表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後の絵描きさん  作者: 夢迷四季
5/49

照る日


「朝早くから筋トレなんて…」


教室に来るなり目に飛び込んできたのは、明枝がダンベルを持って筋トレしている姿だった。


「お、黒川。おはよー」


私の驚きなど気付いていない様子で、きらっきらの笑顔で挨拶してくる彼に私もーー引き攣った笑みかもしれないがーー笑顔で返す。


「お、おはよー」


えーっと、ここまで筋トレ好きだったのか、明枝って。というのが素直な感想である。


正直引きました。いや、性格はいいやつだし見た目も不良っぽいとは言えイケメンの類に入るくらいだしで問題なんてないわけだけど。やっぱり誰にでも欠点は存在するんだねってわかった(笑)


苦笑しながら席についても私の中での独り言は止まらない。


何だか和むし面白い情報ゲットできたしついてるってことで諦めようか。小説書く時に使えそうだしねー(笑)明枝には悪いけど。にしてもあやつ、ギャップ凄すぎだわ。見た目強面なのに性格良し笑顔良し元々イケメンだから筋トレばっかして筋肉ムッキムキでも気持ち悪くないし、ちょっとずれてるところがまた面白い。この高校きてよかったなと思える瞬間である。ただ一つ覚えておいてほしいのは、明枝は恋愛対象には絶対できないという事。わたしには無理。細身の人が良いんだもん!まあそんなことはどうでもいいかもしれないが…


さて、今日のは同学年の美術部とイラスト部の友人達に、交流会という名目でお弁当を一緒に食べることになっている。


やっぱり人間観察に情報収集は必須だもんね!本人に自然な流れで話を聞きやすくもなるし、基本的な知識はゲットしておきたいなあ。あとは推測でどうにかすればいいし。うん、何はともあれ、交流会という名の情報収集会が楽しみだ。


多分このとき誰も見ていないが、とてつもなく悪魔の笑顔になっていたと思われる。



午後12時40分、空里高校1年4組の教室では、黒川陽月を中心に交流会という名の情報収集が始まろうとしていた。今日は普段あまり喋らない他のクラスの知人も集まっていた。やっぱりお弁当食べるときは人数多いほうがいいもんね!しかもオタクの集まりだからか、すぐに打ち解けてワイワイやっている。さすがだ…この交流会を提案した自分がついていけなくなりそうだよ。


しかし!ここで負けたらこの交流会を提案した意味がなくなってしまう!


情報収集のためだ、と気合を入れなおしてどうにか会話に入っていく。


「美術部って漠然と絵を描いてるってイメージしかないんだけど、普段部活動って何をしているの?」


マニュアル通りに言ったが少しぎこちなさ過ぎただろうか、と心配したがどうやら考え過ぎだったみたい。まだ少ししか会話したことのないクラスメート、本宮彩がきりっとした顔で答えてくれる。


「絵画のジャンルとしては特に決まってないけど…油彩が多いかな。でも縛りがないから基本自由だよ。ちなみに今は私金魚描いてるんだ~咲ちゃんは柴犬?だったよね!」


めちゃくちゃ上手いんだよ~と咲を褒めては咲に褒め返されるという会話がしばらく続いた。うん、わかったことは、ここ空里高校の美術部では油彩が多いという事と、彩と咲がとても絵がうまいという事だ。それくらいでも十分な情報である。


だってこれからは模写絵頼めば書いてくれるんだからね!!見てみたかったんだよね、美術部員の鉛筆での模写絵!絶対上手いのはわかるんだけど、その書いてくれた人の癖を見てみたいんだ。それぞれどんな癖持ちなのか、どんなことが得意そうなのか、とか。


まあそんなことは今は置いておこう。持っていて損はないであろう彩の言葉をメモしてからお礼を言う。


「彩、為になる情報提供ありがと!!」


しまった、と思ったけど言ってしまった言葉はどうしようもないから、何事もなかったかのように笑顔を向ける。その言葉をと同時に見せた笑顔で、一瞬きょとんとしていたけれど彩は笑顔でうなずいてくれた。良かった良かった空気を読んでくれる人で(汗)

ちなみに先ほど集まった直後に全員一致で呼び捨てに決定していたので、呼び捨てです。慣れなくて呼び捨てじゃない人も若干いるけど。

次に咲へ質問した。


「美術部に限らず絵を描く人全員に当てはめて聞きたいんだけど、絵を描く時に一番大事なことって何?」




「自分の書きたい絵を描くことが一番大事だよ!」


咲がすぐに答えてくれる。

そうかなるほど、芸術家って自由な人が多いのも納得出来る。確かに自由に感情表現する感じで描けば生き生きとした絵を描くことができるし、何より描いている本人がストレスを感じずにのびのびとした絵を描くことができるわけか。

