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放課後の絵描きさん  作者: 夢迷四季
18/49

赤日 九


ーーあれ?ここ、どこだろうーー


気付けば私は森の中のような場所の湖らしきものの前で座り込んでいた。

まず思ったのは…ここどこだ?


さっき確か私は体育祭の閉会式が始まるからって、整列しようとしてて…何故か今ここにいる。


ーーえっと、つまり…ーー


倒れたって事だろうか?

だとしたら、ここは夢の中という事か?

ずいぶんメルヘンチックだなあと考えながら、立ち上がってみる。


「うっわ、なにこれ、浮遊感?…気持ち悪い」


変に傾いてる気がするし地に足がついていないというか、浮いている感じがする。

幽体離脱しかけちゃったみたいな感覚…したことはないが。


ーーさて、どうやって現実に戻ればいいんだろーー


そう思って見回してみる。


「ひっ」


後ろを振り返った瞬間心臓が飛び出るんじゃないかと思う程に飛び跳ねた。

そこには私と同い年くらいの世間一般ではモテそうな女の子がいた。

髪はハーフロングで目は少し釣り目だろうか。

顔は整っていて可愛らしく、微笑を浮かべているせいか天使のようだ、と言っても過言ではない気がする。

ここまでグダグダと御託を並べてきたが、つまりは物凄くかわいい女の子がすぐ後ろに立っていたという事だ。

普通に吃驚するだろう。

けれどこの夢を強制的に終わらせる方法がわかっていない以上何もしないというのは選択にない。

声をかけてみることにした。


「えっと、あ「く……わ…」


また私の言葉を誰かが遮ってくれたよ。

しかも聞き取れなかったし。

でもこの声どこかで聞いたことが…と思った瞬間、突然睡魔に襲われた。


ーー一体なんだっていうのさーー


もうよくわからなくてそんなことを思いながらあの可愛い女の子を見ると、口が微かに動いた。

正確には動いたように見えた。

けれど何かを口にしようとしたところで意識が飛んでしまった。




「く…かわ…………き、ひづ…」


暗闇の中をひたすらグルグルと(うごめ)く何かをぼーっと見つめていると、どこからか私を呼ぶ声が聞こえてきた。


「……川…黒川……陽……月…陽月!!!」



最後に聞こえた怒鳴るような声に、ハッとした途端ずっと続いていた暗闇にたくさんの光が差し込んできた、と思うと、保健室の天井が目に飛び込んできた。


「…え、あれ…?」


ベッドに寝かされているのか、と思いとりあえず頭だけを動かして周囲を確認してから吃驚した。


「誰も、いない?」


確かに声が聞こえた、と思っていた。

あれは空耳なのか?だとしたらずいぶん自分は疲れていたんだなと納得する。

すぐに保健の先生がカーテンを開けて入ってきた。


「黒川さん、寝不足だったんでしょう?貧血で閉会式前に倒れたのよ。覚えてる?」


うん、大体予想はしていたが当たっていた。

心配そうにそういう先生に、なるべく明るい表情で返す。


「覚えてます、大丈夫です」


それを聞いた先生は少しだけ表情を緩めてから言った。


「今はSHR(ショートホームルーム)の時間だけど、この後あなたのクラスメートが荷物を持ってきてくれるそうよ。それまでもう少しあるし、もうしばらく寝ていたらどう?」


