炎陽
地獄のようなテスト期間が終了し、文化祭準備期間がやってきた。
この時期になるとどうやら授業時間が減って、ほぼすべての時間を準備に費やすらしい。
それを聞いた今年の一年、つまり私たちは歓声を上げた。
川村とか恭夜くんとかは複雑そうな表情だったけどね。
いいんだよ!
こういう時は思う存分楽しまないと!!
そんなことを言ったところ、苦笑された。
何故だ…。
「今日は何をやるのかの確認と役割分担等をします」
先生が何かを言うたびに歓声が上がる。
やる気があるのはいいけど先生の話が聴こえなくなるのが少し面倒だ、と思った。
もちろん言わないけど(笑)
「学級委員長、説明等をお願いします」
先生に言われ渋々前に出る委員長。
やりたくない気持ちはわかるが思い切り顔に出すのは止そうよ(笑)
先生が苦笑してる。
「えーと、このクラスの文化祭の出し物は『アイス屋』です。名目は仕事分担が終わってから決めます」
そして仕事の説明が始まる。
そこからは長いので省略。
ちなみにこの時伊理塚が遅刻してきて先生が指導で不在である。
中々にわかりにくい説明になってしまっていた。
私は当日使う教室で飾るものを作ったり、広報活動用の宣伝カードを作ったりなどをすることとなった。
ちなみに仕事分担がされたと言ってもすぐに終わってしまうところもある。
なので皆自由にやっていた。
笑麻、咲、彩は黒板に絵を描く担当になったらしい。
とりあえずさっさと終わらせて笑麻達と黒板に絵を描きながらお喋りしたかった。
そして驚いた。
「恭夜くんも私と同じ担当なの!?」
目の前に立つは戸惑いながらも頷く恭夜くんが居た。
仕事分担は先生が行っていたのだが、結局は好きな者同士での共同作業となってしまった為、仕事が亡くなった人がたくさんいたと言う。
私はあまり関係ない位置にいたので知らなかったが。
「先生に相談したら黒川が一人だからって」
そう言った恭夜くん。
相変わらずのドストライクボイスありがとおおおおお!!
心の中は嵐でした。
それからはどっちも無言。
仕事のことで話したりはするけど黙々と作業していた。
気付けば今日の作業も残り三十分を切っていた。
ーーそう言えば文化祭の日は瀬奈の誕生日…ーー
唐突に思い出したのはあの、強気な笑顔の女子。
水谷瀬奈と先日再会したせいだろう。
文化祭は10月26日。
その日彼女は泉たちと一緒に文化祭へ来ると言っていた。
ーー今度会った時何されるかわからないーー
先日の事も昔の事もひっくるめると、謎の焦燥感にかられる。
自分がなぜここまで恐怖しなければいけないのかわからないが、少なくとも逃げ出してどうにかなるような状況でもなかった。
そんなこんなで眠れない日々が続く。
今日もまた、恭夜くんと一緒に作業をしていた。
ここ数日で仕事がなくなった子とかもいたので手伝って貰ったりしていると、担任の先生が教室に入るなり絶叫した。
「何をやったらこんなに散らかるの!!!??」
私はそれに苦笑した。
そう、現在教室内はとんでもないゴミ屋敷化していたのである。
事の発端は委員長のやる気のなさから来た発言。
普段真面目とは言わないが言えばちゃんとやるような人たちとの口喧嘩。
気付けば周りは野次馬だらけ。
咲と彩が激怒していた。
「いい加減ちゃんと仕事しなよ!!!」
咲がそう発言したことにより治まった事態だったのだが。
「掃除担当がやる気なくしちゃダメでしょ!!!!」
委員長と喧嘩したのは掃除担当の人だった!!
