100-X=ALL
遅刻ギリギリで登校したことで、また噂が立つ亜美と洋介だが。諦めず否定する亜美と、否定も肯定もしない洋介。
中学時代の親友が助け舟をだし、1組での盛り上がりは一度落ち着く。
その後真紀との会話の中で亜美の知らない洋介の過去を知ることになる亜美。
些細な事だが・・・
新たな友達も増え、クラスにも馴染んだ亜美。
学校がより楽しい場所となった。
そして今日もいつも通りの朝を迎えたかと思ったが・・・
「亜美ー迎え来てるぞっ早くしろっ」
階段下から怒鳴る父。お弁当を持って待ち構える母。
「あーーー洋介先行っててぇ!」
今日は完全に寝坊。
「だとよー洋ちゃん、今日は先行ってくれやぁ」
父は苦い顔をしながら、洋介を促した。
しかし洋介は
「別に。いつもの事だから。」
慌てる素振りなど一切見せない。
「いつもより遅いからだめよ、洋ちゃんを遅刻させる訳にいかないわ、ほら先にいってちょうだい」
ガチャ
母は洋介を玄関から押し出した。
バタンっ
「・・・・」
数分後
ガチャッ
「じゃー行ってきまーすっ!!」
(やっばーーーっダッシュで行けばギリかなぁ〈泣〉)
「気を付けるのよーー」
「ハーイ」
亜美は玄関から飛び出た
ドフッッ
「ったぁーー」
「大丈夫か?」
―はっ―
亜美は顔を押さえながら、正面を向いた。
「洋介っっ?!」
「ん?」
驚く亜美とは反対に落ち着き放つ洋介がいた。
「ん?じゃなーい!!何でいる!?何でいるんだ!?」
ガチャ
玄関の外で喚く娘の声を聞き、母がドアを開けた。
「洋ちゃんっ!?」
母は目を疑った。
「洋ちゃんなんでいるの!?遅刻よ遅刻!」
「あぁ。」
「あぁ。じゃないでしょっ!!」
亜美はとりあえず突っ込んでから、携帯で時間を見た。
「やーー!!いいから行こう!走るよっっ」
「あぁ。」
ビューーーン
2人はダッシュで去って行った。
「おい母さん、洋ちゃんがどうかしたのか?」
「・・えぇ・・ずっと待っていてくれたみたい。」
「何?!」
数分後・・・
「はぁはぁはぁ・・・。」
「大丈夫か?」
「な、なんとか・・。」
駅まで猛ダッシュした為、亜美は息切れでフラフラ。
しかし洋介は平然としていた。
「はぁはぁ、つ・・次の電車に乗・・れば、何とかぁ間に合うねぇ・・」
「あぁ」
洋介はしんどそうな亜美のカバンを持った。
ジ――――
「何?」
「洋介ぇ、今日みたいなときは先に行っていいから。洋介まで遅刻しちゃうじゃん。」
「別に・・」
「別にじゃないよ。どうせ、部活始まったら別々になるんだしさ。あたしにも罪悪感あるんだからね・・。」
「・・・・。」
「あっ電車来たぁ・・絶対座る・・。」
2人は電車に乗り込んだ。
「そこ空いてる。」
「うん。洋介も向う空いてるから座ったら?」
亜美は少し離れた席を指さした。
「別に、疲れてないから。」
洋介は亜美の目の前の吊革につかまり立っている。
(いつも早朝ランニングしてるだけあるなぁ~・・何でまだ部活入部してないわけ?)
