烈日 四
波乱の嵐です
現在10時ちょい過ぎ、カラオケ店。
通された部屋に入った後は早速勉強会が始まった。
「川村、ここわかんないんだけど」
私は慣れているせいかすぐにわかんないところを聞いたり解いたりしているのだが、他は色々可笑しい。
「彩彩、そう言えば今度ね!NE〇Sがライブツアー行くんだって!!」
笑麻、今勉強会の筈なんだけど。
周りからの視線に全く気付かずに話を進めていく笑麻。
唯一彩だけが楽しそうにそれを聞いている。
ヤバいなこりゃ、川村の雷が落ちるぞ。
そう考えた瞬間笑麻にあのお方が声をかけた。
「今日勉強道具何持ってきたの?」
直球できいたその人は恭夜くん。
良かった、川村はまだ耐えてるね、雷墜ちなくてよかった。
「え?えーっと、数学と地理」
あ、笑麻らしい。
苦手で尚且つ嫌いな数学と、好きな教科の地理。
いい組み合わせだと思う。
…やらないと意味ないけど。
それを聞いた恭夜くんは少し考えてから言った。
「数学なら教えられるからやろう」
さっすが恭夜くん!!!
そのドストライクボイスでそう言われた笑麻は少し戸惑ってから、遠慮し始めたけど。
「え、いいよ私家で勉強するし~」
そういう意味で恭夜くんがそう言ったわけじゃないんだけど、気付いていない笑麻。
恭夜くんに呆れられそう、と思った瞬間その場にいた皆が固まった。
「じゃあ俺が地理を教えてほしいな」
そう言った伊理塚の爆弾笑顔に皆言葉を失くした。
自分がイケメンだと信じて疑っていないだろうあいつは、と後々話題に上がったほどに。
爆弾発言と爆弾笑顔の組み合わせ程とんでもないものはないと思う。
彼はやらかしたようだ。
笑麻は無の表情になって即答した。
「あ、今から数学やるんで無理です」
そう言って数学を黙々と進め始めた。
私は内心、ホッとした。
ーーそろそろ川村も限界まで怒りが募ってたところだったからマジでよかったーー
伊理塚の行動はあまりいいもんじゃあなかったけど、結果良い方に繋がったのだ。
ほんの少しだけ感謝しておいた。
もちろん心の中だけで。
それからは彩も笑麻も時々話しているくらいでしっかり勉強していたので皆の怒りを買わずに済んでいた。
主に怒っていたのは川村だと思うけど。
ちなみに私は別にどちらでも構わない派である。
強いて言えば川村が怒ると勉強が進まないからヤダなあって感じ。
まあそれは置いておこう。
あれから約2時間ほどたった頃。
お昼も兼ねて休憩することになった。
真っ先に笑麻、彩、伊理塚が動いて部屋に取り付けてある内線電話の取り合いになっていた。
ーー笑麻、普段自ら電話するような人じゃないのにーー
よっぽど疲れていたのだろう。
皆顔が鬼のようになっているよ…。
それを遠巻きに眺めているのは私と川村で、恭夜くんは明枝に問題の解き方を教えていた。
なんでも、途中だからとりあえず先に終わらせておきたいらしい。
意外にも勉強熱心な二人であった。
「皆の意外な一面見れてる気がして楽しいねぇ川村くん」
そう言って川村に声をかけてみると、からかうような口調で爆弾発言をした。
「伊理塚への返事はどうすんの?」
周りの皆が聞いてなくてよかったああああああああ!!!!
いきなりの爆弾発言程怖いものはないよ本当に!!!
