烈日 七
恭夜目線が途中に入ります
前回までのあらすじ。
カラオケ店で勉強会を行った後本屋に行った。
迷子になりながらも本屋を楽しんでいる所に中学時代の友人だった筈の水谷瀬奈出現。
無視していたらいなくなっていたので警戒もせずに本屋を出てしまった。
入り口付近で待ち伏せしていた瀬奈と男性三人にあっけなく捕まり路地へ。
暴力を振るわれカッターで傷をつけられそうになったところに恭夜くん現る!!
まあ簡単に説明するとこんな感じですね。
ずいぶん楽観的過ぎるけど、いっか(笑)。
では前回の続きから、スタート!
恐る恐る目を開けると、やや強張った顔の恭夜くんが居た。
まず初めに思った事。
「…なんで、ここに?」
全く、瀬奈のせいでまともに話せていない。
けどそんなことはどうでもいいか。
「偶然近くにいて、叫び声が聞こえたんだ。微かにだけど」
まるで仕組まれたかのような状況だ、と思った。
だってこんな、恐怖の記憶が蘇ったところで現れたんだよ?
恭夜くんっていうドストライクボイスの持ち主が。
心が揺れ動いた気がする。
本当気のせいだと思いたい。
「あ、ありがとう…」
安心してしまった。
ポロリと頬を伝っていく涙。
不覚にも他人の前で泣いてしまった。
普段絶対に泣かないようにと、笑顔でいようとしていた自分が。
ーーまだまだ精神はお子様だって事かなーー
思わず顔を覆って泣いてしまった私を見て、最初は吃驚して固まっていた恭夜くんだったが、次第に慣れてきたのか傍にいるだけで何も言わずにただただ頭をなでてくれていた。
少し落ち着いてくると、恥ずかしさと言うものが込み上げてくる。
だから他人の前で泣くのは嫌だったのに!
そんなことを考えながら無言で、辺りに散らばった自分の荷物を片付けていく。
恭夜くんも無言で手伝ってくれた。
全てが拾い終わった頃、恭夜くんが唐突に言った。
「聞きたいことがあるんだけど」
その言葉に一瞬ビクリ、と反応してしまった自分はまだまだ未熟者ですね。
さっきの事だろうと思って少し悩んでから、質問に答えることにした。
「さっきの奴らは?何だか知り合いみたいだったけど」
一体どこからそんな質問が、と思ってから気が付いた。
ーー『お楽しみは文化祭でねー』って言ってたかーー
少なくとも瀬奈とは何か関係があると思ったんだろう。
とりあえず話せる範囲で話しておくことにした。
「男性三人は見覚えがないけど、あの女子は私の中学時代の友達…だった人」
友達ではない、と言いたくてつい意味深な答え方をしてしまった。
ちょっと勘違いさせちゃったかなと思って恭夜くんの表情を確認してみるが、変化はない。
案外この人もポーカーフェイス?
とは思わなかったが、大体予想してたって顔かな。
ちょっとだけため息をついた。
「…とりあえずここ離れよう?」
私は暫く続きそうな沈黙を破るようにそう言って歩き出す。
恭夜くんも無言でついてきた。
それからしばらく無言で歩いていると、通りに出て少し経ってから恭夜くんが口を開く。
「もう一つ聞いてもいい?」
そう言った。
もっと質問されるかと思って身構えていたら、恭夜くんは遠慮してなのか二つしか聞かないつもりらしい。
「いいよ」
我ながら素っ気無いなと思いながら、恭夜くんの質問を待った。
恭夜くんは少し戸惑ってから、口にする。
「カラオケ店での事なんだけど、」
一瞬、伊理塚の事が脳裏を過ぎったが、気にせずに恭夜くんのドストライクボイスを聴く。
あれ?
いや、何でもない。
意味を間違えた。
恭夜くんの質問を遮らずに聞く。
「川村と、伊理塚の事について話してただろ?気になって」
思わず歩くのをやめて恭夜くんをまじまじと見つめてしまった。
まさかあの時、寝ているふりをしていたって事?
あんな小声で話していたのに聞こえてたの?
本当に地獄耳?
