友達÷恋?=X
有希のちょっとした過去。将也の亜美へのアプローチ。少しずつ恋が動き出す予兆・・・。
《東平高校1年3組》
「おはよー亜美。」
「おはよっ、知佳昨日はありがとね!」
「亜美おはよ。」
「おはよー亜美」
「真奈美、有希、おはよー。」
亜美が教室に入ると3人が寄って来た。
「聞いたよー、洋介君の誕生日プレゼント買いに行ったんだって♪」
「うん、でも何も昨日は買わなかったんだけどね・・。」
「で、昨日聞けたの?」
「うん。バッティンググローブだって。」
「何それ?」
真奈美はキョトンとした表情で聞いた。
「野球で使うやつだよ、打つときに使うんだって。」
「なんか色気ないねぇ。ねぇ有希。」
「いいんじゃない、彼氏って訳じゃ無いんだし。」
「そーそー、何であたしが洋介に色気使わなきゃいけないの〈笑〉」
亜美はカバンを机に置きながら笑って言った。
「じゃぁ今日買いに行く?」
「ううん、大丈夫。」
「いつ買うの?」
「土曜日に洋介と買いに行くことにしたんだぁ。」
亜美は何食わぬ顔で言った。
「デートだっ!」
真奈美は満面の笑みを浮かべた。
「いや、違うから!」
亜美は真顔で否定。
「でも、男と女が2人で出かけるってやっぱデートだよね?」
有希も真奈美に乗っかり亜美をからかう。
「部活じゃないの、洋介君?」
「来週から中間考査だから、土日は部活休みなんだって。」
「そーいえばそーだった・・・。やだなぁ。」
真奈美は急に暗い表情になった。
「ほんと、土日で勉強しなきゃだ。」
有希も憂鬱な表情をした。
「高校では、うちらの中で誰が一番優秀なのかな?ってゆーか、4人ともバカだったりして〈笑〉」
知佳が笑いながら言った。
「ありえるー〈笑〉」
真奈美もその言葉に笑った。
「つーか、亜美やばくない?土日勉強出来ないじゃん!」
有希は、亜美を心配そうに見た。
「あ、あたし?たぶん大丈夫だと思うけど。」
亜美は特に困った様子もなく答えた。
「えっ、亜美勉強に自信ある感じなの?」
知佳は嘘だといった表情をしている。
「別にそーじゃないけど。」
「ちなみに中学時代は、有希、知佳、私の順だよね〈笑〉」
「そーなの?」
「あっでも、真奈美とうちらの差はデカいから!」
知佳は見下すように言った。
「ひどーい知佳!でも事実〈笑〉」
アハハハ
キーンコーンカーンコーン
「あっ席に着かなきゃ。」
「うん。」
同じ頃
《1年1組》
「洋介~おっはよー♪」
教室に入って来た洋介に絡む将也。
(・・・うざい・・。)
面倒な顔をする洋介
「将也、洋介嫌がってんぞ。」
亮が呆れ笑いで将也を促す。
「はいはい。」
将也は洋介から離れた。
「それにしても今日一段とテンション高くね?」
「そう?まぁ亜美ちゃんに洋介の事託されたからな、俺♪」
将也は腰に手を当て、自慢げな態度。
「亜美が?」
「ひなっちゃんが?」
洋介と亮は顔を見合わせた。
「おう、もう可愛い笑顔でね。」
「・・・・・あっ。」
「んどうした洋介?」
「将也の名字って何?」
洋介は亮に尋ねた。
「んだよっ、お前俺のフルネーム知らねーの!?ひっどいなぁ〈泣〉」
将也は落胆した。
「若村だよ。」
「・・・あぁ。」
洋介は一人で納得し、自分の席へ。
(何かに納得した・・・?)
