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放課後の絵描きさん  作者: 夢迷四季
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幻日 二

主にシリアスさんが出てきます。


 「――――陽月さん、」


突然聴こえた女の子の声に、ハッと目を覚ます私。

驚いて目覚めたもののぼんやりとする意識に不快感を感じながらも、起き上がらずに辺りをキョロキョロと見渡してみた。

どうやら仰向けに寝転んでいる状態らしい。

目の前に広がるのは青く立派に育った木々が、そしてうっすらと青空が見えた。

現実味がないのは何故だろうか。

…考える気力がわかない。


ーー…一体ここは何処…ーー


そんな素朴な疑問を抱きながら起き上がってみる。

いつまでも寝転んでいたって何も変わらないからね。

段々とハッキリしてきた意識と視界。

ゆっくりと首の回る範囲を見渡した。

やはり立派な木々が揃っている。

木々の間からは木漏れ日が、幻想的な風景を作り出していた。

どうやら森の中のようである。


「陽月さん」


今度ははっきりと、私を呼ぶ声が聴こえた。

…後ろ?

反射的に振り返って思わず声を上げそうになった。

いつか見たあの完璧すぎる女の子がそこに立っていたのだ。

ミディアムヘアの黒髪に真っ白なシャツとショートパンツを履いている。

靴は…履いていない。

顔は美人顔ではないが、可愛い。

全体的に白い印象の女の子。

声は格好いい感じだがやはり見た目にあっていると言える、少し淡い感じの声だ。

ちょっとだけ恐怖すら感じるほどの。

彼女はまた私を呼ぶ。


「陽月さん」


何故私の名前を知っているのだろう。

そんな疑問が浮かんだが、とりあえずいつまでも呼び続けさせるのはかわいそうなので返事をした。


「…はい」


いや、返事をしようとしてどう答えていいのかわからず、結局「はい」としか言えなかった。

まずここはどこ?


「えっと、ここは…?」


私はこの目の前に立つ女の子に聞いた。

何かを伝えられる前に聞いておかないと、と思って何となく。

本能的な問題だろうか。

女の子は口を開いた。


「ここはあなたの夢の世界」


それは、つまり。


「私は眠ってるって事?」


あれ?

私さっきまでどこにいたんだっけ?