疑問ばかりが膨らむ。
「いつからなの部活?」
「うん」
(いや・・答えになってないんですけど・・・。)
「亜美は?」
「えっ?あたし?部活入らないよ。」
思いがけない質問。
「そう。」
「何?なんで?」
「別に」
(・・・何考えてんだか・・。)
《東平高校》
キーンコーンカーンコーン
ガラガラッッ
勢い良く開く教室のドアに皆の視線が集まる。
「ギリセーフ!!」
「亜美おはよっ、休みかと思ったよぉ。」
「知佳おはよーー。危なかったよ!」
亜美は苦笑いをしながら自分の席に着いた。
「寝坊?」
「うん〈笑〉」
《1年1組》
ガラガラ
チャイムと同時に洋介が教室に入った。
てくてくてく。。。
「洋介おせーよ、つーか少し慌てろよ!」
「あぁ。」
マイペースに席まで歩く洋介。
「彼女と遅刻ギリギリまで何してたんだよー」
窓から、2人が登校してくる様子を見ていた男子が冷やかす。
「別に。」
無表情のまま一言で片づける。
(からかいがいねー・・・)
しかし、入学からずっと一緒に登下校を繰り返す2人の事は陰で噂になっていることだった。
「やっぱり、3組の子彼女なの~洋介?」
誰もがはっきり聞けなかった事を堂々と聞く1人の女子
クラスメイト達の視線が洋介に集まる。
「違うよ、絵里。亜美は洋介の幼馴染みだよ」
否定も肯定もしない洋介をかばうかのように、2人の関係を否定する女子。
「確かにひなっちゃんもそう言ってたぞ。」
亮も洋介と亜美をかばった。
最初に否定した女子は、亜美の中学時代の親友。
飯田 真紀だった。
「そーなの洋介?じゃあ否定ぐらいしろ~紛らわしい!」
「無口にも程があるぞお前〈苦笑〉なぁ亮」
「うんそうだな、誤解されたらひなっちゃんも可哀想じゃん。」
「・・・なんで?」
亮の言葉に、珍しく反応する洋介。
ただその言葉に感情はまるで感じられなかった。
(えっ・・何でって・・・)
(洋介・・どんな心境なわけ!?)
(亜美、可哀想に〈笑〉)
皆は憐れみの目で洋介を見た。
「洋介、感情無さ過ぎてみんな何も言えねーよ〈汗〉」
困惑するクラスメイト達。
ただ、同じ中学出身のメンバーに関しては動じるようなことでは無かった。
「相変わらずだね、まぁ、いつも一緒にいるわけだし彼女より超越した関係かもね」
「え~真紀どーゆーことー〈笑〉」
「同じ中学なら納得できる話なのよ絵里」
「へ~。」
キンコーンカーンコーン
《1年3組 2限目体育》
「あーー今日もう体力使いたくないなぁ・・。」
亜美はだるそうに歩いている。
「なんで?珍しいこと。」
「今日朝から猛ダッシュしたからさぁ。さすがに。」
疲れた様子の亜美。
「ねぇ~遅刻するときも、幼馴染みくんと一緒なのぉ?」
真奈美が笑顔で尋ねた。
「う~ん・・先に行ってって言ったんだけど。」
少し考えながら答える。
「じゃあ、自ら待っていてくれたの♪」」
有希の目が輝いている。
「ま、まぁ。」
「洋介くんって言ったっけ?本当のとこはどうなのよ?」
知佳は腕組をしながら肘で亜美をつついた。
「だから何もないって。待ってってくれるのは、昔からの癖みたいなもんじゃないの?」
亜美は平然と答える。
「集合しろー」
先生の声がグラウンドにこだまする。
「行こうか。」
「うん」
「今日は、走り幅跳びをやるぞ。まずは男子からやるから女子は端で待機してろ。」
先生の指示に従い、女子はグラウンドの端へ散らばった。
「幅跳びとかさ、この先絶対不必要だよね。」
真奈美は浮かない様子。
「でも長い距離走らされるより全然ましでしょ。」
なだめる様に真奈美に言う知佳。
「あたしは好きだよ陸上♪」
「有希は中学陸部だもんね。」
「有希陸部だったの?初耳~。真奈美は?」
「真奈美はぁ~一応吹奏楽。」
「一応って〈笑〉」
(絶対幽霊部員だな・・・。)
亜美は悟った。
「亜美は?」
「バレーボール部だったよ。知佳はバスケだよね。」
