炎陽 十二
15分が経過し一般の方々が校内に入れる時間となった。
その時間になればもう教室にはいられないのですぐ退散する私。
それを心配そうに見ていた恭夜くんと川村には気付かず笑麻や咲に声をかけ教室を出た。
さて、まず向かったのはもちろん『古本市場』!!
やっぱり本は良いね!!
人も多く出入りする所だから多分大丈夫でしょ!!
そうして気が済むまでそこで読書したり購入したりしていた。
気付けば約二時間が経過していた。
いつまでもここにいると図書委員の人にも迷惑だろうと思ってその場を後にする。
教室を出ると…。
「お、偶然だね!!」
紅葉ちゃんと萩原くんがそこにいた。
「え!始まってから二時間近く古本市場に居たの!?」
現在ハワイアンカフェという出し物をしている教室にて談笑中。
私の話を聞いてびっくりする紅葉ちゃん。
めっちゃ目がキラキラしているが敢えて突っ込まないよ(笑)
可愛いな~と眺めるに止め萩原くんに目線を移す。
対照的に荻原くんは微妙に引きながら苦笑している。
「そんな本好きなんだね」
そう言って頼んだジュースを一口。
うーん、この二人って見た目と正反対な性格してるな(笑)
見ていて飽きない(笑)
そして話題は二人ののろけ話へ移行。
紅葉ちゃんは私が聞かなくても二人でどんなデートをしていたのか話してくれた。
「とりあえず翔が朝ご飯食べてないって言うから軽食屋さんやってるところ行って…」
そこでふと、気になったことを聞いた。
「萩原くんって名前、つばさって言うの?」
話を中断させてしまったが気にしていない様子。
その質問には萩原くんが答えてくれた。
「うん、しょうって書いてつばさ。よく間違えられるんだよね(笑)」
そう言ってまた笑う。
私はびっくりして目を見開いた。
「川村と同じだ!漢字違うけど!」
そう言うと二人はまた笑う。
紅葉ちゃんが一言。
「その人はまんま翼なんだろうな~」
おっしゃる通り、羽がついてるよ。
そんなことを言えばまた笑う。
よく笑うカップルだな(笑)
天使が二人降臨している感じがまたいいね。
微笑ましい気分になるよ。
萩原くんは言う。
「正確は全然違うとか?」
えっと。
「何か二人ともふわっとしてるように見えて案外鋭いよね」
突っ込みました申し訳ない!!
何かギャップを感じて言ってしまった。
紅葉ちゃんはまた笑い、萩原くんは苦笑しながら言う。
本当よく笑うな!!
ある意味凄いよ!
「よく言われるんだよね、ふわふわカップルに見えて意外に鋭いって(笑)」
ふーむ、なんかただ者じゃない感半端ない(笑)
そう思って一息つこうと頼んで置いたお茶を飲み、時間を確認する。
そろそろ12時になるところだった。
「二人ともそろそろ12時だけど…」
そう声をかけると紅葉ちゃんがハッとした表情をして立ち上がった。
「もうすぐ軽音部がライブする時間じゃん!!翔、行くよ!!」
あっという間に支度をした紅葉ちゃんは颯爽と教室を出て行こうとする。
慌ててその後を萩原くんが追いかけた。
「それじゃあまたね、黒川さん」
紅葉ちゃんはすでに走り去っていってしまっていた。
萩原くんは申し訳なさそうにそう言うと、返事を待たずに紅葉ちゃんを追いかけて教室を出て行く。
あの二人は喧嘩しても長続きしそうだなあ。
微笑ましい気持ちで見送ると、私も教室を出た。
ーー生徒会の仕事は昨日やったし特に何もなかったからなーー
とりあえず中庭のベンチで休むことにした。
行きたいところも別にないし、今日は晴れている。
中庭はさぞ気持ちがいいだろうしね。
そう考えて教室を出てほんの少し移動した、その時だった。
目の前には、瀬奈が居た。
別に忘れていたわけじゃない。
中庭に一般人は来ないから移動した、ただそれだけだった。
なのに瀬奈と遭遇するなんて。
「運が悪いね陽月は」
相変わらず強気な笑みを浮かべて、まるで心を読んだかのような事を口にした瀬奈。
そして後ろから一番出会いたくなかった奴がひょこっと顔を出す。
