烈日 二(番外編)
咲目線から始まります。
過去に何度か、嫌なことがあってからと言うもの、男性と言う生き物が苦手だ。
世間一般で言うところの、『男性恐怖症』と言うものだろう。
普段学校とかで普通に男子と話す分には怖くないのだが、公共の場で堂々とカップルがいちゃついているのを見ると怖くなる。
嫌な記憶が蘇ってくるんだ。
『あの~すみません、この辺で財布落ちてませんでした?』
声をかけてきたのは中年の小太りした男性。
突然声をかけてきたものだから吃驚したが、財布を落としたのか、と素直に信じてしまい普通に話してしまった。
『財布ですか?見てませんけど、どんな財布を落としたんですか?』
この時普通に知らないと答えていたらきっと、と何度後悔したことか。
今更考えても仕方がないだろう。
『黒の、チェーンが付いたものなんですが…一緒に探してもらえませんか?』
この時の私は無知過ぎた。
一緒に探してと言われ、いいですよ、と答えてしまったのだ。
時刻はすでに18時を過ぎていて秋だったために外は暗くなっていた。
誰もが通ることを躊躇いそうな薄暗い路地に男性は進んで行く。
流石に怖くなったし母に頼まれた買い物も済んでいたので遅くなるとまずいと思い、路地に入ることを拒んだ。
『すみません、これ以上遅くなると流石に母に怒られるので、帰ります。財布見つかるといいですね』
そう言って男性から離れようとした瞬間、男性に腕を掴まれた。
振りほどこうとしたが、成人男性と女子中学生とでは力に差があり過ぎた。
いくら私が普通の女子に比べて強いとは言え、無理がある。
『ちょ、離してください!!』
大声でそう言ったつもりが、か細い、恐怖に満ちた声に変ってしまう。
その声を聴いた途端その男性は笑った。
『怖いか?』
最初に会話した時とは打って変わって低く、蛇のように舌なめずりしながら男性はそう言った。
まるで獲物を前にした猛獣のようだと思った。
その瞬間自分がいかに危険な状況にいるのかをようやく理解した。
『やめてください!!離して!!』
そう言って全力で逃げようとしている所に、近所の方だろうか。
女性が目撃してくれた。
そしてその人が警察を呼んでくれて、すぐに私のもとに駆け付けてくれた。
おかげで何もされることなく解放され、無事に帰宅することができたのである。
これが最初に起きたこと。
これだけではなく他にも、何度もこんなことが起こった。
おかげで男性恐怖症へと陥ったわけである。
いつかの友人とのお喋りの時、こんな会話になったことがあったっけ。
私が男性恐怖症になった訳を話した時。
確か陽月が物凄く怒っていた。
『そやつらは人間のクズだね、私がその時一緒に居たら精神的にぶっ壊してやったのに』
凄く良い笑顔で言っていたことから察するに、陽月ならガチでやりかねないとある意味恐怖を感じたんだっけ。
笑麻や彩はと言うと。
『そんな人について言っちゃいけません!』
『飛んで火にいる夏の虫とはよく言ったもんだね』
陽月に負けず劣らず怒っていた。
この時、こんな友達がいてよかったと改めて思ったのだ。
それからは筋トレにさらに力を入れるようになった。
次が来ないように、万が一何か起きた時に力でも頭でも解決できるように。
******
私、現在お怒りモード。
目の前で友人の咲が恐怖のあまり声が出せずにいるのを見て、怒りがさらに募っていく。
その咲を恐怖のどん底に陥れている人物に焦点を合わせると、私はスイッチを切り替えた。
事の始まりは昨日のLAINでの会話。
咲が池袋に明日一人で行くと言う。
体育祭振り替え休日だったので暇だったし咲一人では危険だと考えた私は提案した。
『四人で行こうよ』
で、咲に加え私、笑麻、彩、の四人で出かけることになったわけである。
そして当日。
すこーし目を離した隙に咲は路地裏へと引きずり込まれたわけで…。