女の子はちょっと戸惑いながらも答えてくれた。


「あなたは先程まで文化祭を楽しんでいた」


そこまで聞いていきなり頭の中に自分が体験していた時間の映像が流れた。

もちろん自分視点で。

それを見て思い出す。


ーーああ、なるほど。伊理塚に階段から突き落とされたせいで気を失ったのかーー


そしてここにいる理由もちょっと理解した。

しかしこの女の子は一体誰だろう。


「あの「私の事は順を追って説明しますから」


私の問いを遮ってそう言った女の子は少し影を帯びていた

そして少し成長したようだ。

女の子と呼ぶには見た目の年齢が合わない程に。

今いるこの場所には不似合いな黒い感情が見え隠れしているように見えるのも気になった。

しかし彼女は説明すると言ったのだ。

とりあえず私は何も言わずに話を聞くことにする。

私は無言のまま彼女を見つめた。

彼女はそんな私の様子を見て、ようやく話しだしてくれた。


「私は…(みなもと)(しおり)。一年ほど前に事故にあって死んだ者です」


そして時間がないから、とざっくりとした説明をされた。

ここは(ひづき)の夢の世界であり、非現実であること。

私は階段から落ちたことで頭を打ったらしく、生死をさまよっている状態なのだという事。

そして源栞さんは恭夜くん…暁恭夜の幼馴染だったという事。

もう一人、多加木(たかき)丈也(ひろや)という幼馴染がいること。

突然そんなたくさんの事を教えられて正直頭が混乱した。

しかし嘘をついているようにも見えない。

つまりすべて真実であり、私は今非常にまずい状態だという事だ。

そして栞さんは最後に一言口にした。


「生きたいですか?逝きたいですか?」


まるでどちらも叶えられると言わんばかりの言い方でそう聞いてきた。

そして同時に迷った。

現実に戻れば確かに彼女の話を確認することはできる。

しかし現実に戻ればまた瀬奈、泉、伊理塚などに会う事もある。

否、会うだろう。

私が生きていると知ればあいつらはまた嫌がらせしてくるだろう。

次会ったら今度は死ぬかもしれない。

迷い、迷った。

彼女はいつまでも悩み続ける私を、じっと見つめているだけであった。


それからしばらくして、世界が消えかけていることに気付いた。

時間はない様子がわかる。

彼女はまた、一言言おうと口を開いたが、私はそれを遮って言った。


「私はーーーーーー…!!」





気付けば周りは先程の森のような場所ではなくなっていた。

存在自体が不安定な場所で、重力のようなものも感じない。

ただただ浮いているような浮遊感があった。

先程まで居たあの源さんという人も、もう姿が見えない。

しかし声は唐突に聴こえた。

頭の中に直接語りかけられているような不思議な感覚がする。


「本当にその判断でよろしいのですか?」


再度確認を取るようにそう言う彼女。

しかし考えを変えるつもりはない。


「男に二言はないってよく言うでしょ?男の人じゃないけど二言はないよ」


その言葉を機に一気に意識が遠退いて行く感覚に襲われた。

彼女はまだ返事をしてくれていないのが気がかりで、必死に意識を保とうとしていると、ため息を吐く音が聴こえた。


「喜んでいいのか、悪いのか。私には判断しかねますね。しかしここは陽月さん、あなたの世界ですもの。あなたの望むままに……」


不思議な話し方をしたと思ったら、ゆっくりと意識が落ちて行った。

最後に源さんは言った。


「どうかーーーー」


何で最後の最後で聞き取れなかったのか、少し悔しく思う。

そして私は意識を手放した。




それから一体どれくらい経ったのか。

気付けばいつも通り夢の中で、しかし記憶の中のようにも感じられる。

そんな感覚に包まれていた。


ーーそう言えば私、どうして夢の中にいるんだろうーー


ふと疑問に思って考えると、目の前にある光景が映し出されて固まった。



それは最後に見た階段から落ちていく瞬間の伊理塚達の顔だった。



恨みの籠った表情を不気味に歪めて笑っている彼等。

それに恐怖を感じる自分。


ーーそうか、階段から落ちて気を失ったんだーー


確か頭から落ちていただろう。

だとしたら相当な事故になったのではなかろうか。

現に私はいつもより長く夢の中にいる気がする。


「戻らなくちゃ」


私は無意識にそう口にしていた。

気付けばそこには何もなくなっていた。




まぶしい。

最初に思ったのはそれだった。

うっすらと目を開くと灰色の天井が見える。

知らない天井…。


「ここは…?」


声を絞り出すようにして一言。

しかしずっと眠っていたせいなのか、はたまた別の理由でだろうか。

普通に出したはずの声はかすれたものであった。

喉がからからに乾いていて、それ以上声を出す気になれず、ぼーっと天井を見つめた。

一体どれくらい見つめていたのだろうか。

しばらくして話し声が聞こえてきた。


「ーーー黒川さんの病室はここです。しかしまだ目を覚まされていないので、あまり騒がずに見守っていてあげてください」


知らない女性がそう言ってドアを開いたらしい。

ガラガラ…と静かに開く音がする。

ただ反応する元気が出ない。

ぼんやり天井を見つめていれば、こちらに近づいてくるようだ。

足音がだんだんはっきりとしてきた。

起き上がれない。


ゆっくりと私の周りを囲っていたカーテンが開かれる。

そして先ほどの声の主らしい看護婦のような人がこちらを覗いてきた。

というのが視界に移った。

私自身は動いていないが。

そして私を見た瞬間ちょっと焦り気味で声をかけてきた。


「黒川さん?黒川陽月さん、わかりますか?」


何がわかると言うのだろうか、よくわからないけど。

とりあえず返事をした。


「…はい」


ただ声が出にくい。

やっぱり微妙にかすれたし声が小さかったが、看護師さんには聴こえたらしい。

やや興奮気味に言った。


「今先生を呼んできますね!」


そう言ってカーテンを再び閉じると少々お待ちを、と言って出て行ったようだ。

扉が閉まる音がした。

そしてだんだん意識もはっきりしてきたと同時に頭や体のあちこちが痛み始めた。


「…うう、痛い」


そう言って身体を動かそうとするが、動かない。

痛くて動かせない。

かろうじで動く左腕を動かして頭に触れてみる。

包帯がまかれているのが分かった。

同時にカーテンが勢いよく開かれる。


「「「陽月(ちゃん!!」」」

「「「「黒川(さん!!」」」」


何とそこには咲、笑麻、紅葉ちゃん、恭夜くん、川村、明枝、真翔くん、そして萩原くんがいた。

いや、あともう一人見知らぬ人男子がいたが、彼は少し会釈しただけで何も言わなかった。


ーーあの人は一体…?っていうかーー


「皆なんでいるの?」


それが一番気になった。

だって時間把握できてなかったから。

そこで咲がすぐに答えてくれた。


「今は午後4時半になる少し前だよ!!陽月が階段から落ちたことでね!文化祭中止になっちゃって、早めに帰るように言われちゃって、先生に無理言って陽月の搬送された病院に送ってもらったんだ」


簡潔に起こったことを伝えてくれた咲は、言い切るなり泣き崩れた。


「ううわああああああああんんよかったあああああああ」


嬉し泣き?

安心してなのかそう叫びながらわんわん泣き始めた咲を支えるように明枝が肩を掴んだ。

咲は嫌がある反応を見せないところを見ると順調に治ってきているのだろうか。

とりあえず明枝が咲を連れてちょっと席を外した。

まあ、ここは共同の病室っぽいからね(笑)

迷惑になっちゃうと後々面倒だよねって事です。

笑麻もホッとした顔で近づいてくるなり言った。


「本当無事でよかった…」


そう言って私の手をぎゅっと握りしめて笑うと、ほろり、と一粒だけ涙を流した。

真翔くんも言う。


「黒川さん、本当に無事でよかった。目が覚めなかったらどうしようと、みんな気が気じゃなかったんですよ」


また敬語だ…と思いながらも皆の顔をまじまじと見てみる。

ホッとしたような、泣きそうな顔をしている感じがちょっとむず痒い。

心配かけたんだなって改めて感じた。

言わなきゃね。

丁度咲が落ち着いたらしく、戻ってきたので私は皆に向かって言った。


「ただいま」


皆それを聞いて嬉しそうに泣き笑いをしていた。


さて、物語も終盤ですね。

一体どうなるのやら(笑)

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