初めて×初めて=Y
将也と遊ぶ約束の土曜日。昨日の亜美と洋介のことで、心がざわついたままの将也。2人きりで乗った観覧車で・・・。
《東平駅》
「おはよう!」
「おはようじゃないよー3人とも遅いよー。」
「だって真奈美がおっそいんだもん。」
「えへへ~ごめーん♪」
今日は土曜日。
将也達と遊ぶ約束をしていた日。
「でも何で約束の1時間前に集合?」
まるで昨日何も無かったかのような亜美。
「てゆーか、亜美大丈夫なわけ?」
眉をひそめて心配そうに聞く知佳。
「うん、何か泣いたらすっきりしちゃって〈笑〉ほんとごめんね~」
少し恥ずかしそうに言う。
「いいじゃんいいじゃん♪今日はとにかく楽しもうよぉ♪」
「そーだね、いい気分転換になるんじゃない。」
真奈美と有希は笑顔で話す。
「それにしても、真奈美気合入ってるねぇ。」
メイクも服装も今時のモデルのような真奈美の姿に感心する亜美。
「可愛いでしょ?」
「うん。可愛い♪」
「皆の私服初めて見るから新鮮なんだね、亜美は。」
「亜美も意外と女の子な格好だよね~・・、化粧も上手だし。」
ジロジロ亜美を見る有希と知佳。
「あっ、これは洋介のお姉さんが朝来てやってくれたんだよ。服のチョイスもね。」
苦笑しながら顔を掻く亜美。
(洋介のお姉さん・・って。)
有希と知佳はゾッとした表情をして、無言で見つめ合った。
「えー洋介くんってお姉さんいるの~??」
「そっか、真奈美は知らないんだっけ。お姉さんと妹がいるんだよ。」
「マジ~?あの洋介くんからは考えられないセンスの良さだねぇ~♪真奈美気が合いそう♪」
ウキウキしている真奈美。
(やっぱり同類なのかッ!!)
有希と知佳は目を大きくした。
「でさぁ~何でこんなに早く集合したの?」
「そうそう♪まずは情報共有しようかと思って♪」
「情報の共有??」
カバンからおもむろに手帳を取り出す真奈美。
「えっとねぇ、若村将也2人兄弟の次男で佳澄中学出身。性格は、チヤらそうに見えて意外と真面目だけど女好き。ガールフレンドはたくさんいるけど、彼女って固定の子の存在は確認出来ず。家柄は祖父が大企業の会長で、お父さんがグループ企業の社長だから結構なお坊ちゃま♪ちなみにミッポの母と将也くんの父は兄弟!つまり2人は従妹♪兄、遼一は3つ上で東平高校野球部キャプテンで、今は国立明星学院に在学中♪」
真奈美はドヤ顔で3人を見た。
3人は、何を言っていいのか分からない状態でポカンとしていた。
「あれ?情報足りない?」
首を傾げる真奈美。
「い、いや・・あのさその情報どうしたの・・?家柄まで・・。」
戸惑いながら聞く有希。
「えっ?あんな感じの男なら調べるのなんて超簡単だけど~♪」
「将也くんて、美歩と従妹だったんだぁ〈驚〉」
喰いつく亜美。
「いや、それも驚きだけど、何でそんなことまで調べてんのあんた?」
「やっぱりステータスって大事でしょ~、将也くんがレベル低い男なら、今日来る人達にも期待できないけど~、将也くん結構レベル高くて安心したぁ~♪」
女子オーラ全開に微笑む真奈美。
「じゃぁ。真奈美的には将也くんはアリって事?」
知佳は、さめざめした目をして聞く。
「うん。全然アリ。見た目も問題ないし、まぁ後はフィーリングが合うかどうかだけど~♪」
「ねぇ、今の真奈美の言葉聞いて亜美の率直な感想は?」
有希はおもむろに亜美に尋ねた。
「そーなんだぁって感じ?かなぁ。でも真奈美が楽しそうで良かったって思うよ〈笑〉」
ニコニコしながら真奈美の姿を見て言う亜美。
(やっぱり、将也に恋心は無いんだな~・・。)
優しく微笑む有希。
《集合時間》
「あ、亜美ちゃん達もう来てたんだ~♪」
〈おぉ、あの子可愛い~!〉
〈あれが亜美って子かな?〉
〈どーだろ。〉
手を振りながら、笑顔で近づいてくる将也達。
4人も反射条件で笑顔を作る。
(あ・・・。)
将也は亜美の前に立つなり口元を抑えた。
「おい、将也早く紹介しろよ~♪」
「君が亜美ちゃんでしょ?」
一人の男が真奈美を指さしながら笑顔で話しかけた。
「え?真奈美は亜美じゃないよ~♪」
笑顔で否定する真奈美。
キュンキュン
その笑顔に目がハートになる。
「あ~そうなの、あっ真奈美ちゃんて言うんだ~♪」
「亜美ちゃんはこっちだよ。」
将也は白けた面構えで、亜美を指さした。
「そーなの?」
(・・・なんでこっちじゃなくてそっち?)
