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放課後の絵描きさん  作者: 夢迷四季
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烈日 五


 しばらく更衣室に逃げ込んでいた私は、休憩の終わるギリギリまでそこで後悔し続けていた。

今までの自分を自分で否定し悪へと変えてしまった。

そして伊里塚の言い分を全く聞かずに事を進めてしまったのだ。

自己嫌悪にもなるだろう!!


ーーうわぁぁぁぁぁぁあもぅぅぅぅぅぅうどうしよぉぉぉぉお!!!ーー


内心叫び続けて、そろそろ頭が痛くなってきたので部屋に戻ることにした。





部屋の前に戻ってくると平常心を装い部屋の扉を開けた。

目に飛び込んできた風景は………………カオスだった。


「もう少しだけ!!もう一回だけええええ!!」


笑麻がマイクを取られそうになりながら必死に叫んでいる。

彩はそれを無の表情で取り上げようと動いており、明枝が面白そうにそれを眺めていた。

恭夜くんと川村は迷惑そうにしており、諦めの表情をしていた。


ーーこの休憩の間に一体何が起こったと言うのだろう…ーー


私は仕方がないので近くに置かれていたマイクを取って、静かに部屋の扉を閉めてから思い切り叫びました。




で、現在私の前には何故か全員が正座で座っており、私は立って皆を見下ろしていた。


ーー何故こんなことになったのかーー


事の発端は休憩終了の声掛けがされた時。





「もう一回だけ歌わせて!」


笑麻が最後に!と言わんばかりの表情でそう言ったので、皆は最後だよ、と許可したらしい。

けれどそれが何回も続くので回数を重ねていく内に川村のイライラ度が増してしまった。

そして笑麻が9回目のもう一回の時に切れた。


「いい加減勉強再開するよ」


静かに怒ったせいだろう。

笑麻は反抗した。

それがまた凄かったと言う。


「ここはカラオケなんだし、もう十分勉強したじゃん」


怒ると無意識に相手を威圧してしまうと言う本人無自覚の能力のせいで、皆何も言えなくなったとか。

川村は早々に呆れ、諦めストレスだけを溜め続けながらスマホを見ていた。


「…ってかゲームしてたのかよ!!そこ勉強しろよ!!!」


川村が早々に諦めなければこんなことになってなかったかもしれないのに、と叱った。

何だかもう諦めた表情で返事をして項垂れてしまったが私は気にしないことにした。


そして誰も笑麻を止めようとしなかったらしい。

途中までは。

何回か勝手に歌っていた笑麻を一旦は止めようとしたらしい明枝はと言うと。


「まんまと言い包められ一緒に楽しんでたって?バカか!!一番ダメな奴だろう!!」


全くなんて天然だ。

冗談でもないわーと思いながら叱ったところ、悲しそうに謝罪した。

で、恭夜くんはと言うと。

笑麻の持つマイクを取り上げようとして、笑麻の腕を掴んだら振りほどかれた拍子に頭を打って気絶していたらしい。


「恭夜くん、むやみやたらと抑え込んだら返り討ちに合う事、学ぼうか」


静かに笑顔で制しておいた。

まあ気絶の件では悪くないからね。

けどいきなり突っ込んだらそうなるわな。


「もし打ち所が悪かったら最悪の事態になりかねてたかもしれないんだよ?」


その事に気が付かなかったという皆に言い聞かせた。

そしてすぐに内線電話でスタッフに氷袋を用意してもらった。

応急手当のようなものだから後で病院には一応行ってと恭夜くんに伝えることも忘れずに。

それから彩。


「なんで最初は止めようとしなかったの?」


そう聞いたところ彩はと言うと。


「自分もそうしようか迷ってたし関係ないかなーって」


それでスケッチとかやめようよ。


「現在ここにいる人たちは皆関係なくないんだよ。傍若無人治そうね」


さて、最後に笑麻。

何故こんな我が儘をしたのかと問う。

さてどんな答えが返ってくるかと思えば。


「勉強したくなかったしカラオケだったから別にいいじゃん」


ちょっとだけ悲しくなった。


「今日は勉強するために、皆自分の意志で集まったんだよね?」


答えてもらうつもりはなかったが皆それに頷いていく。


「だったらさ、本来の目的である勉強するのが普通だよね?」


そう聞いたら彩等は渋々と言った表情で頷く。

じゃあ、と先を続けた。


「笑麻、何で勉強したくないのに来たの?」


唐突に話を振られて戸惑い答えられない笑麻。

この分だと嫌われるかな。

生意気だとか色々言われるだろうか。

まあ、仕方ないよな。

この企画したのは私だし。

上手くまとめられなかったのも自分のせい。

今回の責任は私が一番謝らなきゃいけないのだ。

だから責めすぎるのも良くない。


「皆ごめんなさい」


笑麻の答えを待たずにそう言った私を皆は吃驚した表情で見てきた。

けどまあ、お察しの通り誰も何も言わない。

なんせ今私が先程まで説教していたからだ。

途中で考えを改めたことで出た答え。

それは元を辿れば私の発案に行き着くのだ。


「こんな勉強会を企画したことでこんなことになったから、私の責任でもある」


そう言うと皆何だか複雑な表情になった。

いよいよ文句言われるかな。

そんなことを考えながらも私は声に出して精一杯の謝罪をする。


ーーまあ思惑がないと言えば嘘になるんだけどーー


どうせならしっかり謝って置いて後々なんも言われないようにしたいだけ。

そんなことを考えながら頭を下げていると笑麻が即座に焦燥の含まれる声色で言った。


「そんな、こっちも悪かったし…」


