表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後の絵描きさん  作者: 夢迷四季
16/49

赤日 七


 今日は体育祭当日。

それなりに楽しみだったはずなのに何だかもやもやするのは、昨日のことが原因である。




それは昨日の予行練習中に起こった出来事。


『好きです、付き合って下さい!』


保健室にて。

突然強引にカーテン裏に引き込まれたと思ったら、伊理塚からの告白。

その後の私の行動と言ったら、最低だとしか言いようがない。

その言葉を聞いたとたん私は保健室から一目散に逃げだしてしまった。

本当に無意識のうちにね。

で、気付いたら自身の教室の前だった、と。


その後すぐに保健室に戻ったが伊理塚に合わせる顔がなく、仕方がないので予行練習の方へ行った。

先生には上手く言っておいたが我ながら本当に最低だと思う。


とにかく昨日は伊理塚に声をかけられないようになるべく誰かと一緒に行動し、さっさと移動していた。



だが今日はそうもいかない。

体育祭という学校行事に一応伊理塚も参加することになっていて、確実に顔を合わせることになるのだ。


ーーああもうどうしようーー


告白されたことが信じられなくて混乱していた。

結局昨日は眠れず寝不足なのである。


ーー何故よりによって体育祭前日に言ってきた?ーー


普通終わってからとかじゃないの?って現実逃避しかけたりした上にどういう顔をすればいいのかわからない。

おかげで寝不足に加え体調不良まで起こしてしまった。

今日の体育祭は波乱の予感しかしない。



そんなこんなでいつも通り早い時間に学校に来た。

今日は体育祭だがこんな日でも川村に授業で分からないところとかを教わるのである。

だってただの勉強会じゃなくて私にとっての息抜きなんだもん。

仕方ないでしょう川村と話すの楽しいんだから。

ってなわけで教室に来た時吃驚した。


ーー珍しく川村が来てない!?ーー


今までそんな事は最初の頃に一度か二度くらいしかなかった。

なので珍しいと思う反面心配した。

昨日足をひねったっぽかったからそのせいだろうか。

体育祭には出るのかな。

…というか何故川村はそんなにも運動音痴なんだ?

体育のあった日とかよく怪我して次の授業来なかったりとか遅れて来たりとかするし。

何故怪我をするまで無茶をするのだろう。


なんだかくだらないことを考えながら支度を済ませる。

結局川村はいつもより遅く来たものの他の生徒よりはだいぶ早い時間にやってきたので問題はなかった。




そんなこんなで川村と勉強中…のはずだったのだが。


「で、伊理塚にいつ返事するの?」


「ぅえ!?」


わからないところ~♪と探しながら耳を傾けていたらド直球にそんなことを言ってきた川村。

思わず変な返事をしてしまった。


「な、何の話?」


聞き返せば川村は少し意外そうな表情をしてから言った。


「昨日保健室で伊理塚に告白されてただろ?黒川が保健室を物凄い勢いで飛び出していくのを見て、何があったのか伊理塚に聞いたんだよ」


で、教えてくれたと。


ーー…あんのバカがああああああああ!!!!!!ーー


よくもまあ言いふらしてくれたね。

一番知られたくなかった人に知られたなんて最悪すぎる。

酷過ぎやしないか?


まあいいけど。


とりあえずこの人に隠し事をしても面白くないから素直に答える。


「今は何とも言えないよ。なんせ今までロクに会話さえしたことないんだから」


まさに正論だったと思う。

今関わりが少ないクラスメートにいきなり告白されても答えようがない。

興味すら持ったことなくただのクラスメート、としか昨日まで考えていなかったわけだし。

知れる機会と時間をくれるなら全力で調べてみたりはするけどな。


「つまり断ると?」


確認するかのようにそう言ってきた川村に私は即座に頷く。

そして補足として付け加えて言った。


「ただ断りたくてもタイミングが掴めない。昨日逃げ出しちゃったことからもわかると思うけど混乱するとどうも冷静になるまで時間がかかるからさあ、どうしようかなあって」


自分の中で答えは出ているのだがあやつに近づくと自分が何をしでかすかわからないのだ。

正直このままなかったことにしてほしいとも思ってしまう。

本日何度目か忘れたが、自分は本当に最低だね。

そんなことを考えていると川村が少し間をあけてから言った。


「じゃあ今度遊びに行くか、皆で」


「そうだねえ……ん?………え!?」


思わずスルー仕掛けたが確かにこやつが言った。

吃驚もしますよこの人誰かと遊びに行くことなんてめったにないって自分でも言っていたくらいなのに。

他人事で誘ってくるなんて、頭でも打ったのか?


「川村疲れてるの?大丈夫?」


割と本気でそう言ってみた。

それを聞いた川村は呆れたようにもう一度言い放った。


「だーかーらー皆で遊びに行こうか?って言ってるんだよ。珍しくそんなこと言ったからって頭打ったとかじゃないよ!!」


み、見透かされてたか…。

とにかく普段そんなこと嫌がってるくせにどうして突然そんなことを言い出したんだろう。


「そりゃ皆で行きたいけど、突然なんで?」


一番の疑問をぶつけてみるが全く微動だにせずスルーされた。

…悲しい。

けれど少しの沈黙を破るように口にしてくれる。


「そりゃまあ伊理塚が黒川を本気で好きだって言うんだったら応援したくなるだろう同じクラスメートなんだから」


早口でそう言いきった川村。

なんか怒ってる?