釈然としない様子。
「なんかごめんね~、とりあえず紹介するわっ。こいつが陣内一豊。カズって呼んで。」
「将也と中学の同級で、今、華央高校にいまーす♪」
(華央・・星城と同等の私立・・金持ち高校♪でもちょっといまいちかなぁ)真奈美
(見た目のチヤらさは将也と同等・・。)知佳
(・・真奈美にロックしてるなこいつ。)有希
(頭いいんだなぁ・・。)亜美
身長170センチ程度で、茶髪のチヤラ男。
「こっちが、春日大和。ヤマトって呼んで。」
「どーも、俺もカズと同じ。今日は宜しく。」
(爽やか系?亮タイプっぽいかなぁ・・♪)真奈美
(一番いい感じじゃん♪)知佳
(あっ知佳笑った。)有希
(この人も凄いなぁ。)亜美
「こっちが、唐沢祥平。ショウって呼んで。」
「俺は、星城高校。宜しく。」
(う~ん、顔は一番タイプかなぁ~♪スタイリッシュだし~♪)真奈美
(星城?楓さんと同じ高校。)知佳
(亜美兄と同じ高校かぁ。公立ってとこが安心感あるわ・・。)有希
(楓兄と同じ高校だぁ・・・。)
「最後に、俺が若村将也ね、将也って呼んで♪」
将也は、有希と真奈美に笑顔で言った。
「女子も紹介してよ♪」
陣内がニコニコしながら将也に言う。
「じゃぁ、亜美ちゃん紹介してくれる?」
「うん。私は、日向亜美です。東平高校で、あっみんなも一緒。亜美って呼んで下さい。」
(亜美・・!)
一瞬将也の顔が曇った。
「こっちが、相沢知佳、えっとぉ・・・」
「知佳って呼んで。」
言葉を詰まらせる亜美に愛の手を出す知佳。
安堵する亜美。
「それで、こっちが金沢有希。」
「有希って呼んで下さい。宜しくね。」
「それで、こっちが前田真奈美。」
「真奈美でぇす♪真奈美って呼んでね♪」
上目使いで自己紹介をする真奈美。
(か、かわいい~!)