「うん。皆高校で部活やるの?」
「やらな~い」
「真奈美も~」
「2人もかぁ、あたしと知佳もだよ。真奈美は分かるけど、有希は何でやらないの部活?陸上好きって言ってたばっかじゃん?」
その質問に有希は含み笑いをした。
「だって、高校に入ったら青春満喫したいじゃん!」
意気揚々としている。
「青春??」
キョトンとする亜美。
「うちの高校野球が強いじゃん!出来れば、野球部の彼氏が欲しいなぁ。」
真奈美もウキウキモード。
「真奈美それ目的で高校決めたんだもんね〈笑〉」
「マジ??」
驚きが隠せない亜美。
「マジマジ!その為に彼氏とも別れたんだもんね!」
「うっそぉ!すご!」
「え~真奈美、克也と別れたの!?」
「知佳知ってるの?あ、同じ中学同士とかか。」
「違う学校だよ、あたしは真奈美の元カレと塾一緒だったから。」
知佳は淡々とこたえる。
「べ、別にそれで別れたわけじゃないよー!」
「嘘つけー♪」
「あたし・・・彼氏とか考えたことないなぁ?好きって何?って感じ何だけど。」
少し恥ずかしくなる亜美。
亜美の一言で3人に火が付く。
「そーなの!?じゃぁ高校で青春しなきゃぁ!」
真奈美は亜美の手をとった。
「告白されたり、告白したり無いの?」
「えっ、皆あるの?」
3人を見る亜美。
「有希は結構モテたよね~。」
「そんなことないし、でも彼氏いた事はあるよ。」
少し照れながら答える。
「へー〈驚〉」
「知佳もいた事あるよね?」
「うん。でもあたしも好きとかよく分かんないかも~。」
「皆すごいなぁ」
亜美は目を輝かせて感心していた。
そこへ
「亜美~!」
(ん?)
振り返ると真紀が立っていた。
「あ~真紀~何してるの?」
「1組今、美術の授業でお絵かきなの。」
「誰~?」
真奈美は真紀に興味津々。
「あー同中の友達で、飯田真紀ってゆーの」
「宜しくね~亜美の友達の真紀でーす!亜美、同じ中学のメンバーとクラス別れちゃったからホント宜しくね」
真紀はニコッと3人に微笑んだ。
「こちらこそ、知佳って呼んでね。」
「あたし、有希」
「真奈美だよ」
3人は顔を真紀の方に向け挨拶を交わした。
「良かったね亜美、いい友達出来て。あっ、今日洋介と亜美が付き合ってるみたいになってたようちのクラス〈笑〉」
せせら笑うかのように真紀は言った。
「何それ~最近そんなこと言われるの多いなぁ」
亜美はちょっとウンザリした様子。
「だって、洋介が否定しないからさぁ~」
タッタッタッタ・・・
「真紀~・・」
「絵里。」
「置いてかないでよー」
小柄で、ほんわかしている女の子。
「真紀の友達?」
「うん、絵里って言うの。」」
絵里は4人を軽く見たあと挨拶をしようとしたが、
「どーも・・・あっ洋介にとって彼女を超越した存在の人!」
(・・・・・・はい?)
亜美を指さした。
「彼女を超越!?」
知佳と有希よ真奈美は目を丸くして亜美を見た。
「ちょっと、絵里っ!!」
真紀は絵里の口を塞いだ
「真紀ぃ何言ったのさ・・・。」
亜美の顔は引き攣っていた。
「ごめんごめん、でも2人の仲の良さは異常でしょ!噂立つのも仕方ないよ~、中学のメンバーしか2人の関係理解して無いじゃん。」
噂が立つ事への肯定意見。
最近のモヤモヤが少し晴れた気がした。
「言われてみるとそうかも。何か、別に誤解されてても問題ない気がしてきた。」
「そういう発想に行く!?」
有希は思わず突っ込んだ。
「まぁ、お互いがそれでいいならいんじゃない?最終的にラブる気があるなら♪」
何か裏のある笑みを浮かべる真奈美。
「それは無いけど・・。」
「じゃぁ、誤解されるなんて絶対ダメに決まってんじゃない!彼氏持ちってなったら、本当の彼氏出来なくなっちゃうよ。」
一般的には正当な意見だが、未だ恋愛に興味が無い亜美にはあまり響かなかった。
(・・・それが問題なの?)
「ねー、彼女もどきさんは、洋介と本当に何でも無いんだ?」
(・・・彼女もどき!?)
