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遠い祭りの日

 光は魔王さんと結ばれた。


 あの時、この世界の神が魔王城に現れたときは、さすがに私も狼狽した。

 話が違う。

 光をあの世界に留めて、魔王さんと結ばれることを見守るという誓いを反故にするつもりか、と。

 警戒した私は思わず、光をきつく抱きしめてしまった。


 どうやら私の誤解だったらしく、光の気持ちの確認と……要するに光の背中を押しにきたのだろう。

 いらぬお節介の気もするが、私も似たようなことはしたので、事が終わってみれば良い結果だった。


 これで私たちの契約は成立した。


 五十六億七千年。

 代理といっても、ただ世界を見ていればいいそうだ。

 常に目を配ることもなく、手を出す必要も一切ない。

 神界でじっとする必要はなく、あの子のいる世界へ行く事も、あの子と過ごす事も、いくらでもできる。


 ただ、この世界を見つめる。世界を忘れてはならない。

 世界がどうなろうと、その在り様から目を逸らしてはならない。

 その立ち位置から逃げてはならない。


 正直、気が遠くなりそうだが、光と共に過ごす時間だ。

 光速以上で過ぎてしまうのは、わかりきっている。


 だが、私の時間は、たったの五十六億七千年。

 私が消えたあとも、光はさらにその先まで生きていく。


 これでは私の「光とどこまでも、いつまでも一緒」という誓いが果たせない。

 もっとも、誓いなどなくとも私が光と離れることなどは、あろうはずがないのだが。


 ここで縦ロール神様との約束が生きる。

 彼女は言った。「私を真の妹として刻む」と。


 神の存在は永遠。

 ならば、その妹の存在も永遠でなければならない。


 彼女の力を以てしても、五十六億七千年を経た私を、そのまま光の生きる世界で存在させるのは無理な事――世界のルールに反するそうだ。なんだそれ。

 だが、生まれ変わることはできるそうなので、そちらで手を打つことにした。


 私は今生の父と母に感謝している。

 ふたりの存在があって、私は世に生まれ、光のそばで生きていくことが可能となった。


 必然とは思わない。

 父と母が出会い、結婚し、私が生まれ、そしてあの家を買い、光の両親と仲良くなった事。すべて偶然だ。

 そんな偶然を生み出してくれたふたりには感謝しかない。


 なので、今後は親孝行をしよう。ふたりには期待してもらいたい。

 世界規模の巨大結社に膨れ上がった、私の組織の総帥にでもなってもらおうかしら?


 話が逸れたわね。


 そんな両親に感謝している私は、あのふたり以外から生まれることなど考えられない。

 だが、ふたりはこの先、同じ時代、同じ場所、異なる性別、触れあえる年齢。

 残念ながら、どれも一致しない。


 ふたりがつがいになって共に生きられることは、もう二度とない。

 ふたりが子が成す機会は永遠に訪れない。

 私がふたりの子供として、世に出づることは不可能だ。


 父母以外で考えられるとしたら、ただひとり。

 どの世界、どの時間でも、たったひとりだ。


 契約は対価をなくして成り立ちはしない。

 すでに、ふたりの神にも承諾を得ているので、その時が本当に楽しみだ。


 私は光の幼馴染となり姉になり――五十六億七千年後には娘になる。


 あぁ……その時の事を考えると、歓喜が体中を駆けめぐり、立っていられないほどだ。


 だが、まずはこの五十六億七千年を光と共に過ごす至福に身を委ねよう。


 光……私たちは永遠に一緒よ。私たちの終わりは世界の終わり。

 だから、私たちが終わることなんか決してない。



 ふたりの世界は永久とこしえなのだから。






前回、可能ならば同日に続けて投稿したいと思っています、と後書きしました。

無理そうですので、次話のエピローグは8/6 お昼の12時を予定しています。

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