迫り来る飢餓のためか小さく見えた。

(以前竜を喰ったのはいつだったか。太陽がもう60回は地に腹を擦っている。もうそろそろ何か食わないと死ぬかもしれんな)

事実、彼は幾度もめまいに襲われ気を失いかけていた。鼓動はいやに大きく聞こえ、常に耳鳴りがする。旅に出る前にたらふく食ったはずだが、あれでも足りなかったということだろうか。

(まっすぐ...まっすぐだ)

ただひたすらに歩く事を考え続けることに集中するその後ろ姿には、二対の足跡と引き摺られた布の跡のみが付いていた。


太陽が二度地平に腹を擦った頃だった。

「...ギャオォォォ...」遠くで聞こえた咆哮が、失いかけた意識を戻す。

「...あぁ、やっとか」

その咆哮は聞く者に畏怖と恐怖を抱かせるはずであったが、その男にとってはランチの前菜と大して変わらなかった。

数秒の後、遠くだったはずの咆哮はすぐ近くで聞こえた。「グルォォオォォン!」次の瞬間、鋭い牙が男の背後から襲いかかる。体長10mはあろうかという巨体の竜は、音もなく砂を攫ったのだった。この巨大な砂漠では、竜は捕食者であり被食者である。つまるところ、竜が竜を喰らう事で生態系が成り立っている。そしてこの様に砂漠を歩く竜以下の生き物は全て竜の腹に入る。

故に竜という種はこの砂漠の支配者であった。砂の上を歩く生き物は全て、竜の餌なのだろう。ただ一人を除いて。

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