ふむ、あれからそんなに時間は経ってないみたいでよかった。

まだ身体はだるさが残っていたので先生の話を聞いてしばらくここにいることにした。



それから約15分。

保健の先生は仕事があるからと言って保健室を出て行ったので、寝ようと思い体をベッドに預けてみたものの、目が冴えてしまい一向に眠れなかった。

その上あの意味深な夢を見てしまったのだ、気になって仕方がなかった。

あの可愛らしい女の子に出会った覚えはないしあんなメルヘンチックな場所も夢で初めて見たのだ。


ーーあんな妄想したことないけどなーー


そんなことを考えながら長い15分が過ぎた。

そろそろSHR(ショートホームルーム)も終わっている頃ではなかろうか。

先生の話が長くなっていなければ、と思った瞬間保健室の扉が開いた。

今現在私はベッドの淵に座って上履きを履こうとしていたところだったので、カーテンは開けていた。

つまり、扉を突然開いた人物と目が合ってしまったのだ。

思わず目を見開いてしまっていたと思う。

なんせそこにいたのは夢の中で(多分)何度も聞いた声の主。


「恭夜くん」


その人だった。





しばらくお互い固まっていたが、そんなことをしていても仕方がないと思ったのか、恭夜くんが話しかけてきた。


「起きてて大丈夫なの?」


うわぁ相変わらず素晴らしい声ですね、御馳走さまです。

今は少しだるいくらいで体調はいい方なので、笑顔で返す。


「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」


そう言うと照れたようにそっぽむいた恭夜くん。


ーー萌え死ぬからやめて!!ーー


そんなことを考えながら耐えきれず微妙にぷるぷるしていると、またまた恭夜くんが話しかけてきました。


「古里さんは部活があって、藤野と本宮はそれぞれ先生に相談があるらしくて、他の奴らは用事だったり面倒だからって、俺体育委員だったし、頼まれたから荷物持ってきた」


そっぽ向いたまま私に荷物を渡す恭夜くんは真面目にかっこ可愛いです。

神様ありがとうごさいます!!

差し出された荷物を受け取ってまたお礼を言うと、今度は頷いて返してくれた。

それで用は済んだはずなのに帰ろうとしない恭夜くん、一体どうしたのだろうか。


「あれ?用ってこれだけじゃないの?」


質問した瞬間にビクッと反応した彼はボソボソと小さな声で言った。


「…普通に、心配だったんだよ…目の前で倒れられて、吃驚して、すぐに先生呼ぶように言って保健室に連れてって…しばらく様子見てたけど一向に起きないし」


少しだけ影を落とした表情を見せた彼は俯いてしまった。

何か過去にトラウマでもあったのだろうか。

だとしたら本当に申し訳ないことをしてしまった。


「…ごめん、恭夜くん」


素直にそう言うと、恭夜くんは少しだけ笑ってくれた。


「でもただの貧血でよかった。体調管理しっかりしろよ?…じゃ、また教室で」


そう言って恭夜くんは保健室を出て行った。

少しだけ名残惜しく感じたのは心細さからくるものだと思う。


ーー今日は色々あったけど、予想外の出来事で恭夜くんの意外な一面を知ることができたし、結果オーライかなーー


そうしてカオスな体育祭は終了した。



その後聞いた話を少しだけ紹介していこう。


まず私が倒れた時。

恭夜くんが保健委員に声をかけた後、どうやらお姫様抱っこして保健室に連れて行ったらしい。

見かけによらず力あるんだな、と感心していると、どうやら伊理塚が物凄く悔しがっていたらしい。

怪我さえなければ、と呪文のように言い続けていたらしく、皆からは気味悪がられるようになったと。

ちょっと見てみたかった(笑)


それからSHR(ショートホームルーム)の時。

先生は結局約束通りアイスは買ってくれたらしいが、皆の楽しみにしていたあのお高い奴ではなく、安い奴だったのでガッカリしていたという。

最終的に皆食べたと。

いいな、私も食べたかったよ。

先生が一つ取って置こうとしたのに、バカ代表こと真也に奪われたらしい。


ーー真也め、退学にしてやればよかった!!ーー


そんなことを思ったのは私だけの秘密である。




まあ色々あったが何だかんだ言って充実した体育祭を過ごせてよかった!!

ようやく、ようやく体育祭編が終了したああああ!!

長かった…本当に長かった。

体育祭は一言で言うと『カオス』でしたね(汗)

次の回からはしばらくほんわかしたものを書いていこうと思います!

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