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放課後の絵描きさん  作者: 夢迷四季
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赤日 二


 イケメン王子こと小渡紅葉ちゃんとお喋りして教室に戻ってくると、ちょうどさっきまで寝ていたらしい川村が目が覚めたばかりのようで、目をこすりながら聞いてきた。


「いつもより遅かったね、どうしたの?」


微妙に寝ぼけているのが面白い…じゃなくて川村のその質問に私はテンションMAXで答えた。


「イケメン王子と呼ばれる小渡紅葉ちゃんとぶつかって…カクカクしかじか…ってなわけで友達になってきましたー!!!」


…はい、川村くんは案の定スルーしてくれましたよ。

別に気にしてないもんねー、自分よけれべすべて良し(今限定)。

そんなこんなで川村とお喋り?しながら準備をしているとチャイムが鳴った。



二学期が始まればすぐやってくるのが『体育祭』、その後一か月ちょっとで『文化祭』である。

まずは目の前の行事優先で話が進められていくのである。

今日は5、6時間目がその体育祭についての報告と話し合いがされることになっていた。

まあそのことを朝のSHR(ショートホームルーム)で伝えられていたのだが、聞いている生徒も聞いていない生徒もおり、結局は放課後にまた同じ説明をされるのが落ちでだった。

ーー毎回思うけど先生可哀想だな。ーー

担任の先生に同情する生徒も私を含め何名かいるほど疲労が蓄積していくような学級崩壊クラスは他にないだろう。



さて、いつも通りグダグダ授業を終え、午後の授業が開始した。

今回は『体育祭』についてなので担任の先生が担当である。


説明しよう。

普段のこの時間であれば、大体学年集会やらちょっとした行事やら道徳やらで様々なことをするのだが、担任自ら動くことは滅多にないのである。

ーー担任の先生は生徒会だから仕方ないのだと思う。ーー

副担任の先生も面白いから、文句言うような人がいないのも事実であるが。


そんな説明はまあ置いといて、とにかく担任がこの時間担当しているところから、話がいかに重要かというのが窺えるのだ。

きっと大変なんだろうな、と言った他人事の言葉しか出てこない人間は残酷だと思う(笑)

…そんなこんなで担任の先生による『体育祭』についての説明が始まった。


「さて今回の体育祭での種目の発表をし「何々先生!種目何?」


はいうざい男子降臨~。

先生の言葉をぶった切ったよこの人、ある意味度胸あるなあこやつ。

そんな彼の名前は…


「真也!静かにしなさい」


はい、真也と言います。

可哀想に全く相手にされてませんが、懲りない人だね面白いよ授業外なら。


まあそんなことはどうでもいい。

とりあえずぱっぱと話を先に進めたい。


「男子は『二人三脚』、女子は『お掃除リレー』です。まず男子の『二人三脚』は大体わかると思うけど、二人組でペアになって二人の足の片方を一本の紐で結んで障害物競走です。女子の『お掃除リレー』は机運び、ゴミ拾い、雑巾がけです。わからなかったら体育担当の先生に聞いてください」


なんと、男子が『二人三脚』とは萌えますな(笑)

いや冗談です。

見た目イケメンじゃないと見苦しいものがある、これ本音、人間だから仕方ない。

何だか片言になっているがまあいい、

次に『お掃除リレー』についてだが…


「…ねえ陽月、雑巾がけってこの校庭の上をやるのかな、何だか面倒臭そうだねえ」


小声でそういった笑麻に私は苦笑する。

ーーやっぱそう考えるよねー、でも実際は違うかもしれないーー

まああんまり興味ないが…


「逆に言えばわかりやすいリレーであるからさっさと終わらせればいいよ」


ニコニコしながら考えることを放棄した結論を伝える私、結構冷たい人間だと自分でもつくづく思う。

それでもそんな私の適当な言葉に納得してくれたらしく笑ってくれた。



彼女は本当のところ言うととんでもなく優しい。

だってあんまり好きじゃないクラスメートに対し下手に出るのだから。

私だったらもちろん対等な関係なわけだから正論突き通すか笑って誤魔化すだろう。

いいなあ素直で面白くて案外適当だけど一緒にいて楽しい人だし。

何より本音で話せるってところが一番いい。

もちろん『親しき中にも礼儀あり』とよく言うものだから、真正面で喧嘩の種をばらまくような行為はしないけど。

いい感じにお互いを高めあうっていうのかな、とにかくいい感じの距離なんだよね。

…まあこれ、完全私(ひづき)目線で笑麻の本心は知る由もないわけだけど。

半分はそうであってほしいかな、とだけ思っておこう。



さて体育祭の男女別の種目は発表されたが、他はどういった種目なのだろうか。

先生がまたお疲れさまと言いたくなるようなオーラを漂わせているが、説明を続けてくれた。


「クラス対抗種目は長縄跳びです。これが今体育祭でのメイン種目です…がんばったらバーゲンダッツ奢ってあげるから頑張ってください」


あちゃー先生、いくら何でもそれいったらあかんわ。

最終手段使いの速すぎる上にこのクラスの奴らは絶対調子に乗るよ?

今回ばかりはこまごまと助け船は出せない、といった表情の先生同情メンバーは自分も含めて先生に呆れていた。

物で釣るのは教師としてどうなんだろう、とふと疑問に思ったが、高校生だから許されるのだろうか。

高校ってよくわからない。


先生の説明はまだ続いていく。


「さて、今回色別リレーと言う種目があるのですが、同色の学年全員の中から足が速い人を選びます。その事で放課後、学級委員長副学級委員長は残ってください。それから詳しいことや疑問は体育担当の先生に聞いてください」


キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン………


丁度先生の説明が終わったところでチャイムが鳴った。

号令係の人が声掛けをして挨拶を済ませると生徒たちは一斉に動き出し、あるものはすぐに自身の掃除場所へ、あるものはスマホをいじったり友達同士で笑いあったりしている。

こうしてみていると本当このクラスって…

ーー皆バラッバラだな!!!しかもこんだけバラッバラなくせに肝心な時は一致団結とかある意味怖い!!--

と心の中で叫んでしまう。

でもまあ楽しいクラスだとは思う、学級崩壊しなければいいね…。



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