カズはもうメロメロ。
「じゃぁ、早速出かけようか♪」
笑顔で亜美に言う将也。
「うん。でも今日どこに行くの?」
「これ♪」
将也はポケットから、3枚のチケットを取り出した。
「あぁ、それっ!!」
知佳は将也のチケットを見て目が輝いた。
「アイランドパークのチケットじゃん。」
凄いといった表情で、有希が言う。
「やったぁ~真奈美行って見たかったんだぁ♪」
「遊園地なんて久しぶり。」
想像していなかった、場所に亜美も嬉しそうだった。
「良かった、喜んでもらえて♪」
「じゃー行こうぜぇ!」
カズは真奈美に微笑みかける。
有希と知佳の所には、自然とヤマトとショウが付いた。
アイランドパークまでは、電車で40分。
その間、皆バラバラに会話を楽しんでいた。
「アイランドパーク楽しみだなぁ♪」
「知佳は遊園地好きなんだ?」
楽しそうに言う知佳に、笑顔で聞くヤマト。
「うん、絶叫系マジ好き!」
「あたしはあんまり得意じゃないけど。」
笑顔ながらも、困ったように言う有希。
「俺も。」
ショウは無表情で、有希に同意する。
「ショウも苦手なら良かった。」
安堵の表情をする有希。
「ヤマトは?」
「俺は全然平気。一緒に楽しもうね。」
爽やかな笑顔に頬を赤らめる知佳。
(やっばい・・こいつ長谷と同類か?無意識に相手をドキドキさせるとこ・・。長谷には全くトキメカないのに〈汗〉)
遊園地トークで盛り上がり始めた、ヤマトと知佳を横目に、ショウと有希は2人で話始めた。
「苦手なのに何で今日来たの?遊園地って分かってたんでしょ?」
「まぁ、ノリってやつ。将也のお気に入りも見ていたかったし。」
「亜美のことかぁ。将也って友達にそーいう話するんだね。」
「いや、あんまりしないよ。たぶん今回は珍しくマジなんじゃん?」
「珍しく?」
「でもまぁ、何であの子何だろうな。」
ショウは楽しそうに亜美と話す将也を見て言った。
「そうね、何で亜美なんだろうね。」
ショウの言葉で、改めて有希も疑問に感じた。
「ねぇ将也、そのチケットどうしたの?」
「これ?ココの遊園地知り合いが経営してて、ただで貰えんの♪」
「凄いね~・・。」
「別に俺が凄い訳じゃないよ。」
「そっか〈笑〉将也は乗り物何が好き?」
「俺は~・・亜美ちゃんは?」
「あたしは、ジェットコースターも好きだし観覧車も好き♪遊園地の雰囲気が好きかな!」
「分かるっ俺も!いいよな、あの全てが楽しそうな雰囲気♪」
「そうそう、昔はよく洋介一家と行って、女3人で兄と洋介連れまわしたっけ〈笑〉」
思い出しながら一人笑う亜美。
将也の表情が笑顔から、真顔に変わってゆく。
「洋介ってね、」
「亜美ちゃん!」
亜美の話を遮りる将也。じっと亜美の目を見ていた。
「え何?」
目をパチクリさせる亜美を見て、将也はハッとした。
「あ・・いや、そう!俺も亜美って呼んでイイの・・かな?」
視線を斜め上にずらし、恥ずかしそうに言う将也。
「アハハ、どーしたの?何か将也らしくないねぇ。いいよ亜美で。」
今までと違う一面を見た感じがして亜美は思わず笑った。
「おい、笑うなよ~〈照〉」
「ごめんごめん、ちょっと驚いちゃって〈笑〉」
楽しそうに笑う亜美を微笑ましく見つめる将也。
「あのさ、ついでにもう一つお願いいいかな?」
「何?」
「今日は、ここに居るメンバーの事だけ考えてよ♪」
将也の言葉の意味が分からず首を傾げる亜美。
「ほら、洋介の事とか。ショウとかカズとかヤマトとか分かんないじゃん!内輪トークになっちゃうし。」
「あ~そういう事ね!そーだね、分かった。」
納得した亜美に安堵しする将也。
「真奈美は、将也と仲いいの?」