つまり彼がやる気をなくすと掃除がされなくなり教室内が荒れると言う悲劇となったわけである。
「いつもいつも本当仕事しないんだから!!」
「それは委員長もだろ!?」
「いい加減にしなよ!!」
「いーぞーもっとやれー!」
いつの間にか普通の口喧嘩へと変わり、次第に野次馬が増えていく。
こういう光景見ていると中学時代を思い出すからはっきり言って関わりたくはない私。
正義感が強く、今この瞬間も怒りが爆発しそうな咲。
笑麻はただ煩そうに彼らを眺めるのみ。
彩は…なんか絵の事について真剣に悩んでいるみたいだ。
「いい加減仕事しなさい!!」
そこに現るが我らの救世主!!
担任の先生がピシャリ!と言い放った。
「そんなに喧嘩したいのなら校庭でやりなさい。そして文化祭には出るな」
女性の先生で普段は温厚なのに今日は別人のような形相でそう言い放った。
その先生の纏うものはどこか威厳があり、逆らおうと言う気にはさせてくれない。
少なくとも私や咲、笑麻にとってはヒーローであったその瞬間である。
その後しばらくして委員長達もめごとを起こしたメンバーは渋々準備に戻った。
まあ少なくとも数日はこれで静かになると思う…いや、思いたい。
それから約数十分後。
伊理塚が遅れて学校へ登校してきた。
皆は少し遅れて反応。
「あれ?伊理塚また遅刻~?文化祭ん時くらいちゃんと来いよー」
同じグループの人が笑いながらそう声をかけている。
皆ももちろん普通に接しているし、伊理塚も普段変わらない不真面目なことを言っている。
ただ私にとってはあの日から…。
告白を断った日から何もかもが変わったように見える。
例えば、前はそんなに不良染みた行動は目立たなかった。
最近は堂々とそんなことをして先生に呼び出しをくらっている所をよく見かける。
例えば、無遅刻無欠席ではなかったものの、まだちゃんと学校に来ていたのに。
断ったあの日から学校は無断欠席し遅刻もほぼ毎日。
学年上がる気は全くないように見えた。
元々不良染みた行動をよくしていた奴だったが、本気で不良になろうとは思っていなかったはず。
なのに当てつけのように変わった。
ーー私のせい、何だろうけどねーー
私だって人間だ。
何も感じないわけではない。
後から考えればあの時の事はもっとうまくやれただろって、思う。
だけど彼に近づきたくはない。
瀬奈が、泉が関係していそうな気がしてならないから。
正直、今の状況は詰んでいる。
「どうした?そんな思いつめた顔して」
明枝が私の表情の変化に気付いて声をかけてくる。
相変わらずなんちゅう格好しているのやら(笑)
今日は準備だからとジャージに着替えているけど、背中にはでっかくうさちゃんマークがプリントされている。
先生は何も言わないのか?
案外この高校はそこら辺に弱くて…面白ければ大体許されるようなんだよね(笑)
最近は驚きより毎日の楽しみになってきた(笑)
しかしそこまでの天然ボーイ君ですら気付くほど私は思いつめた顔をしていたと言うのだろうか。
最近はさらにポーカーフェイスを心掛けていると言うのに。
そんなことを思って疑問を口にしようとした時。
「なん「なんてな(笑)俺には全く表情が読めないんだ~!!」
……………。
一瞬の驚き返せえええええ!!!!
しかも久々に遮られたし!!
まあこの場合好都合だけど!!!
何なのさあああああ全くううううう!!
そしてなんかちょっとムカッと来たのでちょこっと反撃。
明枝の脳天にズビシッとチョップ(ちょい本気)を食らわせた。
「あいたっ!!?」
ま、あの筋肉マッチョの事だから別に怪我の内には入らんでしょ。
精々たん瘤になるくらい(笑)
何が起こったのかわからないような表情をしながら私を凝視してきたが、私は気にせずその場を立ち去った。
まあ、最近明枝と咲は前にも増して仲いいし。
ちょっとは手加減しといたからね、訴えられることはないだろう!
それからしばらく黙々と飾り作りの作業をした。
その時明枝が、ホッとしたような表情をしていたことに、私は気が付かなかった。




