炎陽 五
文化祭当日朝の場面です。
まだまだ続きます。
さて、次に教室に入ってきた仲の良いクラスメートは、恭夜くんだった。
相変わらずのミステリアスな雰囲気にちょっとドキッとした。
だがまだこの感情が一体どういう感情なのか考えるつもりはない。
その時は私が本当の意味で暴走しかねないからね。
まだ認めない。
教室に入ってきた恭夜くんは少しキョロキョロすると私を見つけてホッとしたような表情をした。
どういうことだ?
気になったので声をかけた。
「おはよう恭夜くん」
そう言って声をかけると、前のようなちょっと不器用な恭夜くんのままだった。
彼が変わったとかそう言う訳ではないみたい。
「おはよう黒川」
ただ前と違って挨拶とかでも敬語ではなくなった。
本人は無自覚の様だから、多分無意識にそうなったんだろう。
ちょっとだけ嬉しく思う(笑)
「いきなりだけど、なんかあった?」
そう聞いてみた。
いや、何となくだからわからないけど、どこか戸惑ってると言うか何というか。
ただ単に今日を楽しみにしていたって可能性もあるけど、一応ね。
何かあっても誤魔化されるかなと思ったが、恭夜くんは素直に教えてくれた。
…文化祭の日って皆素直になっちゃう日なのかな(笑)
「実は…ちょっと困ったことがあって」
そうして恭夜くんは語りだす。
短くまとめると…。
「笑麻を紹介してほしいって!?」
恭夜くんの友人の友人が、笑麻に一目ぼれしたらしい。
名を真翔と言う。
時を遡ること五か月前。
場所は学校で掃除の時間だった。
その時真翔くんは風邪をひいていたらしくふらついていた。
そして運んでいたごみの入った箱を落として、ゴミをぶちまけてしまったと言う。
その時に周りにいたやつらは笑っていたらしいが、笑麻は一緒に拾ってくれた。
最後には笑顔で注意してくれたらしい。
そして恋に落ちた、と…。
「その人の片思いってことですか」
私は動揺してつい敬語で言った。
恭夜くんは気にせず頷くとさらに一言。
「片思いなのはわかっているけど、友達にはなりたいって聞く耳を持たないんだよ」
つまり困っているということですね恭夜くん。
私は悩む。
ここで笑麻にいきなり紹介しても多分固まって困らせることになるだろう。
だがすでに恭夜くんが困っている。
と言う訳で考えました。
「恭夜くん、その、真翔くんっていう人をまず私に紹介してくれない?」
唐突にそう言ってみた。
頭のいい恭夜くんならすぐにでもわかってくれるだろうと淡い期待を込めて。
案の定恭夜くんはすぐに頷いてささっと荷物を下ろす。
「今すぐ連れてくるよ」
珍しく行動が早い。
私が答える間もなくすぐに教室を出て行ってしまった。
ーーそれだけ仲のいい友人って事かーー
私はその友達の類にすらいないであろう。
そう思うと少しだけ寂しく思った。
しばらく待っていると、恭夜くんが一人の男子を連れてきた。
得意の人間観察スターーーート!!!!
黒髪、ちょっと長いけど根暗っぽくはない。
眼鏡の下はどうやら普通の男子よりかはイケメンって事が分かった。
それから、素直そうだが同時に何だか大人びていて真面目そう。
体つきは意外と筋肉がありそうだな。
細身のマッチョとまではいかないだろうけど、割と運動も出来そう。
結果まとめると…。
第一印象は運動も出来そうな眼鏡真面目くん男子だった。
そして二人は私の前に来る。
「えっと、真「おはようございます、黒川さん」
遮られた…。
ま、まあいいだろう。
少なからず緊張しているって事かな?
人見知りではないみたいだけど、面接気分なのかも(笑)
そしていきなりの敬語。
そこは恭夜くんと似ているんだね。
真面目で誠実そうなところは違うけど。
そんなことを考えながら観察をしていると、恭夜くんが真翔くんにチョップを食らわせた。
…コントみたいだ(笑)
「いきなり話を遮るなよ真翔」
お、呼び捨ての仲ですか?
