陽光 三
校外学習は一体どうなるんでしょうね(汗)
それからしばらくは急ぎ足で、しかし着々とクイズに答えて先へ進んだ。けどこの校外学習の目的が全くと言って良いほど無意味になりつつあった。何故なら…。
「本っっ当男子ら無口だね。私と陽月以外誰も他と口聞こうとしないしさあ!!」
笑麻が不満を思いっきりぶつけてくる。私には苦笑して
「そうだね、校外学習で皆と交流するのが目的なのに、意味がなくなっちゃうね~」
など、共感しながら笑麻を宥めるだけで精一杯だ。まあ、面と向かってではないかもしれないけど、あからさまに聴こえるように言われては、誰でも話す気が失せると思うが…。
もう少し優しい言い方をすれば良い方向に持っていけそうなのにな。
少しだけ心の中で愚痴ってみるが、すぐに後悔。
自分も冷たい時あるじゃん。
已むを得ずだとしてもそこまで首を突っ込まなければ相手も気分を害する事もなくなるんだろうな。いや、うん。それよりも現状だ。とにかくどうにかしよう。
「もっと話す努力してみる?」
愚痴しか言わない笑麻に提案してみた。案の定笑麻は
「え、でも…迷惑だったら嫌だし」
と言い逃げしようとする。それが笑麻の答えだと言うなら、仕方がない。一番アニメの話とか興味ありそうな人に声をかける事にした。
笑麻にとっても良い経験になりそうだし、私自身笑麻の話を聞くのに少し疲れてきてたから丁度良いか。
普段そこまで静かじゃないくせに今日は異常なほど静かな男子、渡部に聞いた、ちょっと唐突過ぎたかもしれないけど。
「渡部ーアニメとか好きな方?」
突然声をかけられた渡部は一瞬ポカーンとしていたが、すぐ笑顔で答えてくれた。
「うん、結構なオタクだよ(笑)ポ○モンとか好き」
よっしゃ!
笑麻をチラリと確認すればあっという間に近寄ってくる。
「ポ○モン好きなの!?」
流石笑様。ポ○モンの話題が出た瞬間すぐに食い付きました。渡部も自称オタクと言うだけあって…。
「好き好き!割りと古いのとか…初代?ピ○チュウはやっぱ定番だよね」
とか何とか。笑麻と会話が弾んでおります(汗)ちょっと切っ掛け作るだけで…ほら、村屋という男子も会話に入ってくる。ずっと気まずそうだった女子二人も入ってきて
「今はポ○モンって可愛いのとかいる?」
なんて聞いたりしている。
よかった、結構良い感じ。あとはこのまま仲良く今日が終われば完璧なんだけどね。
と、少し離れながら観察する。一人だけずっと音楽聴きながら皆と離れて歩く男子が居る事に気付いた。あれは確か
「暁恭夜、くん」
思わず口に出てしまい、さっと口を隠す。幸い他の(笑麻を含めた)グループメンバーは騒いでいたため気付いていなかった。ほっと息を吐いた次の瞬間、そっとイヤホンを外して恭夜が振り返った。「何?呼んだ?」とでも言いたげなキョトンとした表情に思わずクスッと笑ってしまう。恭夜はますます不思議そうな表情をするばかりで何も言わない。が、困っているのはすぐにわかった。
「ごめんごめん、何でもないよ」
恭夜は「そう」とでも言うように首を傾げたが、すぐにイヤホンを付け直して歩き始めた。その一部始終を見ていた他のグループのある男子に気付かないまま、私達のグループは2位でゴールした。
暁恭夜くん登場!やっと!登場!嬉しい(泣)ここは一つ、修羅場…ではなくて、何かトラブル起こしたいところですね!