31話・幽香とお昼
「さて、作るか」
結局あのあと豚の生姜焼きを作ることにした悠斗は、買い物を終え幽香の家に戻って来ていた。
「なあ幽香、この世界でも白いごはんは普通に食べるんだろ?」
「ええ、基本的に白米はそのまま炊くわね」
「じゃあおたくは申し訳ないがごはんを炊いてくれないか?」
「わかったわ、お姉さんにお任せあれ♪」
「……」
相変わらず異常にテンションが高い幽香を前にして、悠斗はもう反応する気すら失せていたのだった。
「そろそろごはん、炊けるわよ」
幽香がそう言ったときには、悠斗は豚の生姜焼きと味噌汁をすでに作り終えていた。
「こっちも終わった」
「じゃあ、盛り付けてくれる? 皿はそこの棚にあるから」
「了解した」
しかし盛られた料理を見て、幽香は不満そうな声を出した。
「たしかに美味しそうだけど… 野菜がないわ」
「すまない、うっかり買い忘れた」
「じゃあ、これ食べてみる? 口に合うかはわからないけど…」
そう言って、幽香は机の下から小さな壺をとりだした。
蓋をあけると、中は鮮やかな紫の液体で満たされていた。
その色をみて、一番最初に出されたミミズのラベンダーソースあえを思い出した悠斗は、思わず顔をしかめながらきいた。
「なんだい、これは?」
「これはね、こっちの世界のつけもの。 キャベツをシソでつけたものよ。 私はおいしいと思うわ」
「よし、じゃあおたくが俺の作ったものを食べるかわりに、俺はこのつけものを食おう」
そして、幽香は豚の生姜焼きを、悠斗はつけものを、意を決して口に入れた。
「「………あれ? 意外にいけるな(じゃない)」」
悠斗の食べたつけものは、見た目からは想像できないような、優しい酸っぱさを持っていた。しかしよく考えてみると、梅干しはシソでつける。だから別に食べられても不思議ではないな、などと思っていると。
「食べる前は外の世界のたべものってことで緊張したけど、よく考えると同じような料理が幻想卿にもあるわ。 意外なものね、おいしいわ」
どうやら幽香も同じことを考えていたらしい。
「そうだな、お互い食わず嫌いしてるだけで、案外お互いにおいしく食べられるものってあるかもしれないな」
「そうね、じゃあまた今度他の料理で試してみましょうよ!」
「よし、やってみるか」
こうして2人は料理研究会を結成したのだった。
ちなみにその後、悠斗は今度は幽香に送ってもらい紅魔館へと戻った。
そして厨房にいた咲夜に幽香との発見を伝えようとしたのだが、またあの食事を出されるかもしれないと思うと、結局言えないのであった。