「ああ、ごめん。恭夜王子」
…。
「…王子?」
ちょっとよくわからなかったので単語だけ聞き返してみた。
恭夜くんが慌てる…なんか新鮮!!
「いや!あの!単に冗談でそう言ってるだけだから!真に受けないで!」
必死にそう言う恭夜くん。
ドストライクボイスを聴けて幸せです。
神様ありがとおおおおおお!!
すぐに冷静になると苦笑した。
「なるほど、冗談ね(笑)」
ちょっとだけホッとしたのは秘密です。
「ごめん、いきなり冗談言って」
敬語でなくなった真翔くんに謝られて、少し戸惑うが笑った。
「そんな気にしなくていいよ。笑麻なら面白がってくれそうだし」
あ、失言だったか?
そう思って真翔くんの表情を伺うが、特に気にした様子もなく笑っていた。
それから私はいくつか質問してみた。
聞いたところによると、どうやら真翔くんは男子でありながらNE〇Sが好きらしい。
この点でもうすでに笑麻との共通点が出来てるところからして凄いと思った。
そして押しはけいちゃんだと言う。
なんと、これは笑麻が喜ぶレベルだ。
ついでに何で好きなのか聞いてみたところ、こう言った。
『真面目で面白くてかっこいいところ。憧れなんだ』
キラッキラに輝きながらそう熱く語りかけたところで恭夜くんのチョップ。
素晴らしい。
扱いに慣れているよ(笑)
私から彼を見た感想としては。
「合格」
その一言で終わる。
実際に紹介してみないと笑麻がそう思うか何て私にはわからないし。
あまりにダメなような人でなければ最初から紹介してみるつもりだったし。
後は二人次第かな。
笑麻は基本三次元に興味がないみたいだけど、これを機に変わったりするかもしれないしね。
変わらないかもしれないけど。
とにかく性格は良い人っぽいしいいかなって思ってそう言った。
「真翔くん次第でどうにでもなるでしょ」
そう言って笑うと、真翔くんは泣いた。
ガチで、泣いた。
ぽろぽろと真翔くんの頬を伝っていく滴を呆然と眺めること数十秒。
恭夜くんが焦ってちょっと本気のチョップ。
「いてっ!」
吃驚して泣き止んだ真翔くんはさっと振り返って恭夜くんを睨み付けた。
「何すんだよ恭夜!結構痛かったぞ!!」
ちょっと鼻声になりながらも怒る真翔くんに呆れ顔の恭夜くん。
「突然泣き出すなよ。黒川が驚いて固まってる」
その言葉にさっと私に視線を戻した。
「わっごめんなさい黒川さん!」
すぐに謝罪。
うん、良い奴だと思う。
ちょっと戸惑いながらも笑う。
「大丈夫だよ」
それでも申し訳なさそうにする真翔くん。
結構見ていて飽きないな(笑)
その点だと笑麻とうまくいきそうな気がする。
「嬉しくて、つい…」
つまり嬉し泣き?
気が早いなあ(笑)
「まだ笑麻と友達にさえなってないのに?」
そう言うと、真翔くんは笑う。
「そのチャンスをくれたから」
律儀だ。
断言しよう。
真翔くんは良い奴だ!
笑麻に早く紹介してあげたい。
そう考えてすぐ頭を回転させる。
「…んじゃ、笑麻、もうすぐ登校してくるだろうし、その時に早速紹介するよ」
つい勝手に決めてしまったが、真翔くんは顔を輝かせて言った。
「ありがとう!!」
何だか最近リア充増えてきた気がするだが…。
そう思いながらもキラッキラに輝く真翔くんに笑いかけた。
追記。
恭夜くんはこの時物凄くドロッとした黒い感情が芽生えたらしい。
それを文化祭開催中に川村に相談している所、偶然私が鉢合わせて聞いてしまったからか、恭夜くんはちょっと焦って足早に駆けて行ってしまった。
聞かれたくなかったんだろうな、悪いことをしてしまった。
後で謝ろうと思う。
ドロッとした感情についてはよくわからないが、リア充がまた増えそうだと思うと私も黒~い感情が芽生えるのでそれと一緒だろうと思う。
まだ文化祭の内容にならないですね(;^ω^)
ま、まあ気長にお待ちください(笑)