「え~まともに話すの今日が初めてだよぉ~。」
常に笑顔が絶えないカズと、ずっと猫を被り続ける真奈美の会話。
「真奈美モテるでしょ?彼氏いるの?」
「今はいないのぉ。カズは?」
「俺もいないんだよ~♪」
「ねぇ、カズって、長男でしょ?」
「え、うん何で分かったの?」
「名前に一が付いてるから~♪」
(な~んだやっぱ長男かぁ~アウト~。)
心の中で、カズを見切った真奈美。
「何で?」
「ううん♪何となくそう思っただけぇ~、他のみんなは兄弟とかいるのかなぁ?」
「えっ、うん将也は2人兄弟の次男で、ヤマトは姉がいるから次男、ショウは、男3人兄弟の長男だよ。」
「へ~すごーい、カズって皆の事良く知ってるんだね~♪」
(ってことは、将也かヤマトってことかぁ~♪)
胡散臭い真奈美の笑顔が、天使の笑顔に見えるカズ。
「まぁね~♪」
《アイランドパーク》
「キャー着いたぁ♪」
「知佳ぁ何から乗るぅぅ??」
手を取り合いはしゃぐ、亜美と知佳。
「はしゃぐね~〈笑〉」
有希は2人の姿を見て呆れながらも楽しい気持ちになっていた。
「俺のど乾いたんだけど。」
ショウが将也に言う。
「マジ?じゃぁちょっと売店いくか。」
「つーか、別行動の方がいいんじゃね?」
「別行動?」
「将也とヤマトとはしゃいでる2人との4人と、俺とカズと有希と真奈美って子の4人。」
淡々と言うショウ。
「何で?」
「俺と有希は絶叫系乗らねーし、たぶんあの真奈美って子も乗り物興味無さそうだし。」
「あぁ、そっか。じゃあ、何かあったら連絡取り合うか。」
「そうだな。」
「ちょっと聞いて~。」
将也が全員を呼んだ。
「何?将也♪」
ウキウキモードのカズ。
「ここから別行動しよーと思うんだけど~♪」
「別行動?!」
「絶叫系大好き班と、まったり班的な♪」
「さんせーい」
有希は即座に同意した。
「皆がいいならいいよね、知佳?」
「うん、全然オーケー。で、どう分かれるの?」
「絶叫班が、俺とヤマトと亜美と知佳で、まったり班が、ショウとカズと、真奈美と有希でどう?」
「え~真奈美絶叫班がいいなぁ♪」
(狙い目と離れちゃ意味ないじゃん♪)
「俺もっ絶叫班がいい!」
すかさず、手を挙げるカズ。
「有希、俺と2人でもいい?」
「うん、あたしは構わないよ。」
「じゃぁ、2対6になっちゃうけど、気にせず行こうか♪」
「有希いいの!?」
「うん、乗りたくない物に付き合うよりは、好きな物に乗りたいから。」
「そ、そう。じゃぁ何かあったら電話してね。」
「分かった。じゃぁ楽しんできて。」
「うん。」
6人はウキウキで去って行った。
「じゃぁ、俺らも・・どうする?」
「そうね、カフェに行ってコーヒー飲みたいなあたし。」
「俺も。」
「気が合うわね。」
《絶叫班》
「なーアレ乗ろうぜ!」
「いいね~ヤマト~♪」
「行こう行こう!!」
ハイテンションな、亜美と知佳とヤマト
「すごーい、遊園地であんなハシャグ高校生初めて見たぁ~。」
真奈美は冷静だった。
「真奈美は行かないのか?絶叫乗りたかったんだろ?」
将也が問いかける。
「将也こそ~。」
「俺は、楽しんでる人見るのが好きなの♪」
「へ~そーなんだぁ~。で、カズは何でこっちに来たの?ほら、乗ってきなよ~♪」
「えっ・・。」
明らかに動揺するカズ。
「あたし~絶叫系に意気って乗る人カッコいいと思うんだよねぇ♪ヤマトってかっこいいね~♪」
うっとりヤマトを目で追う真奈美。
その姿を見て、カズは
「俺も乗りたかったんだーーー!行ってくる~!!」
走って、3人の元へ。
(ちょー単純・・・。)
「真奈美って小悪魔だね~〈笑〉」
本性を見切ったかのように言う将也。
「そんなこと無いとおもうけど?」