亮は不思議そうに洋介を見ていた。
「えっ、何?何に納得したんだ??ちょっと待てって。」
将也は意味不明な状態にあたふたしていた。
(・・・昨日亜美が言ってたの・・・将也か。)
昨日の亜美の言葉を薄っすら思い出していた。
「何だよ、洋介気になるじゃんか!」
将也は洋介の席で騒いでいる。
キーンコーンカーンコーン
「ほら、将也チャイムだぞ、席に戻れ。」
亮は将也の首根っこを掴んで席へ戻した。
《1年3組 3限目 英語》
「来週からテストなので、自習にするから、テスト範囲を見直しなさい。」
「やったー自習♪」
「マジでぇ自習サイコ―」
自習という言葉に教室が喜びの声でざわついた。
「こら、遊びじゃないのよ。分かんない事あったら聞きに来なさい。」
「はーい。」
教室は仲のいい者同士自習を始めた。
亜美は、知佳と有希と真奈美の4人で机を移動して勉強を始めた。
「自習って言われても勉強の仕方良く分かんないなぁ。」
真奈美は机に頬杖をつき、やる気が全くない様子。
「よくそんなんで、ここに入れたね・・・。一応進学校だしそんなにレベル低くないよ?」
亜美は不思議そうな顔で真奈美を見る。
「真奈美推薦入学だから。」
有希がちょっと複雑な表情で言った。
「推薦?なんの?」
「部活動推薦だよ〈笑〉」
真奈美は笑顔で言った。
「部活動?吹奏楽?でも帰宅部だよね!?」
「そう、てゆーかピアノの成績でかなぁ。」
真奈美は机に伏せながら言った。
「ピアノ?」
「真奈美は色んなコンクールで入賞したりしてるんだよ。」
知佳が淡々と話す。
「すごいねー!でも音楽系の高校行けば良かったんじゃない?」
「うん、親にはそう言われたんだけど~、青春するには音楽バカの高校は嫌でさぁ。」
真奈美はウンザリした様子。
「そ、そんな理由で〈笑〉」
真奈美らしい発言に亜美は驚きながらも笑ってしまった。
「まーとにかく勉強始めよう!」
知佳は歴史の教科書とノートを出した。
「英語じゃないの?」
亜美と有希は声を揃えて言った。
「英語は意外と得意だから、苦手な教科やろうかと。」
「そっか、知佳歴史が苦手なんだぁ。」
「あたしは化学が苦手だから化学やろうかな。」
有希はそういって化学の教科書を広げた。
「有希は化学が苦手か。」
亜美は友達のことで、知らない事が多いと思った。
「亜美は?」
「あたしは・・・古文と漢文かなぁ?」
「皆苦手教科バラバラだね。」
「あたしは全部苦手だけど」
真奈美は何故かドヤ顔。
アハハ
「こらっそこうるさい!」
「すいません・・・。」
笑い声を先生に注意される4人。
しばし静かに勉強していると
「ゆーき♪」
クラスメイトの渡辺 健太、通称・ワタケンが近づいて来た。
「わたけん何?」
「なぁ、数学のノート貸してくんない?」
わたけんは明るく有希にお願いした。
「何で高校入ってまであんたの面倒見なきゃなんないわけ?」
有希は冷たくあしらった。
「そんな事言わず、なっ頼む!」
必至にお願いするワタケン。
「はぁ~もう仕方ない・・。はい。」
仕方なくノートを差し出した。
「サンキュー♪」
ワタケンは両手でノートを受け取り席へ戻っていった。
「有希、ワタケンと仲良いよね?」
亜美が笑顔で言った。
「まぁ、中学3年間クラス一緒だったしね。普通じゃない?」
「普通だよねー、ワタケン有希のことラブだしねぇ。」
「マジ!?」
真奈美の発言に食いつく亜美。
「いつの話してんのよ真奈美。」
有希は全く動じない。
「そーいや1年の頃だよね、ワタケンが公開告白したの。」
知佳が懐かしそうに言う。
「公開告白!?」
亜美はドラマみたいな話にウキウキしている。
「あれは流石に恥ずかしかったな〈苦笑〉」
有希は苦笑いをしながらも、少し嬉しそうだった。
「でもさー結局自己完結で終わっちゃったじゃん?」
真奈美はワタケンをチラ見した。
「自己完結?意味不明なんですけど。」
亜美は腑に落ちない。
「ワタケン中学もサッカー部なんだけど、なんか大きな大会で1年では亮とワタケンがレギュラーだったんだよ、それで、大会前の練習の時に有希は陸上部でグラウンドにいて、ワタケンはグラウンドの端で声出し練習やってたの」
「そしたらいきなりだっけ?」
「そうそう、『次の大会で得点したら、俺と付き合ってくださーーーい』って〈笑〉」