最後の疑問は微妙だが、吃驚した。
「寝てる振りをするつもりはなかったんだけど、ウトウトしてたら聞こえてきて」
恭夜くんは少し戸惑いながらそう言った。
わざと聞く気はなかったと言いたいのだろう。
それはわかった、が問題は内容だ。
「内容もちゃんと聞こえてたって事?」
さっきの質問を聞く限り多分聞こえていたんだろうけど一応聞いてみた。
恭夜くんは頷く。
しっかしここまで地獄耳だったとは。
世界の七不思議の一つに人間の遺伝子異常入れた方がいいんじゃない?と思う。
仕方がないのでとりあえず伊理塚の事を話すことにした。
けど時間的にそろそろ8時になりそうだった。
「話すと長くなっちゃうんだけど…」
そう言うと彼は今更気づいたかのように時間を確認した。
案外可愛い、なんて。
…冗談です。
そして慌てたように私に言った。
「ごめん!時間見てなかった。家まで送るよ」
さらっとイケメン発言!!!
この人性格イケメンですか?
それとも明枝ほどではないけど天然ですか?
「でも恭夜くんも早く帰んないとじゃない?」
そう言うと即答された。
「あんな危ない目にあってた人を一人にできないでしょ」
かっこいいこと言うなあ。
ちょっとだけドキッとしたのは言うまでもない。
帰り道に不安を感じていたのは事実だし、素直に甘えることにした。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
そう言った途端、ほんの少しだが恭夜くんの表情が綻んだのが分かった。
せっかく時間も取れたので伊理塚の事について話すことにした。
全部聞き終えたところで恭夜くんは一言。
「伊理塚、最低だな」
何だか闇が見える気がするのだが…ま、まあいいか。
そんな恭夜くんに一言付け加える。
「伊理塚の意味深な笑顔と言い、瀬奈との再会と言い、なんか仕組まれてるような気がするんだよね。そう思わない?」
あ、ちなみに瀬奈ってあのさっきの女子だよ、と言うと彼は考え込んだ。
私はちょっとだけ恭夜くんがわからなくなってきた。
突然助けてくれたと思ったら話を盗み聞きしていたり、明らかに理数系の方が得意なのに心理学を勉強していたり。
最近はずいぶん表情豊かになったかと思えば突然わかりにくくなった。
ミステリアスと言えば恰好よく聞こえるけど、正直何だかよくわからない。
まあ恭夜くんボイスは素晴らしいけどね!!
そんなどうでもいいことを考えている内に家のすぐ近くまで来ていたことに気付く。
「恭夜くん、もう家のすぐ近くだからここまでで大丈夫だよ」
そう声をかけると、考え込みながら返してきた。
「家の前まで送るよ」
優しい人だね、またもやお言葉に甘えることにした。
結局その後は恭夜くんは終始無言でほとんど会話をしなかった。
たぶん普段がこんな感じなのだろうと思う。
けどその方が今は私にとって楽だからいい。
正直なところ瀬奈に再開して気が滅入っていたから。
ーーどうも昔の出来事を思い出すと、こうなるんだよね。ーー
瀬奈のせいで全く跳んだ一日になってしまった。
心の傷はそう簡単に癒えないと、改めて思った。
家の前に着くと、恭夜くんに言った。
「ここまで送ってきてくれてありがと」
ぎこちない笑だったろうか。
恭夜くんは複雑そうな表情をした。
仕方ない。
私はそれでも笑って。
「帰り道、気を付けてね?」
恭夜くんはちょっとだけ寂しそうに笑うと言った。
「ごめん、気の利いた慰め出来なくて」
そんなことを考えていたのか、とようやく知った。
何だか申し訳ない気持ちになる。
けど気持ちは正直に口にした方が今はいいだろうと思う。
「恭夜くんが終始無言でいてくれて助かったよ。ちょっとだけ冷静になれたっていうか…」
そこでフッと笑ってしまった。
考え込んでいたんじゃなくてどう慰めていいのかわかんなかったなんて。
「恭夜くんの意外な一面しれたし、楽しかった。ありがとう」
彼は呆気にとられているが、まあ気にしない。
早く帰らないと彼の両親も心配するだろう。
そう思い呆気にとられたまま動かない恭夜くんに声をかけた。
「恭夜くん?そろそろ帰らないとヤバいと思うよ?」
それを聞いて我に返った彼は一旦時間を確認するとすぐに行動を起こした。
「じゃ、そろそろ帰る。また学校で」
あくまでもクールにしたいのか。
ゆっくりとだが動き出した恭夜くん。
ーー最初の勢いは何だったのだろうーー
ちょっとだけ苦笑しながら見えなくなるまで見送った。