不適な笑みを浮かべる真奈美。
「今日は何?俺の監視?それとも男探しが目的?」
「どっちも微妙に違うかなぁ。別に、亜美が誰とくっついてもイイと思ってるしあたし。それに、男に飢えてる訳じゃ無いしねぇ♪」
「そーなんだ、じゃぁ俺の味方になってくれるの?」
疑うような笑顔で真奈美を見る将也。
「う~ん。どーかな?見たでしょ昨日の亜美。」
「あぁ。」
「勝ち目ないんじゃない?何でそんな勝負する気になるのか真奈美には理解出来ないなぁ。好きって感情なんて、永遠じゃないよ~♪」
「ハハ、意外と冷めてんだね、真奈美って。」
「冷めてんじゃ無くて、現実見てるの~。好きとか嫌いで、傷ついて泣いたり笑ったりなんて意味無いもん。結局最後は、どれだけ彼氏が自慢できる人かってこと。自分のプライドが傷つかない事が大事なのよ~♪」
笑顔で話す真奈美だが、変な違和感があった。
「なんか分かる気がする〈笑〉でも、何でだろ?今は俺どうしても亜美が欲しいって思うんだよね♪」
「なら頑張ればいいだけの話じゃない♪」
「へーそんな意見もするんだ。」
「別に、他人の気持ちが分からない訳じゃ無いの~、自分には必要ない感情なだけ、頑張ってダメならきっと誰かが慰めてくれるでしょ。」
何の裏も無い真奈美の微笑み。
「ふっ〈笑〉」
「何笑ってるの?」
「いや、何でもない。もし俺が振られたら真奈美慰めてくれる?」
笑顔で問いかける将也。
「いいけどその時は、真奈美の彼氏になる気でいてね♪」
「は?」
「将也のビジュアルとステータスは、真奈美の合格ラインだから♪そこに愛は無いけどね~♪」
「そーゆー男の選び方もあるってことね〈困笑〉まっ俺は今は夢見る事にするよ♪」
《まったり班 カフェ》
「今頃キャーキャー言ってんだろうね〈笑〉」
「あぁ多分な。でもたしかカズ高いとこダメだったと思うんだけど。」
「じゃぁ今頃、真奈美の餌食になってるわね・・。」
「やっぱりあれ猫かぶってたんだ。」
「男って気づかないよね、そーいうのに。」
「全員って訳じゃねーだろ〈笑〉」
「それもそっか。」
空気感が似ている2人は、緊張感など無くまったりと会話を楽しんでいる。
「特に将也はそういうのに敏感だし。」
「へ~意外。」
「だからあいつ彼女って作らないんだよなぁ。」
「じゃぁ何で急に亜美なんだか・・。」
「有希は、好きって必ず理由があると思う?」
「理由・・?」
有希はワタケンの事を考えていた。
(・・理由?あったかな。何が?どこが?どうして?いつ?好きになった理由・・思い出せないから・・本当に好きなのか・・気持ちに自信が持てないのかも・・。)
「有希?」
「あ、ごめん。無いかも。」
「有希も好きな人いるんだ。」
カァァァ
「たぶんいる・・。」
「有希は素直なんだな〈笑〉」
「何よ、バカにしたければすればいいじゃない〈恥〉」
「褒めてんの。たぶんでも好きなら、たぶんの好きにのっかて見るのも有りなんじゃない?」
「どーいう事?」
「失ってから〟たぶん〝が消える程辛いこと無いから。」
(なんか説得力の感じられる言い方するな。)
「ショウはそういう経験あるんだ?」
「まぁね。」
「今でもその人好き?」
「いや、俺は諦めた。かなり年上の人だったし。もう会うことも無いから。」
「そうなんだ。今は彼女いないの?」
「いない。結構勉強大変だし。」
「あっ、そーだ星城って言ったよね高校?」
「そーだけど、それが何?」
「亜美のお兄ちゃんも星城なんだよ、3年だけど。日向楓って知らない?」
「日向楓・・どっかで聞いた・・・あっ生徒会長。」
「生徒会長!?」
「あぁ、入学式のとき代表挨拶してたから・・。」