真奈美と知佳はクスクス笑って言った。
有希は2人の話を聞いて赤面
「うわ~すごっ!」
亜美も何故か赤面
「もういいでしょっ!やめよこの話!」
有希は恥ずかしさに耐え切れず、教科書で顔を隠した。
「無理無理、ここで話終わらせたら消化不良で体調崩す!」
亜美はもう興味津々で仕方ない。
「でも結局、大会で得点出来なくて、特に有希が返事することもなく終了。チャンチャン。」
真奈美はつまらなそうにした。
「えぇ、言い逃げ!ってゆーか有希はワタケン好きだったの?」
「別に仲の良い友達って感じだっただけだし。」
有希は教科書から目だけを出して答えた。
「そーなんだ、気まずくないの?」
「それが、ワタケン告白後も特に何も変わらない接し方だったよね。ある意味すごいよね。」
知佳は一人頷いていた。
「てゆーか、あたしが思うに何か罰ゲームだったんじゃない?」
有希は冷静に言った。
「だとしたらめちゃヒドじゃん」
亜美は眉間に皺をよせた。
「罰ゲームだとしても、ワタケンが有希を好きってのは本当だったと思うけど。」
真奈美はニコニコして言う。
「もーいいから、ほら勉強!」
有希はもう聞く気が無いオーラを出していた。
「はいはい。」
真奈美は仕方ない感じで教科書を読み始めた。
それにつられて、亜美と知佳も勉強に戻った。
《放課後》
「じゃああたしら帰るねー。」
「うん、また明日~。」
亜美と知佳は、真奈美と有希にサヨナラをして教室を出た。
すると
「洋介?彗?」
洋介と彗がドアの前に立っていた。
(あっ連れ去り犯だ・・。)
「よう、亜美今日一緒に帰ろうぜ」
彗は軽く亜美を誘った。
「別にいいけど部活は?」
「なんか、前回のテストで先輩たちが成績不振だったらしく部活休みにして勉強しろって。」
「そーなの。」
「洋介と2人で帰ればよかったじゃん。」
〈いや・・・そこは察しろよ〈悲〉〉
彗は亜美にこそっと言った。
「は?」
「まぁいいや、帰ろうぜ。」
「あっ、こいつら一緒でもいい?知佳?」
「いいよ、どうせあたし門までだし。」
「ごめんね急にご一緒しちゃって。」
彗は知佳に謝った。
「別にいいよ。あたし知佳、宜しく。」
「俺は彗、こっちが洋介。」
「どうも。」
洋介は軽く頭を下げた。
「あはは、いつも亜美から聞いてるからなんか親しみ感じる〈笑〉」
知佳は笑いながら洋介の肩をポンポンと叩いた。
「・・・・。」
「洋介何か言いなさいよ・・」
亜美は片手で頭を押さえてうな垂れた。
「いいよ、いいよ。あっ、彗は彗って呼び捨てしていい?」
「もちろん。俺は知佳ちゃんって呼ぶ。」
「知佳でいいのに。」
「ちゃんづけの方が可愛くない?」
彗は子供っぽい笑顔をした。
「そ、そう・・?」
(えっ何かイメージと違うな・・・。)
知佳は少し戸惑った。
「じゃぁ行こうかぁ。」
4人は歩き出した。
すると・・・
「亜美ちゃーん♪」
正面から見覚えのある顔が近づいてくる。
「あっ・・・〈ゾクッ〉」
「亜美あいつ昨日の!」
「将也何だよ、馴れ馴れしいなお前。」
彗が冷めた視線を送った。
「洋介、あの人だよ昨日話した・・・。」
亜美は恐怖心でいっぱいだった。
青ざめた亜美の顔を見た知佳。
「え?どうしたの亜美?」
「だって、洋介あの人知らないって昨日言ってたから・・。」
「うそっ!こわっ」
知佳はドン引き
「おい、おい、亜美。将也は洋介のダチだぞ?なぁ。」
彗はキョトンとしながら洋介に言った。
「・・あぁ。」
「えっだって昨日。」
「名字・・知らなかったから。」
「は?」
亜美と知佳と彗は顔を見合わせた。
「何?みんなどうしたの?何か変な顔してるけど・・・。」
将也は4人を見てキョトンとし首を傾げた。
「いや、何でもないよ将也。」
彗は呆れた様子で歩きだした。
「ちょっと待てって、俺も一緒に帰る。」
そう言って、将也は亜美の横に並んだ。
(・・・なんで亜美の隣へ?)
知佳は不信感たっぷりの様子。
5人は歩きながらそれぞれ会話をしていた。
知佳と彗と洋介が前を歩き、亜美と将也は後ろ。
洋介はそれぞれの会話を聞いているのかいないのか分からないが彗の横を歩いていた。
昇降口で靴を履きかえてグラウンドに出ると、将也は亜美にこそっと耳打ちをした。
〈ねぇ、本当に洋介と付き合ってないの?〉
「うん。」
(なんで耳打ち?)