《恭夜目線》
今日はカラオケ店でクラスメートと一緒に勉強会をした。
それは初めての事だった。
いや、勉強会事態は初めてではないのだが。
あんなに楽しくてハラハラしたのが初めてだったという事。
それは少しだけ、普段関わりをあまり持たない俺が成長したという事なのか。
そう考えてから、違う、と否定した。
なんせ今回は黒川に誘われたから来たようなもんだ。
自分の意志があまり伝わっていないだろう。
ーーもし次にこんな機会があったらーー
その時は自分から言ってみよう。
そう思った。
現在19時半になる少し前。
18時少し前に解散してからしばらくは近くのCDショップに足を運んでいた。
帰りに近くにある本屋にも寄るつもりで。
ーーそろそろ本屋へ行くかーー
そう思って外に一歩足を踏み出した瞬間。
この時間は物凄く人が居て喧騒に包まれているこの駅前の通りで。
微かに叫び声が聴こえた。
本当に微かに。
空耳かとも思ったが、どこか聞き覚えのある声だったのだ。
何だか胸騒ぎがして声が聴こえた方へと向かったら。
「黒川……?」
そこには恐怖で怯える黒川が居た。
普段大人びていて決して泣かないようなあの黒川が。
叫んで恐怖を目の当たりにしている。
そう理解した途端、体が勝手に動いていた。
成人していそうな男性三人を相手に勝てる見込みはなかったけど。
ーーとにかく黒川を助けないとーー
一人だけひるませられたところで同い年くらいの女子がさっさと退散していった。
「…じゃあお楽しみは文化祭でねー」
と、意味深な言葉を残して。
しかし今はそんなことを考えている余裕はない。
すぐに黒川に駆け寄った。
恐る恐ると言った感じに目を開いた彼女は。
「…恭夜、くん……?」
物凄く驚いていた。
そりゃそうだろう。
一時間半くらい前に解散したはずのメンバーの一人が助けに来たのだから。
けど安心したのか、ぽろぽろと涙を流した彼女を見て酷く動揺した。
ーー黒川が泣くところなんて初めて見たーー
ただただ動揺して、どうしていいのかわからなかったが…。
顔を覆って泣き出した彼女は物凄く寂しそうに見えた。
それを見て、安心させたくて、けどどうすれば良いのかわからない。
とりあえず頭をひたすら撫でた。
不器用過ぎたかな。
泣き笑いみたいに途中からなっていた。
それから少し経って、ようやく黒川は落ち着いたらしい。
泣き止んだ。
先程まで頭を撫でることしかできなかった自分が恥ずかしく思えてくる。
ーーやっぱ何か言ってやればよかったかなーー
ちょっとだけ後悔した。
と、そこで疑問が浮かび上がる。
そして唐突に聞いてしまった。
「聞きたいことあるんだけど」
その瞬間ビクリと体を震わせた黒川を見てまた後悔。
ーー俺無神経過ぎだよなーー
そんなことを思いながら黒川を見ると、彼女は頷く。
とりあえずは聞いてくれるみたいだ。
よかった。
「さっきの奴らは?何だか知り合いみたいだったけど」
はて?どこからそんな質問が、と言う顔されたがどうやら自分で解決できたみたいだ。
少し間をあけてから答えてくれた。
「男性三人は見覚えがないけど、あの女子は私の中学時代の友達…だった人」
それを聞いてちょっと戸惑った。
過去の出来事が絡んでそうな気がする。
となるとこれ以上は彼女の傷をさらに開くようなものだ。
俺にもそんな思い出したくもない過去がある。
他にもいろいろ聞いてみようという考えを改めた。
「…とりあえずここ離れよう?」
そんなことを考えているうちに黒川を待たせてしまっていたようだ。
少し申し訳なくなりながら、これからどう慰めようか悩んだ。
そう言えば、もう一つ疑問があった。
カラオケ店で川村と黒川が話している時。
眠くてウトウトしていたところに二人の意味深な会話。
気にならない方がおかしいだろ。
最も、その会話の内容が聴こえていればの話だが。
「もう一つ聞いてもいい?」
一応許可は取ろうと聞いた。
黒川はちょっと拍子抜けしたような表情に一瞬なったが、すぐに笑顔になった。
「いいよ」
ぎこちない。
無理してるのがすぐ分かった。
なのでちょっと聞き方を考えようと思ったのだが。
「カラオケ店での事なんだけど、」
反応はなし、か。
とりあえずさっさと聞いてしまった方がいいかな。
「川村と、伊理塚の事について話してただろ?気になって」
ちょっと言い方がまずかったかもと思ったが、どうやら気にしていないらしい。
黒川って案外鈍感か?
