炎陽 六
笑麻はその日、意外にもいつもより早く来た。
まあ理由は文化祭が楽しみだったのだろう。
というかそれしか考えられない。
だって咲と彩と文化祭回るらしいからね(笑)
さて、笑麻が早く来た。
つまり真翔くんに関して話せる時間があるという事。
もちろん無理強いはしないけど、笑麻は人見知りだからなー。
少々心配。
とりあえず声をかけてみよう。
「おはよー笑麻」
声をかけられた瞬間笑顔で返してくれる笑麻。
「おはよー!今日は文化祭だねー!超楽しみ!!」
やっぱりテンション高い!!
楽しみにしていたという言葉が聞けてホッとして、笑顔で返してから本題に移った。
「笑麻さん、突然ですが紹介したい人が居ます」
そう言ってみる。
本人の意思次第だからまだ会わせないけど。
笑麻はきょとんと首を傾げた。
ーーああ、この方もぜひ青春してほしいーー
唐突にそう思った。
まあ伝えはしないが(笑)
とりあえず紹介したい人について伝えていく。
「まず一言で表すなら真面目男子。あ、でも、NE〇Sが好きってい「なん、だと…!!?」
盛大に遮ってカーラーノー伝説の人物にでもあったような反応ありがとう(笑)
ちょっと見てて楽しいです。
御馳走様です(笑)
そしてNE〇Sの話題出した途端食いつきました笑麻さん。
男子だと言ったが聞いていただろうか。
「男子だけど、どう?会ってみたい?」
一応確認でそう聞いてみる。
男子かあと言ったちょっと微妙な表情をしたが、すぐに考え直したご様子。
是非とも語りたい、と顔に書いてある(笑)
「是非!紹介よろ!!」
よかった~ミッション達成できそう!
まあ単に真翔くんを紹介できるように促すってだけだけど。
そこで致命的なミスをしていたことに気付く。
「あ、その男子の名前だけど、真翔くんって言うらしいよ」
そう言うと笑麻は速攻名前を覚えた。
す、凄い…。
恐るべき記憶力!
羨ましいいいいい!!
っといかんいかん。
時間に余裕もないので早速恭夜くんに声をかけた。
「恭夜くん、真翔くんを紹介したいんだけど、呼んできてもらえますか?」
最悪、クラス聞くの忘れた、とか呼び辛いから、という理由で頼み込もうと思っていたが、そんな必要はなかった。
恭夜くんは特に何も言わず、真翔くんを呼びに行ってくれた。
ーーこういうところがまたミステリアスで格好いいんだよねーー
無意識にそう考えてからすぐに考えるのをやめる。
まだ認められないからね。
それからしばらくして、恭夜くんが緊張気味の真翔くんを引っ張ってきた。
なんか、微笑ましい(笑)
そして私と笑麻の目の前に来た。
私は早速紹介する。
「彼が真翔くんです」
真翔くんは微笑を浮かべて会釈した。
「真翔です。よろしくね、古里さん」
あれ?
笑麻の事苗字さん付けなんだ、この人。
何か珍しいなあ。
笑麻は待ってましたと言わんばかりの笑顔で、しかしちゃんと挨拶を返す。
「うん!よろしくね、真翔くん!あ、あと、苗字にさん付けしなくていいよ(笑)」
笑麻が早速指摘(笑)
まあちょっと違和感あるもんね、言いたくなるわ(笑)
真翔くんはまた泣きそうになっていた。
それに気付いてか否か、笑麻は早速NE〇Sについて話し出した。
「ところで真翔くん、NE〇S好きって聞いたんだけど、誰推しなの?」
目に見えて分かるほどの期待を受ける真翔くん。
それに対しては全く動じず即答した。
いやーやっぱり自分の好きなものについての話題程楽しいものはないよね。
真翔くん滅茶苦茶嬉しそう。
「もちろんけいちゃんだよ!」
その瞬間笑麻は遠慮をやめた。
こちらもまた嬉しかったのだろう。
今にも叫びだしそうな雰囲気を醸し出している(笑)
「そうなんだ……!!いやー本当これからよろしくね真翔くん!!で今度さー…」
突然マシンガントークを始めた笑麻に抵抗してマシンガンを打ち返す真翔くん。
良い意味でこの二人あってる気がする。
そう思って笑っていると、気付けば恭夜くんも笑っていた。
嬉しそうに、あのイケメンくんが笑うとこんなにもキュンってするものなのか(笑)
まあとにかく新鮮な感じでした。
それから二人はしばらくお互いに話を聞きながら語り続けていた。
途中で私と恭夜くんはお邪魔かなと思って退場した。
二人はたぶんそれにすら気付いていなかったと思う。
笑麻達が恋愛に発展するかはわからないけど、真翔くんには頑張ってもらいたいな。
ちょっと寂しくも思うがね(笑)
そして笑麻達から一旦離れると、咲が彩と一緒に登校してきた。
時間ぎりぎりになってから来たところを見ると、登校はしたくなかったんだろうなと察する。
あんなトラブルがあった後だと来たく無くなるよね。
その点二人は文化祭なのによく来たな、凄いな、と尊敬さえできそうである。
そしてちゃんと挨拶をする。
「おはよう咲、彩」
二人は笑麻たち同様笑顔で返してくれた。
ただどこか影があるその表情に不安が募った。
ーーなんか心配だな、大丈夫だろうかーー
表情はポーカーフェイスをキープしたまま二人に言う。
「顔色よくないけど、二人とも大丈夫?」
精神的にはたぶん大丈夫ではないだろうが、一応聞いておくことに。
体調の方を心配しているのだとわかってくれればいいが…。
二人は勘違いしたようだ。
「何で私達があんな責められなきゃいけないんだろ」
ポツリとそう言った彩。
いつもの威勢が感じられないくらいに弱っているのがすぐにわかった。
咲もいつもの強さが見られない。
「ただ美術部として恥ずかしくないものを作りたかっただけなのに」
そして私は何も言えなくなる。
笑麻が真翔くんとの語り合いを終えて戻ってくると、すぐに二人の事を支えるように言った。
「ちょっと皆と連れ違っただけだよ!咲も彩も悪くない!」
私は、何て言えばよかったのだろう。
何も言葉が見つからなかった。
ただただ聞いている事しかできなかった。
二人も笑麻も私の事は眼中にないようで咎めるようなことは言わない。
私はそっとその場を離れていった。
感じたのは委員長達への怒りと自分の無力さだけ。
友達があんなに弱っていると言うのに自分の心配をする余裕なんてなかった。
それが…命取りになったのかもしれない。
今回は短めです