「凄いとしか言いようがない・・楓さん・・。」
あまりの衝撃に眉をしかめる知佳。
「あぁ、生徒会長クラスだと、成績も優秀なはずだし。すげーな。」
「う・・・ん・・。」
《絶叫班》
「キャー――ァァァ!!!」
「イヤァァッァーーー!!」
「アハハハ~」
「ううわぁぁぁぁあぁぁぁ」
プシュウ――
「はぁ、はぁ。めっちゃ怖かったぁ〈嬉〉」
「やばいね・・マジ最高〈喜〉」
「あと5回ぐらい乗りて~♪」
「・・・はぁ・・はぁ・・」
「すっごい声だったね~♪」
「真奈美も乗ればいいのにぃ♪」
「あたしと将也は見てるの楽しむ専門だもんねぇ~♪」
(そんなの乗ったら、髪の毛乱れちゃうじゃん。)
「まぁね、楽しそうで何よりだよ~。」
「ねぇヤマト、次あれ行かない!?」
「うっわめっちゃおもしそーじゃん!ほら、2人も行こうぜっ」
目を輝かせるヤマト
「あーあたしちょっと休憩〈汗〉」
「お、俺も・・。」
「そっか、じゃあ行くぞカズ!」
「えっ、いや、俺も休憩~・・・」
カズはヤマトに連れてかれてしまった。
「ほんと凄いねぇ、あの3人!あっ、将也、亜美にジュース買ってきてあげたらぁ?」
「そーだね、あれだけ大声出せばのど乾いたでしょ?」
「大丈夫だよ~全然平気、自分で買いに行けるから。」
余裕の表情で遠慮する亜美。
「いいって、ちょっと待ってて。」
そう言って、将也は行ってしまった。
「なんか悪いなぁ・・。」
「いいんじゃない?あーゆー男の親切は、ありがとうって素直な方が男は喜ぶんだからぁ♪」
「そーなの?」
「そういうものなの♪あっ、有希から呼び出されてたんだった、ちょっと行ってくるね♪」
「えっ、有希たちどこにいるの?あたしも行こうかな?」
「何言ってんの、将也がせっかく飲み物買って来てくれてんだからぁ、亜美はここでお留守番♪じゃあね~」
真奈美は笑顔で去って行った。
(感謝しろよ~将也♪)
真奈美は、亜美から見えない位置まで行くと、有希にメールし合流した。
「お待たせっ♪あれ真奈美は?」
「有希に呼び出されたって、行っちゃった。」
「そう。はい、これどーぞ♪」
「ありがと。」
(俺に気を使ったのか・・・?どっちにしろやっと2人になれた♪)
半信半疑ながら喜ぶ将也
「どうする?うちらも有希たちと合流する?将也も見てるだけなのもさすがに飽きたんじゃない?」
「いや、全然大丈夫。楽しいから♪」
「そう?」
「あ、じゃあさアレ乗らない?」
指をさす方向には観覧車
「いいね、絶叫ばっかだったからちょうどいいかも。」
「決まり、行こうか。」
「うん」
「気を付けてお乗りください。」
「観覧車なんて、何年ぶりだろ~♪」
「俺も。」
向かい合って座る2人
ドキドキ・・・
(やべっ、何か緊張するな・・。私服のせいかな・・化粧のせいかな・・いつもより可愛く見えるし・・。)
「どうしたの?怖い?」
「怖くないよ〈困〉」
「そう、汗かいてるけど・・?」
「それは、ちょっと緊張してるんだって〈恥〉」
窓に頬杖をついて外を見る将也
「緊張!〈笑〉」
亜美はその言葉に笑った。
「亜美は、こんな狭い空間に男と2人で緊張とかしないの?」
「へ・・・?」
その言葉を聞いて、男と密室に2人きりと言う事に緊張感を覚えた。
「い、いやでもね~・・辞めてよそーいう事言うの!こっちまで緊張してくるからぁ~〈焦〉」
恥ずかしさのあまり、窓にへばりつく亜美。
その後ろ姿を黙って見ている将也。
昨日の洋介と亜美の姿が浮かんできてしまう。
「ごめん、変なこと言った♪」
「ほんとだよ~もう。」
「でも、俺亜美の事好きだから緊張するのはマジだから。」
(え・・・?今何て・・聞き間違い・・?)