私は自身のポーカーフェイスに心から感謝し、すぐに返答する。
「どうするも何も断るよ」
「いつやるの?」
「今でしょって言わせたいんですか川村くん」
無表情の二人のグダグダ会話は続いていく。
「だってあいつ前にも増して恋バナにうるさくなってきたんだぞ。こっちとしては最悪でしかない」
「それはあやつと川村の問題でしょ、私関係ない」
「いや、黒川が早く断らないからこんなことになってるんだよ」
「責任押し付けないで。元はと言えばあやつがバカな告白をしてきたからでしょ」
「まあ確かに。だったらさっさと落としてやんなよ。勘違いに走るぞ」
「落とすって言い方酷くないか(笑)まあ勘違いは嫌だな」
「勘違いって怖いよな。いきなり『こいつ俺の彼女』って言いかねない」
「それ彼女の事物扱いじゃん。やだねえそんな人だったら」
「もう半分あいつ勘違いしてるけどな」
そこでようやく私はほんの少し表情が変わった、と思う。
「…どんな勘違い?」
「『本気で悩んでくれてるみたい』とか何とか。俺から言うと、あいつはやめとけ絶対に断れ」
ここで初めて川村が反対してきた。
何でいきなり反対してきたのか。
「何故いきなり反対意見?もちろん断るつもりだったけど…最近なんか良い奴に見えてきたからなあ」
「あいつそんな奴じゃないよ。ちょっとだけ周りの人たちの言葉を聞いてただけだけど、最近猫かぶってるらしい」
待て待て待て、聞き捨てならない。
一体どういうことですか?
「現在の伊理塚は猫かぶってると?」
川村は呆れたようにため息をついてから、言った。
「ああ、ボケとかは多分普段通りだろうけど、あんなに女性思い~じゃないらしいし、明らかに黒川を特別扱いしてるって」
それから…と少しためらうようなそぶりを見せてから、質問してきた。
「ちょっと言いにくいんだけど、言っても大丈夫?」
普段ズバズバと言ってのける川村が珍しく言う事を躊躇った。
少し身構えてから私は、大丈夫、と言って先を話すように促す。
また少しため息をついた川村は言った。
「あいつ、結構な不良らしくて、よくヤバい奴らとつるんでたり万引きとかしてるらしい。後彼女いるって」
うわっ幻滅ものだ。
川村の話が本当だとしたら、最悪だなと思う。
「それって私の事弄んでるってことになる?」
「多分な。普段良さそうに見えるけどあいつ案外不良だし、単位取れなくなってきたから学校やめるとか言い出したし」
そこまで聞いちゃうとなあ、正直ショックだわ。
とりあえず断るのと、真実を確かめないとね。
それから私は最後に一言言っておいた。
「貴重な情報ありがとう」
それから一時間ほど自由に過ごした。
笑麻や彩は歌い、伊理塚は明枝と一緒になってバカ騒ぎをしたり。
恭夜くんや川村はスマホで音楽聴いてたりゲームしてたり寝ていたりなど。
私は途中で疲れたので部屋を出てぼーっとしていた。
勉強会を提案したのは私であり、一番やる気を見せないといけないのはわかっている。
ーーけどあんな話を聞いちゃうとねえーー
やる気が失せたというか何というか。
もし本当なら今後一切の関わりを断ちたいところである。
そんなことを考えながら部屋に戻ろうと歩き出したところで、伊理塚が部屋から出てきた。
内心少し驚いたが平常心を装う。
これは好都合だ、と思い彼に声をかけた。
「伊理塚」
呼ばれてすぐに振り返った伊理塚は嬉しそうに駆け寄ってきた。
うん、なんか近い、馴れ馴れしい。
少しウザいと感じながらも彼に唐突に言った。
「告白の返事なんだけど」
そこまで言うと明らかに表情が変化した。
やや期待しているご様子です。
「待ちくたびれたよ」
そう言ってまた少し距離を縮めてくるので、流石に後ずさり、距離を取る。
「ごめんなさい、付き合えない」
きっぱりしっかり断りました。
彼の表情は焦りに変化する。
「え…なんで」
なんでだって?