「そーかぁ、じゃあ他に彼氏とか好きな人は?」
「特にいないよ、若村君は?」
「今はいないなぁ。」
将也は寂しそうに言った。
「でも、若村君チヤらそうだし、すぐ彼女とか出来そうだよね。」
「えっ俺ってそう見えてんの?やだなぁ~」
将也は苦笑いをしながら頭をかいた。
(えっ見えないと思える精神に拍手もんだよ・・)
「違うの?」
「どーだろ、そう見えるってことはそうなのかもね。亜美ちゃんはそういう人嫌い?」
「別に、嫌いとかではないけど。」
「なら良かった。」
将也は胸に手を当てほっとした様子を見せた。
前を歩く知佳と彗はその会話に聞き耳を立てていた。
〈ちょっと彗、あいつ亜美口説いてないか?〉
〈う、うん・・〉
〈あいつ大丈夫なやつなの!?てゆーか洋介くんの友達でしょ!?〉
〈いやぁ、俺も付き合い浅いから・・。亜美と洋介が付き合ってる訳じゃないし・・〉
コソコソと話ながら、2人は洋介を見た。
洋介は何も気にしていないようにただ前を向いていた。
「亜美ちゃん携番交換しようよ♪」
―何っ!!―
将也の発言に思わず、知佳と彗は振り向いた。
「ん?何どうしたのお二人さん?目が据わってる・・みたいだけど・・。怖いよ?」
将也は目をパチクリさせた。
「い、いや何でもない。」
「うん。」
2人はまた前を向いて歩きだしたが、後ろが気になって仕方ない。
「じゃあ、俺のまず送るね。」
「うん・・来た。じゃああたしのを。」
「・・・・おっけい来た!」
正門に着き、知佳と別れ、4人で駅まで歩く。
「亜美、ちょっと洋介と話してて、俺こいつと話したいことあるから。」
「う、うん。」
彗は亜美を洋介の隣に置き、自分は将也の隣へ。
彗は、亜美と洋介と距離をとった。
「彗何?せっかく亜美ちゃんと話盛り上がってたのに。」
将也は不満気。
「聞きたいんだけど、お前まさかと思うけど、亜美狙ってんのか?」
「完璧狙ってる訳じゃ無いけど、ありだなぁって思ってる♪」
将也は楽しそうに話す。
「好きじゃないなら手出すなよ!」
彗は真顔で言った。
「何で?」
「何でって、当たり前だろ。洋介のこと考えろよ。」
彗の言葉で将也は真剣な表情になった。
「俺にとられるのが嫌なら、洋介は行動すべきじゃね?ってか今後亜美ちゃんを好きになる奴他にもいるかもしんないじゃん。」
「それはそーなんだけど。」
「つーか、洋介は亜美ちゃんのこと恋愛対象として見てるのか?」
「たぶん。」
「そんな曖昧な答えで、亜美ちゃんの青春ぶち壊しちゃダメだと思うけど。」
「あぁ・・分かってる。」
将也の意見が彗の胸に刺さった。
(何も言い返せない・・。)
「とゆーわけで、俺は俺のやり方でいくから♪」
将也は彗の頭にポンと手を当て、亜美の横へ移動した。
(くそ~〈悔〉)
《駅》
「じゃあね、若村くん。」
「じゃあな。」
「じゃぁ。」
「バイバイ、亜美ちゃん♪」
将也は亜美達と反対方向の電車に乗った。
「なぁ、亜美と洋介は帰って勉強すんのか?」
「たぶん。」
「あたしも少しやろうかな。彗は?」
「やるよっ!全教科50以上取れなかったらレギュラー選抜試験出してもらえないんだからなっ!」
彗は頭を抱えた。
「そーなの!?大変だね野球部!」
「いいよなぁお前らは、見た目バカっぽいのに・・・成績優秀だもんな・・・。」
「失礼な!日頃の積み重ねだわっ!」
亜美は彗の頭を叩いた。
「なぁ、亜美俺に勉強教えてくれない?」
「別にいいけど、洋介の方が頭いいよ?」
「いや、こいつ人に教えるの出来ないでしょ。」
「そっか、じゃあ洋介んちで今から勉強するか。」
亜美は洋介の制服を引っ張った。
「・・なんで俺んち。」
「彗と2人ってのもねぇ。」
「そーだな、俺も一応男だしな。」
「別にそーゆー意味じゃないけどね。じゃあこのまま洋介んち直行で!」
「おう!」
(・・・なんで俺んち・・。)
こうして、3人は洋介の家で勉強をすることになった。
洋介の家に着いてから、亜美の携帯に将也からな数回のメールが届き、彗は複雑な心境で勉強していた。
翌日、彗は知佳に将也の事を話した。
話を聞いた知佳は、腑に落ちないながらも将也と亜美の動向を見守る事にした。