口調が、言っていることはクラスメート思いだけど…トゲトゲしてる。


「えっと、川村怒ですか?」


そう聞いてみるとビクリとすぐに反応する目の前の友人。

言いづらそうに返事した。


「…伊理塚が前々から恋ばな?で話し掛けてくるもんだから、段々面倒臭くなってきたし、アイツの恋さっさと決着つければすぐ大人しくなるかと思って」


告白するように誘導した訳ですか。

告白してきた理由の発端はこやつに背中推されたせいか。

何で裏で複雑に繋がってるんだと思っていたが納得。


「じゃあ今合わせる顔がないから…遊びに行こうって今度誘っといて」


とりあえずそう言っておいた。

まあ返事は期待してなかったけど案の定頷くだけで終わった。





さてあれから15分経過し生徒が集まってきた。

残り5分という時間になってクラスメート全員集合が完了。

先生も朝の会議を終えて教室にやって来た。

ようやく体育祭が始まろうとしています!

ちなみに椅子の移動はこれからね。

朝早く集まった理由はこれです(笑)


「じゃあ今日の体育祭頑張ったらアイス買ってあげるからね」


はい、先生爆弾発言ありがとう。

その瞬間このクラスが騒然となり大変な事態になったことは言わなくても想像できるよね…。



それからすぐ休み時間になって椅子の移動が開始された。

今日は待ちに待った体育祭だー!とはしゃぐ者もいれば、最悪だー…と落胆する者もいる。

まあ見ている分には楽しい光景である。


大事だからもう一度言うけど、『見ている分には楽しい』。


残念ながら私のいるグループは見ているだけには治まらせてはくれないのである。


「今日は体育祭だよ!ふふふふふ」


いきなり咲が壊れた。

…待って、私の頭が追い付かない。


「いきなりどうした咲」


それを言うのに数十秒かかった。


ーーヤバいねこりゃ、私体育祭最後まで持つかなーー


そう思う程に異常だった。

特に咲と笑麻のテンションが。

それとは正反対の私と彩。

…あれ?今日は珍しく彩のテンションが低いけどなんかあったのかな。


「彩?今日テンションが著しく低いけどどうかしたの?」


「寝坊したおかげで石田三成様のグッズ拝んでくるの忘れたから」


あーそうか、彩さんいつも眺めてくるのが日課だったもんね。



説明しよう。

本宮彩こと彩さんは筋肉も好きだが、一番好きなのは戦国武将の石田三成なのである。

好き、というか愛していると言っても過言ではないと思う。

ただ私にはたまについていくことができない時がある。



「そういえばそれが日課だったね、忘れちゃったから本調子じゃないのか」


そういうと彩が爆発した。

え、なんで?


「そうなんだよ!石田三成を朝拝まないともう石田三成好きって言えなくなっちゃうよ!!!」


えっと…。


「それはさすがにないでしょう」


「うん、ないよ」


即答かよ!!


「でも自分自身が許せない」


マジか。


「そこは許そう。私が許すから今日は楽しもう」


突然の笑麻参戦。

その言葉を聞いた彩は正気に戻ったらしい。

え、なんで?


「…そうだね、帰って今日の出来事話しながら謝れば済む話だよね」


うんうんと頷く笑麻。

ちょい待ち、性格どうした?今日の体育祭にテンション上がり過ぎて壊れた?

この後波乱の予感しかない。




体育祭開会式が終わり自席へと戻ってくるなり笑麻と咲が熱く語り始めた。


「昨日の予行練習の時の綱引きで流れた曲がね!!ラブラ〇ブ(アニメ)のオープニングテーマソングだったんだよ」


「是非とも伊理塚に聴かせたくて仕方がなかった!」


ん?

待て待て待て。

この学校って体育祭と言う学校行事でそんなオタク好きにはたまらないような曲って流していいんですか?


「他にもモブ〇イコ100とかのオープニングテーマソング流してくれたりとかねえ!!!」


あ、もう先生達疲れ切ってる顔してるわ。

他学年にもこれくらいの超オタクさんがいらっしゃるという事か。

大変だね、教師も(笑)


「とにかく滅茶苦茶ヤバかった」


マシンガントークをされた私。


「とにかく凄い事はよくわかった」


「是非とも聞いてみてね!!テンション上がるよ!!」


そうか、理解。

通りで朝からテンションが高いわけですよ。

そりゃこうなるわな。


「朝からこんなテンション高い理由がようやくわかった」


ボソッとそういうと、まだ本調子ではない彩も疲れたように返事をしてくれる。


「昨日の方が何やらかすかわかんない状態だったから今日はまだいい方だよ」


「ぅえ!?マジですか」


私が戻ったのはお昼近くだったけど、その頃にはもういつも通りのテンションだったから聞き流してただけに終わり気付かなかった。

まさかその前がこれよりも酷いテンションだったなんて。


「恐ろしくて考えたくもないね」


そういうと、彩は苦笑した。



長くなりそうなのでいったん切ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