「亜美です・・・。なんでも無いです。家族ぐるみの付き合いなだけです。」
絵里の質問に淡々と答える。
「ふーん。じゃあ一緒に登校とかやめた方がいいんじゃない?」
人差し指を立て、満面の笑みで亜美を見る絵里。
「絵里なんで〈汗〉?」
また余計なことをしゃあしゃあと言って・・・と、困った表情の真紀。
「だって、洋介に彼女が出来ないとしたら絶対、亜美ちゃん原因だもん。亜美ちゃんは良くても~洋介巻き込んじゃいけなくない?」
絵里は悪気のない顔で真紀に言った。
「そ、そーなのかな・・。」
亜美は不安そうに知佳に聞いた。
「・・・どーだろ。洋介君も否定しなかって言うし・・。」
「亜美気にしなくて大丈夫だよ、中学の時だって洋介告られても断ってたし。」
真紀の言葉に耳を疑う亜美。
「そーなの〈驚〉」
「えっ知らなかったの!?」
亜美のリアクションに逆に驚く真紀。
「えっ洋介ってモテたの?」
コクン。
「おい女子集まれーーー」
「あっ、女子の番だ!行こう!」
「う、うん。じゃあ真紀また!」
「うん。体育頑張れ・・・。」
(・・・えっ洋介ってそーゆーこと話さないんだ・・・。)
「ねぇ、真紀。あたし洋介って亜美ちゃんのこと好きなんだと思うんだけど・・・。」
「そうだと思ってた頃もあったけど、洋介の考えてる事分かんな過ぎて・・恋愛感情とかあんのかな?」
2人は首を傾げながら、4人を見続けた。
「ちょっと、やっぱり洋介君イケメンでしょ!」
知佳の勝ちほこった顔
「なんで、そーなるの。」
「イケメンかどうかは置いといて、モテたって言ってたね中学の時。」
「それでも、誰とも付き合わないってさぁ・・・。」
3人は亜美を冷たい視線で見つめた。
「何!?」
冷ややかな視線に違和感を感じる亜美。
「もしかして鈍感な感じ?」
クスッと笑う真奈美。
「話聞いてると、亜美って恋愛脳未発達ぽいもんね~。」
「イケメンに見えて無いあたりからしておかしいよね。」
(おいっ何か腹立つことシャーシャー言ってないですかい?)
3人が言いたいことは何となくピンと来ている亜美。
「洋介があたしを好きとかって話しでしょどーせ?」
軽い溜息をつく。
「うん。何だぁ気づいてるの?」
3人はニヤニヤした。
3人をチラ見し
「無いよーそれ。中学の時も言われて面倒だから本人に聞いたんだよね。」
「本人に聞いた〈驚〉」
「意外と大胆なのね・・・。」
「あたし出来ないわ・・・。」
大胆な亜美の行動に目をパチクリさせる3人。
「だって、勝手な想像であーだこーだ言われてもね・・・。洋介にあんたあたしのこと好きなのか?って聞いたのよ昔。」
「で?なんて?」
「別に。って」
ゾワワワワ・・・
3人は円状に座り込んで頭を抱えた。
(・・・な、何なの???)
亜美はその様子を荒んだ表情で見下していた。
「ごめんなんか・・・ごめん」
知佳が立ち上がって亜美の肩に手を添えた。
「は?」
「ドンマイだよ亜美・・・。」
有希も知佳と同様に手を添えた。
「だから何が?」
「亜美、あんた真っ直ぐ過ぎると辛いこともあるよね〈泣〉」
「だからなんなのよーーーー〈怒〉」
「だって・・・意味なく振られるって辛くないっすかぁぁぁ・・・。」
3人わ憐れみの表情で亜美を見た。
(はぁぁぁぁぁ〈怒〉)
亜美は怒りに包まれながらも、どこか寂しい気持ちが心にあるように感じていた。
亜美にとって一番身近な存在の洋介。
でも知らない事がたくさんある事を知ったからだった。
(・・・人の事100%知るなんて、あり得ないのに。何でだろ・・。このモヤモヤ。)