いや、そんなことはどうでもいいか。
それよりも、自分等の話していた内容が聴こえていたなんて、と言う顔をしている。
あの時寝ていたんじゃなかったのか、と。
「寝てる振りをするつもりはなかったんだけど、ウトウトしていたら聞こえてきて」
ちょっと戸惑いながらそう言った。
彼女は少し驚いているが気にするほどの事でもないのか?
何だか冷静である。
「内容もちゃんと聞こえてたって事?」
頷くだけに留めると、複雑な表情をする彼女。
地獄耳とも言うのかな。
あまり好まない能力だ(笑)
そんなことを考えていると、黒川は何かを決意したらしい。
「話すと長くなっちゃうんだけど…」
そこで初めて時計を確認してちょっと叫んでしまった。
もう時刻は8時になろうとしていたからだ。
そして咄嗟に口にする。
「ごめん!時間見てなかった。家まで送るよ」
ちょっとだけ嬉しそうにしてからも言う事は逆。
「でも恭夜くんも早く帰らないとじゃない?」
そう言う彼女はまた少し寂しそうだ。
自分の事なんて気にするほどの余裕はない。
とにかく送ってあげないと先程の事がまた起こるのでは、と思っていた。
「あんな危ない目にあってた人を一人にはできないでしょ」
自分では吃驚するほどの低音ボイスになってしまった。
しかしそれが功を奏したらしい。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
その瞬間勝手に顔が綻んでしまったようで、彼女はくすっと笑った。
それから、離す時間が取れたから、と伊理塚の事について話してくれた。
俺の口から出たひと言。
「伊理塚、最低だな」
自分もそう思っているのかその言葉には反応せず、質問を投げてきた。
「伊理塚の意味深な笑顔と言い、瀬奈との再会と言い、なんか仕組まれてるような気がするんだよね。そう思わない?」
その事には返す言葉がなかった。
っていうかなんか聞いちゃいけない過去が絡んでる気がして、聞けなかった。
とにかくその時から黒川との間にしばらく沈黙が流れた。
「…もう家のすぐ近くだからここまでで大丈夫だよ」
と言う声で我に返った。
どうやら案外遠くはなかったらしい。
時計の針も思った以上に進んでなかった。
けどちゃんと家の前まで送り届けないと心配だ。
「家の前まで送るよ」
そう言うとまた少し笑われた。
いや、無理して笑っているようにも見えて、何だか複雑だった。
家の前に着くと、彼女は振り返って言った。
「ここまで送ってきてくれてありがと」
ぎこちない笑みだった。
それでも笑おうと必死になっている。
どうしていいのかわからず突っ立っていると、また彼女が言った。
「帰り道、気を付けてね?」
それを聞いた途端口がまた勝手に動いた。
「ごめん、気の利いた慰め出来なくて」
素直にそう言った方が勘違いされずに済むかと、そう思った。
それを聞いた彼女は申し訳なさそうになって必死に言葉を探し始めたよう。
「恭夜くんが終始無言でいてくれて助かったよ。ちょっとだけ冷静になれたっていうか…」
そこで一旦深呼吸した彼女は次の瞬間、すごく自然に笑った。
思わず見とれるほど自然に。
ほんの一瞬だけ、フッと笑った。
「恭夜くんの意外な一面知れたし、楽しかった。ありがとう」
呆気に取られてしまう俺。
固まる俺を見て彼は恐る恐る、いつもの感じで言った。
「恭夜くん?そろそろ帰らないとヤバいと思うよ?」
すぐに時刻を確認すれば、八時半になる少し前だった。
ーーまずい!9時回ったら怒られる!ーー
それからの行動は早かったと思う。
「じゃ、そろそろ帰る。また学校で」
ちょっと素っ気無かっただろうか。
しかしあのままうだうだしていたら多分混乱で固まっていたと思う。
それから少しゆったりとした歩みで黒川に見られないところまできて、ため息をついた。
「なんで、あの笑顔忘れられないんだ…?」
まだ冷静にはなれず、しばらく放心状態だった。
結局帰宅したのが9時過ぎで、両親に滅茶苦茶怒られた。
けどなんか引っかかって説教なんて上の空だった。
次回から話ががらりと変わりますよ~(*‘∀‘)
たぶんカオスさん出ますね(笑)