それを聞きますか。
自爆する気なんですかね。
「なんでってまず、恋愛対象に見れない」
ズバッと言ってのける私。
流石に若干引き気味になっている伊理塚。
私はついでとばかりに聞きたかったことを聞いてみる。
「そう言えばさ、なんかヤバい奴らとつるんでるんだって?そんな噂流れてる人は本性見極めないと無理」
それから止めを刺すような言葉を言い放った。
「彼女いるって聞いたよ」
最後の私の言葉が決定打となり、伊理塚は本性を現した。
「…うん、彼女いるよ。この前の告白も不良仲間との賭けだ」
そう言ってニタニタと笑う女子の敵。
私は正直呆れていた。
彼の考えていることが表情で大体わかるからだ。
今は私の事をバカにしているのではなかろうか。
「でも気付くの遅いなぁ一瞬は信じようと思ったでしょ?バカだから」
ほらやっぱり。
生憎だけどこの手の人間の成敗方法は簡単である。
こいつにはちょっとイラついたからその分のお返しはきっちりしてあげようか。
「そう言えばさあ黒川さん、今居るグループのメンバー嫌ってるでしょ?」
ああ、そういやこいつ勘違い野郎だったか。
「藤野さんとかこのこと聞いたら幻滅するよね~」
この人何がしたいんだろう。
あ、脅しか。
前振り長すぎて気付かなかったよ。
「バラされたくな「脅しとかどうでもいいんで」
さあ!ショータイム!!!
早速盛大に遮って差し上げました。
伊理塚は、は?みたいな表情しています。
表情豊か過ぎて分かりやすいな本当。
「盛大に勘違いをありがとう」
「は?何言ってん「勘違いをありがとう」
絶対喋らせないよ、と言う感じで二連続で遮りました悪魔。
女子の敵は潰す。
「最初から信じてないし、伊理塚は信用するに値しない」
また喋りだそうとするので邪魔だから有無を言わせずに話し続ける。
「グループメンバーを嫌ってるだって?」
私は笑い飛ばした。
「伊理塚の方が私の性格わかってないねえ。嫌ってる人間は容赦せず叩き潰すに決まってるじゃん」
伊理塚はその言葉に驚いて目を見張る。
「嫌いな人間にはまず優しくしない。伊理塚はとりあえず情報収集している間だけ仲良くなったようなもの」
きっと私は最悪な悪魔になっている事だろう。
皆の居る前でなくてよかった。
「伊理塚、お前は私を含む女子を侮辱した…なので叩き潰す」
そう言って本気の目で睨めば伊理塚は怯えながらも反抗してくる。
「最低だろ!!」
その言葉に鼻で笑って返す私。
「私と言う一人の女子を弄んだお前の方がよっぽど最低だろ」
怒りに我を忘れかけた伊理塚に壁ドンされた。
これは女子がイケメンにされて喜ぶ方の壁ドンである。
男子ってこういう事したいのか?
ちょっとだけ疑問に思いながらも早く勉強しに戻りたいので、伊理塚を無心で見上げる。
「これならもう逃げらんないだろ」
そう言って勝った!と言わんばかりに笑っている伊理塚の急所を蹴り上げた。
即座に蹲る彼を見下ろして一言だけ口にする。
「力は勝っていても頭脳では勝てないよ」
いい加減この場を離れたかったので、そう言ってとりあえず更衣室に入った。
そこで盛大なため息をついた。
「いくら嫌われるためとは言えやり過ぎたよな~絶対」
そう言って頭を抱える。
正直なところほとんど半分は嘘である。
もちろん伊理塚のお遊びにはイラついたし、彼女居るとか聞いて女子の敵だ、と思ったことは本当なんだけど…。
『嫌ってる人間は容赦せず叩き潰す』だなんて。
嘘ですよおおおおおおお!!!!
嫌ってる人になんか関わらないよおおおお!!!!
『嫌いな人間には優しくしない』だあ!?
んなわけあるか!!!!
皆平等これ大事!!
最初から信じていない?それはまあ怪しかったから…本当だけど。
でも『信用するに値しない』っていくら何でも言い過ぎだあああああ!!
本当に…。
★YA☆RA☆KA☆SI☆TA★
これで学校やめたりとかしたら絶対きっかけ私じゃん!!!
もうどうしよおおおおおおお!!!
内心叫びながら、表情は無である現在。
私は暫く更衣室から出られなかった。
なんかもう陽月だけでカオスですね微妙に