「ちーっす、黒川さーん」
泉だった。
意地悪い、何かを企んでいるような含み笑いをこちらに向けては話す。
「相変わらず無愛想な奴だな~」
そう言って近づいてくる。
私は距離を縮められないように近づかれた分だけ後ずさる。
あわよくば逃げようと考えていたところだった。
後ろからがっちりと腕を掴まれてしまった。
「っ!?」
叫ぼうとして、口を塞がれすぐに移動する男子。
ーー早瀬が何で!?ーー
私を拘束している男子は、中学の時元々同じグループだった早瀬だった。
まさか泉と組んでいるとは思っていなかったが。
ーーこの拘束の仕方をされたら逃げられないじゃん!!ーー
紐とかだったら逃げ出すことは可能なのだが、相手は元同級生の男子。
力の差があり過ぎる上に後ろからだと、最早為す術はない。
そしてそのまま人気の少ない北校舎の四階へと連行された。
「いやー早く会えて本当良かったよー」
瀬奈が笑いながら言った。
拘束はまだされたままの出し、口も塞がれていて離せない。
とりあえず暴れてみる。
「静かにしてろよ」
本当にあの早瀬なのか?と思う程に力を込められた。
けど私を傷つけないようにしている感じもした。
ちょっとよくわからない、が。
「うるせーよなーこいつ、ちょっと大人しくしてろよ」
泉はそう言って私の腹部に蹴りを入れた。
「んうっ!!?」
全く躊躇せずに、本気で蹴りを入れてきたせいで、気を失いかける私。
考えることすらも出来ない。
私の状態を全く気にせずに泉は語りだした。
全くお前のせいで俺の母ちゃんはさー父ちゃんに嫌われて追い出されたんだぜえ?お前がいじめだなんだって騒ぐからさー俺と母ちゃん家追い出されたんだぜ?母ちゃんは味方してくれたけどよー近所の人からも冷たい目で見られてよお」
笑顔を張り付けた顔を歪ませてさらに語る泉。
「黒川よーてめーがいなけりゃ俺の家族は崩壊なんかしなかったんだぜ?責任とれよな」
そう言ってさらに殴る、蹴るを繰り返す泉。
痛みが感じなくなるほどに全身を痛めつけられていく。
言葉さえ発せなくなる程暴力を振るわれ続け、気付けば拘束は解かれていた。
どのくらい経ったのだろう。
もう立ち上がることも出来ない。
泉はようやく落ち着いたらしくニヤニヤと私を眺めている。
そして瀬奈にこそっと何かを伝えた。
瀬奈もにやっと笑うと笑いながら言った。
「ここの文化祭、どうなるんだろうね(笑)」
気付けばここは南校舎の階段前の廊下だった。
瀬奈に無理やり立ち上がらせられたと思ったら、ここに連れてこられた。
人に見られないように早瀬が立ち回りながら慎重に。
一体どうしようと言うのだろう。
「やあ陽月さん。話すのは久々だね、元気にしてた?」
突然目の前に立つ男子。
瀬奈や泉たちも歩みを止めると声をかけた。
「あ、本当この間はサンキューだったよ~」
私はぼんやりとする頭を無理やり持ち上げて瀬奈が感謝した男子を見た。
その瞬間、絶句した。
「伊理塚のおかげでこの文化祭来れたし、マジありがてーわ(笑)」
目の前にいるのは伊理塚、その人だったのだ。
笑いながらも感謝してる泉なんて初めてみた。
まさか泉たちと伊理塚が繋がってたなんて…。
ーー全く、世間は狭いって事かーー
私はもう何もする気が起きなくて、ぼんやりと伊理塚を見つめただけ。
周りからはそう見えていただろう。
内心は諦めの感情と恐怖が残っていたが。
伊理塚は瀬奈と泉に笑って声をかける。
「感謝すべきは俺の方だよ、水谷と泉がいなきゃこんなことできなかった」
そして私にさらに近づくと、瀬奈から私を奪った。
ように見えただけで、実際は受け渡されたのである。
私の肩を支えて歩く伊理塚は一言、ニタァと笑って口にした。
「じゃあな、悪女」
そう言って、伊理塚は私を階段から突き落とした。
頭から落ちるようにわざと。
そして私が落ちきる前にその場を離れて行った。
最後に早瀬が申し訳なさそうな表情で見下ろしていたのが、少し気になった。
ドサッ。
気を失った。