急いで追っかけて来てみれば、三人の大学生くらいのにーちゃんにかこまれているではーありませんか。
ここでわたしは一旦お怒りモードに。
幸い笑麻と彩は買い物中でここにはいないので、守るべきは咲だけ。
ーーさぁて、どう弄んで差し上げようかーー
悩みながら近づく私に気付いた男性諸君はすぐにニヤニヤ笑いながらこちらへ来た。
「おやぁ?君はさっきこの子の近くにいた子だよねぇ。…ふーん、顔は悪くないなぁ」
そう言って品定めするように眺めてはニヤニヤ笑っている。
あ、ちなむと警察は手配済み。
数分で着くとの事だから、数分間でしっかり精神破壊して差し上げよう。
「じろじろみてて気持ち悪いねおっさん」
敢えての神経逆撫で発言。
もちろんすぐに怒り出すバカな男性。
「はぁ?君、自分の置かれてる立場理解してる?…おい二人とも、そいつ縛ってこっち来い。解らせてやんないとなあ」
もう二人の男性が動き出したところで、目の前の『おっさん』は私に殴りかかってきた。
そこで私はスイッチを切り替える。
ーーさてさてさーて、ショータイムですよ~ーー
そんなことを考えながら殴りかかってきた『おっさん』の攻撃をよけて急所を蹴り上げた。
「いってえ!!!」
案の定動けなくなる『おっさん』。
思ったよか張り合いなかったな、と思いながらさっさと持っていた紐で手、足を縛る。
それからまた襲われないようもう一度、蹴り上げておいた。
「いってえってええ!!!ふざけんなよてんめえええ!!!」
何やら喚いていらっしゃるが、取り合えず一言伝える。
「ハゲにされたくなかったら黙れ」
そう言って鋏をポケットから取り出すと歯軋りしながらも黙り込んだ。
ーーこのおっさん結構なキモオタだったとはねええーー
ちゃんと彼のスマホをチェック済み。
最高に弄んでやろう。
咲を怖がらせた報いですからね。
それから他の二人もさっさと黙らせた。
咲を解放した後は、バカな男性諸君の精神破壊の時間です。
もちろん咲を誘拐しかけた罪で私がお仕置きしましたよ、当たり前でしょう。
その上殴られそうになったんだからね。
倍以上で返しても足りないくらいだよ(笑)
そんなわけでスマホ内のデータをもちろん手袋をはめて確認してから黒歴史やら何やらと確実に心をえぐっていきました。
「警察です、通報したのはあなたですか……ってなんだこの状況!?」
走って路地に入ってきた警察の方が驚いて立ち止まった。
なんせ今犯人たちは私のせいで縛られていて、更に放心状態だからだ。
ちなみに咲はとっくの昔に解放しており、笑麻と彩に連絡中なのである。
警察の方はちょっと来るのが遅かったかな(笑)
警察の方には私が縛ってどうのこうのと説明し、咲の証言の下、犯人たちを捕まえてもらいました。
「陽月、ありがと」
咲がまだ浮かない表情をしたままそう口にした。
さっき連れ込まれた時のことがまだショックなのかと思い、笑って言おうとした。
「大「本当に精神破壊するとは思ってなかったけど」
盛大に遮ってくれてありがとう。
ちょっと悲しくなりながらも笑って返す。
「いや、言ったじゃん?人間として最低なことするクズは精神的に壊すって。やったことは消えないんだから、やらかしたことを生きている間しっかり後悔してもらわないといけないからね」
私も好きでこんなことするわけじゃないし。
やらかしちゃった人間が生涯を持って償ってくれないと、駄目だと思うし。
それに咲を怖い目に合わせたやつらは同じ思いをさせなくちゃ私の気が済まない。
もちろんその事に関しては、咲だけじゃなくて世の中の女性全てに対してでもある。
咲は少しだけ悩んだようだけど、すぐに笑顔になって言った。
「そうだね…よし!!じゃあ池袋あと少しだけど楽しむぞおおおおお」
いつもの奇行種に戻った咲に呆れながらも、笑っておう!と返した。
次は本編の方に戻ります。




