烈日 三
咲がいないのでカオスは控えめです
なんだかんだで勉強会当日。
私は15分早く集合場所に来ていた。
ーー勉強道具は各自の自由だし、ちゃんと確認したから忘れ物はしてないはず…ーー
そう思いながらも不安でもう一度確認してみる私。
心配性なのは昔から変わらないな、と思う。
結局は特に何も忘れていなかったし、財布とスマホがあれば大体はどうにでもなるだろう。
少しだけホッとしてため息をついた。
早めに来た理由ももちろん不安だからである。
元々時間ぴったりに来るような性格だったが、一度待ち合わせ時刻に間に合わなかった事があった。
それが原因で色々と起こってからはその辺については真面目になった。
ーー要はただの臆病者だって事ーー
自分ではそう考えている。
そんな事を考えながら約5分後。
川村と明枝、(ついでに伊理塚)が集合場所にやってきた。
「おはよー」
3人に向かって挨拶すると、ニコニコしながら真っ先に伊理塚が返してきた。
「おはよー陽月♪」
馴れ馴れしく下の名前で呼んできやがったよこやつ。
私がいつ許したのでしょうか。
そう思ってすぐに言おうとしたら天然の明枝が咲に言ってしまった。
「伊理塚、いくら何でも図々しいでしょ」
そう言われて伊理塚はちょっとだけ落ち込んだらしい。
いじけている。
私的にちょっと無理があるなあと思った行動だ。
それから明枝は私にも挨拶をしてくれた。
「おはよう黒川」
うん、いい意味で天然だね。
後でお礼しとこうと思う。
川村もちゃんと挨拶を返してくれた、と思う。
「おはよう、今日も皆より荷物多いんだね」
一言余計じゃ貴様ああああああ!!!1
それを聞いた伊理塚はぷるぷる震えながら陰で笑ってるし、天然明枝はキラッキラの笑顔になってるよ!!
「ついに筋トレに目覚「めてないからね」
明枝の言葉を遮り盛大に否定した後は伊理塚に全力でチョップを食らわせた。
伊理塚は言葉も出ないほどの痛みにしゃがみこんでまたぷるぷる震えてる。
「しっかり反省してね」
悪魔の笑でそう言うと、ちょっと怖がられたのでほっといた。
10時5分前になると笑麻が来た。
「おはよー…って、あれ?もうこんなに集まってたの?陽月連絡くれても良かったのに~」
一気にそう言った笑麻はすぐにスマホを取り出して彩にLAINを飛ばす。
その間にも他男子3人は笑麻に挨拶をして、またそれぞれ話し始めた。
今日は笑麻も彩も私もいるのに咲だけがいない。
少しだけ残念な気持ちになる。
咲が居たら絶対楽しいだろうに。
ーーって楽しんじゃダメなのか(笑)ーー
こうした一人突っ込みが何だか虚しい。
テンションの高さに疲れるとはいえ楽しい事には変わりないからな。
やっぱりもう一度誘ってみればよかったかな。
ほんの少し後悔しながら横切っていく人々をぼーっと眺めていると、ある人に目が移る。
「…あ、恭夜くん」
思わずそう呟くと、聞こえたのだろうか。
キョロキョロとしていた恭夜くんがこちらを振り返った。
内心吃驚していた私。
ーーだってすぐ近くにいるなら未だしも、結構離れているのに今の呟きが聴こえたようだったーー
吃驚するのも仕方がないと思う。
きっと恭夜くんは地獄耳所持者なんだ、と無理やり納得しておくことにした。
「おはよう恭夜くん」
そう言って少し気だるげに、両手をパーカーのポケットに入れて歩いてきた恭夜くんに向かって微笑んでみた。
上手くできただろうかと思いながら恭夜くんの返事を待ってみる。
「…ああ、おはようございます」
少し間をあけてから敬語で挨拶してきた恭夜くん。
…ええ!?
「「「「「なんで敬語!?!?」」」」」
恭夜くん以外の皆がそろって突っ込んだ。
道行く人が何人か振り返った気がしたがどうでもいい。
「同い年でクラスメートだよ?友達とは言わなくても敬語にする必要ないよ?」
笑麻がそう言うと、初めて敬語になっていたことに気付いたらしく、頭を下げた。
だから何故!!!?
「いや、つい、癖で。すみません」
また敬語だし、謎。
前私と会話した時は普通にしゃべってた気がするんだけどなあ。
そう思っていると天然明枝が人面犬ならぬ人面アルパカ?のストラップを付けたエナメルバッグを揺らしながら恭夜くんに助け船を出した。
「恭夜は大勢の人の前だと緊張して敬語になっちゃうんだよ。慣れれば大丈夫なんだけどな」
言ってる明枝は凄く爽やかな男子に見えるとしたら、恭夜くんは照れてるかわいい系男子だと思う。
正直こんなにも恭夜くんが表情豊かだとは思わなかった。
ーーか、か、かわいい…かわいい上にその幼低音ボイスううううう!!!!神っておるーー
内心発狂もんだった。
よくポーカーフェイスで通せたと思う。
ナイス自分!!よくやった自分!!
そんなこんなで10時を少し回った頃に彩が謝りながら走ってきた。
全員揃ったところでカラオケ店へと出発したのである。