窓の外を見たまま固まる亜美。
「亜美?」
ドックン・・・
いつもと違う声のトーンで亜美を呼ぶ将也。
ドックンドックン・・
「・・えっと・・・。」
心臓の音が大きくなる。
「別に今すぐどうこうって事じゃ無くて、俺の事そういう目で見て欲しいって事が言いたくて・・。」
顔を見ていないけれど、真剣な気持ちが伝わってくる。
「・・・何であたしなの?」
「分かんない。好きって思った人が亜美だっただけだから。」
「理由になって無いね〈苦笑〉」
「俺もそう思う。でも、亜美に隣に居て欲しいとか、誰にも渡したくないとか、今まで感じた事ない嫉妬心があるんだ。」
「と、友達じゃだめなの?」
「友達としか見れない?だったら、俺は友達として亜美が他の男にとられるの見てられるほどお人好しじゃないんだ。ごめん。」
(あぁ、早まっちゃったよ俺。真奈美コース確定かな・・・。)
(どうしたら・・・いいんだろう・・・。でも分からないなら、やってみて答えださなきゃって昨日決めたんだ・・あたし・・。)
「分かった。努力してみる!」
亜美は笑顔で振り向いた。
「マジ?」
予想外の回答に喜ぶより先に驚く将也。
「うん。でも男とか女とか好きとか良く分からなくて〈恥〉ただ、色々あってそういう事と向き合おうって決めたんだあたし。」
恥ずかしそうなのに凛としている亜美の顔は真っ直ぐな目をしていた。
「ありがと、嬉しい。」
片方の足を曲げ、膝に顔を伏せる将也。
「でも、ほんと何も変わらないかも知れないし・・あんまり期待しないでね。」
「いいよ、俺の生まれて初めての告白受け入れてくれた事だけでも・・マジ嬉しいから♪」
「えっ・・そうなの?」
「そうだよ?何で驚くの?」
(そっか、告白される側の人間か・・。)
「何でも無い!あたしも告白されたの初めてだし!」
「じゃあお互い初体験だね~♪」
「何か言い方がイヤッ!!」
(そーいう事には敏感ッ!?)
いつの間にか普通の空気に戻っていた。
観覧車も下に着き、乗る時と変わらない2人で降りた。
何かを変えるには、自分が変わる事。
そう思った亜美は
(これからは、将也が自分にしてくれること全部を特別だと思う事にしよう。)
と思った。
《まったり班》
「将也と亜美2人にしたの?真奈美がぁ?」
「うん。何か変?」
「いや、何か意外で・・・。」
「将也は手を出すタイプじゃないから、別に大丈夫だと思うけど。」
「こっちも亜美の事だから変な事が起きるとは思ってないよ〈笑〉」
「そうなの?」
「うん、亜美に限ってエロイことは絶対ないかなぁ~♪」
《絶叫班》
「次あれー!」
「今度はあれだー!」
キャッキャッキャキャッ♪
(・・・もう・・無理・・。)
そして、それぞれの時間を過ごし土曜日は終わっていった・・。
知佳と有希と真奈美が、観覧車での事を聞いたのは月曜日の昼休み。
3人は急発展にかなり驚いたが、亜美の前向きな考えに頑張れの言葉を贈った。
あれだけ将也を嫌っていた知佳も、将也の真っ直ぐな想いを感じ取り何も言わず、頑張れと言った。
将也の方も、昼休みに洋介、彗、亮に告白したことを伝えた。
洋介も彗も日曜日に選抜試験が終わって気が抜けている時。
一難去ってまた一難といった様子の彗に対して
洋介は「分かった。」と一言。
亮は、金曜日の亜美の様子がおかしかった時からずっと、いつもより無口な洋介が気になっていた。