小さくごめんなさい、と言う声が聴こえた。

良かった。

ちゃんと反省してもらえたようだ。

皆も釣られて口々に謝りなおしていく。

最初はこんなこと怒るなんて思ってなかったから正直ちょっとだけ悔しい。

そうして空気が一気に和らいだところで、タイミングを計ったかのように川村が言った。


「じゃ、本来の目的だった勉強しながら気分転換しよう」


そうして皆準備を始めた時。


「あれ?何か忘れているような…」


そこで気が付いた。


「…伊理塚がいないいいいいいいい!?!?!?」


皆も今更気づいたようで驚いている。

恭夜くんが荷物を確認してみたところすでに無くなっていた。

という事は。


「いつの間にか帰ってたって事?」


いつ?と言いたげに皆悩み始めてから数秒後。


「あ!そう言えば…」


天然明枝が言うには。

なんかニタニタ笑いながら休憩中に戻ってきたので声をかけたらしい。

しかしその頃すでにカオスな状況だったこの部屋だ。

伊理塚が何か言っていたらしいが聴き取れなかったと言う。

何とも意味深な表情だったと。


「なんかあったのかな」


無邪気にそう言った笑麻に川村と私以外はそうかもねえ、と興味を失くしたようだ。

ただ私はそうもいかない気がしてならない。

見えない恐怖が迫っているようなそんな感覚だった。

それを見ていた川村が複雑そうな表情をしていた。

そしてもう一人、私と川村の表情の変化に気付いたものが居たことに、その時は気付く由もなかった。




その後はと言うと。

一言で言えば普通だった。

途中のカオスが嘘のように普通に勉強して気分転換していた。

皆楽しそうで何より、と思っていたところに川村が声をかけてきた。


「黒川、あの休憩の時間に伊理塚と二人きりになった?」


皆に聴かれないように小声で、しかしはっきりとそう言った。

まあこの人にはすぐバレるだろうとは思っていたので、躊躇せずに即答する。


「うん。で断ったら襲われかけた。物理的な意味で…返り討ちにしたけど」


悪魔でも平常心。

ポーカーフェイスでそう伝えると、いつもの空気を読んでいるような表情ではなく、大真面目な顔で川村は言った。


「断り方をちゃんと配慮しなかったろ」


それはまるで私のせいでこんな変な空気になったんだと言っているようなものではないだろうか。

ちょっと不安を覚えながらも、図星なので頷いて返す。

やっぱりな、と言わんばかりの表情でため息をつく川村。


「明枝の話が本当だとしたら高確率で何かが起こると思う」


川村も気付いてたか。

ここにいる人の中でさっきの話から推測できる人はそんなにいないだろうけど。

多分伊理塚が意味深な笑顔で気付かれないように立ち去ったという事は、だ。

可笑しいとしか思えない。


「とにかく今後気をつけろよ」


何言っても無駄だろうと思いながらもそう言ってくれた川村。

実は相当思いやりのある人なのでは?と思いました。


「もちろん。警戒は怠らないよ」


そう言って勉強に戻る私。

川村も話は終わりだと言わんばかりの表情で勉強に集中し始めた。

こんな話ができたのは笑麻と彩と明枝が楽しそうにお喋りしながら勉強していたからだ。

三人の世界が出来ていたし、こっちの事はまず眼中にないだろう。

それに恭夜くんは疲れたのだろうか。

部屋に設置されているテーブルに突っ伏して寝ていた。

大丈夫だろう。

そんなことを考えながら勉強に集中し直すのであった。




そして現在18時。

笑麻が門限があると言うので解散することになった。

とりあえず私は駅前で皆と別れて一人で帰るついでに買い物することにし、歩いた。


もう一度言う。

も・の・す・ご・く、歩いた。


本当普段から外に出るようにしていればと思ったほどに。




そう、皆と別れてからまず本屋へと足を運んだのだが。


「広い………………………!!」


思わず呟いてしまう程に広かったのだ。

どこを見ても本で埋め尽くされている、そんな光景。

目にした瞬間私の頭は思考を停止し、とにかく本が読みたくて見て回る。

しかしながら方向音痴の私はやらかした。


ーーどうしよう、出入り口見失ったーー


高校生になってまでこんなことになるとは思わなかった。

とにかく自身の背より高い本棚の通路を歩きに歩きまくった挙句。


「すみません、出入り口ってどこですか?」


と、店員さんに聞く羽目になった。

けれどその店員さんはこういう人がよくいるのか、慣れたように笑顔で案内してくれた。

私はその瞬間感動しましたよ。

だって日本でなければこんな事聞いた瞬間笑われるような気がするから!!!

まあ実際分からないけど。

ただ今度から個々の本屋には通おうと思ったことは間違いない。


それからまた迷ってしまわないように、出入り口付近で一時間ほど立ち読みしていた。

親は基本夜遅くならなければ連絡はしてこない。

それに自由に過ごしたい派なので基本的に頼ったり連絡はしないのが私である。

そうしてあっという間に時間は過ぎていく。


気付けばもう一時間過ぎており、帰らないと流石に連絡が来そうな時間になった。

今度また来よう、と思いながら本を棚に戻している時。


「…あれ?…陽月!?」


突然声をかけられ、ビクリと体を震わせる。

振り返ってみればそこには…。

前と変わらぬちょっと強気な笑顔の水谷瀬奈がいた。


今後はカオスさんちょこっとずつ出てきます。

ただしばらくはシリアスさんですかね。

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