第三話 魔女、しらす飼うってよ
本日は、正月の挨拶と本話合わせて二話投稿しましたので、忘れず読んでいただけると嬉しいです。
それと、魔女のキャラデザを @Rumika120 (twitterより)さんに描いていただきました。本文中に掲載しております。
「おいでー!」
魔女は金魚鉢に手を伸ばし、中に住むものと戯れる。主のしらすは、嬉しそうに彼女の手に近づいていく。それは、傍から見れば飼い主とペット。ただそれだけなのだが、魔女の目は妖しく光り、しらすしか居ないこの空間で、饒舌に語り出す。
「ねぇ、私の愛しい人。しらすのままでも愛せるわ。だけど、早く人に戻ってね。その方がもっと愛せるよね?あなたが戻ったら、今度こそ世界を私たちのものにしようね。二人で、二人だけの世界で過ごすために……。」
しらすが人になるはずがない。もとより、人がしらすになるわけもない。どう見ても魔女の言葉はがどこかがズレているとしか思えなかった。
昔、こんな姿の魔女を見て人間はこう言った。『気狂いの魔女』と。人間は、魔女を異端とし遠ざけ、関わりを持つことを避けた。ただ恐怖に駆られ、魔女の存在を歴史の中から消した。
魔女は、昔を思い出しながらしらすと遊んでいた。指で追い回し、つつき、また追い回す。魔女はこの時間を日課とし、楽しんでいた。
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『気狂いの魔女』ではなく、人の名、真緒と呼ばれていたくらい昔のこと、語り部は魔女に一度会っているのだが、その時も魔女はしらすと遊んでいたことを思い出す。だが、今みたいに狂っていたわけではなかった。何故こうなってしまったのか、何か記憶の片鱗に引っかかるものがあったのだが、靄に隠れて捕まえることはできなかった。
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おもむろに掴んだしらすを地面に叩きつけたのだ。一切の躊躇も見受けられない魔女のその行動は、猟奇的なそれと同じものだった。魔女の行動がおかしいのか…それとも投げつけられて“悦んでいる”ように見えるしらすがおかしいのか。それを知るものはもう、この国にはいない。
「ふふふ…魔女に不可能はない。世界を私の手の中に。彼と共に歩けるように。二人の邪魔をするものは誰であろうと許さない。全て水の底に沈めてあげる…あ…この国すべて水のそこに沈めれば…あなたも自由に泳げるんじゃ…すごいことに気づいちゃったわ…もう…こんな簡単なことだったのね…」
どう考えても常軌を逸する発想をしている魔女は、計画の成功を想像し、ニヤリと表情を崩したのだった。
魔女さん、狂ってました…
実は色々知ってたりするのですが、狂ってますからねぇ…
正月の挨拶 はお読みいただけましたか?短いですが、あの姉妹が挨拶したりしてます。