…ん?ちょっとおかしな解釈しちゃったかな。ま、いっか。大体こんな感じの解釈でも間違いではないだろう。やはり咲に聞いて間違いではなかったようだ。


「咲、ありがと!なんとなく理解できたよ!」


私がそう言って咲にお礼を言って次の質問をしようと思った次の瞬間、ある男子クラスメートが会話に割り込んできた。


「何の話してるの?俺も混ぜて混ぜてー!」


おチャラケた話し方をしているこいつは伊理塚(いりづか)政人(まさと)

最初にクラス内で行った交流会でたまたま同じグループだったんだけど、そこで少し話して以来何かと話しかけてくる邪魔と言わざるを得ない男子である。はっきり言って苦手な人なんだ。不真面目で先生に怒られてばかりだし、授業妨害してくるしずる休みするしである意味ーー悪い意味でーー目立つやつだから覚えてるんだけど、本人自覚無いみたいでちょっと怖い。

突然会話に入ってきた伊理塚に作り笑いで対応した。


「伊理塚くん、だっけ?突然会話に入って来たけどどうしたの?」


…え、まさか、全力の作り笑いに気付いてない…!?伊理塚は心底嬉しそうに笑顔で答えてきた。


「まだ少ししか話したことないのに名前覚えてくれたんだ?嬉しいな~ありがとう!で、なんで声かけてきたかといいますと、単に面白そうな会話してるな~って思ったからだよ」


ニコニコしながら得意げに話す伊理塚に自然な笑顔は絶対見せないと誓いました、この私は絶妙なタイミングで殺気立ったグループの方を確認してから伊理塚に向き直ると言った。


「それはうん、いいんだけど、伊理塚ってあの(殺気立った)グループにいるんだよね?戻った方がいいんじゃない?」


敢えて殺気立ったグループに強制送還させるために言った私に言葉を、伊理塚はちょっと理解できなかったみたい。伊理塚は不思議そうな顔をして振り返ると叫ぶ。


「え、え!?みみみ皆!?!?ど、どうしたのさそんなに殺気立ってこっちきて…む!?ちょ、ちょっと待ってどこに連れて行く気ですか!?ねねねちょっと待って怖い怖い怖い誰か助けてええええええ!!!!」


伊理塚くん、御愁傷様です。あの殺気立ったグループに追い出されないだけマシだと思いなさい。一人だけ彼女という肩書を手に入れようとしても無駄だし、第一そういう情報はいち早く掴んでいる私に通用しないからね。

ニコニコしながらそんなことを考えている私に恐る恐るといった感じに声をかける笑麻。


「ひ、陽月?真っ黒い笑顔を浮かべてるけど、怒っていらっしゃるの?」


おっといけない、ポーカーフェイスポーカーフェイス。


「いいえ?(笑)これっぽっちも怒ってなどいませんよ?ただ少しイラついただけで」


笑麻は呆れたようにため息をつくと苦笑した。さすがは笑麻、わかっていらっしゃる。


「まあお金と機会があればねえ」


うん、だから無理強いはしないよ。ストレス発散しに行く予定ができればそれでいいの。


--そう、カラオケという名のストレス発散にねーー


まあそんなこんなで伊理塚というモンスターが現れたおかげで情報収集が散々なことになった昼休みが終わったのであった。


午後3時40分。SHR(ショートホームルーム)終了と同時にチャイムが鳴り響き、放課後となった。

いつもならさっさと退散する所だが、今日は昼休みに居たメンバーで帰る約束をしていたために教室へ留まることとなったわけである。

たまにはさっさと退散せずに教室内を眺めてみるのもありかもしれない。4階であるこの教室からの景色は普段でも十分きれいだが、放課後の赤くなり始めの景色を見るのもいいし、何よりいい写真が撮れそうだという事に気付く。

美術部とかイラスト部とかに見学言ってみたいから、頼んでみようかとも悩んでいたところにまた視界に入ってきた人物を見て呟いた。


「…また暁恭夜くん……」


耳にイヤホンをつけて一心不乱に絵を描いている姿は初めて見た。

正直物凄く綺麗だ、と思ってしまった。クラスメートの男子のことをみて綺麗だ、なんて思う自分が凄く気持ち悪く感じるが仕方がない。本当に綺麗で、幻想的に見えてしまったのだから。

心に温かいものが広がっていく感じがしたが、それがどういった感情なのか今の私には理解できない。

複雑な感情を心の中に抑え込むと、ため息をついた。

しばらく暁恭夜くんを

無意識に眺めていたことは言うまでもないだろう。


そうして誰も気付くことなく物語が動き出していったのである。



しばらくは【生きるために】の方も並行して作成していくので

一週間毎に投稿していくとは言え小説自体は不定期になりそうです。

欲張りな者ですみません。

もしかしたら一週間ごとの投稿は不定期投稿に切り替えることになるかもしれませんのでご了承ください。

その際は活動報告・ツイッターにてお伝え致します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