幼馴染みーY=恋
体育祭準備の買い出しで、洋介と舞の相合傘を見た亜美。非日常の光景に動揺する・・・。
6月中、各学年ごと、曜日の指定された午後の授業が体育祭の準備にあてられる。
1年生は金曜日の午後。
《1年3組 お昼休み》
「あ~、午後は楽だねぇ~♪」
椅子に座りながら知佳が背伸びをする。
「そーだねぇ、体育祭準備で授業じゃ無いしね。」
「今日は何するの?」
「仮装用の生地買いに行ったり、応援合戦の衣装作りとか、小物作りとかって言ってた。」
「何で有希そんな知ってるの?」
「朝、トシに聞いたんだよ。」
有希はトシを指さしながら言った。
「買い出し行きたいな~真奈美♪」
「どーせ準備面倒なだけでしょ。」
見透かした表情で真奈美に言う知佳。
「買い出しは、理沙と舞と由依と美歩と男子数人で行くみたいだよ。」
「なんでぇ~」
真奈美は不服そうに言う。
「仮装行列が理沙達が担当で、応援合戦が美歩だからって話。」
「なんか珍しくない?理沙達が仮装行列担当になるとか、どんな風の吹き回し。」
何か釈然としない知佳。
「そーなの?」
亜美は良く分からない様子。
「確かにねぇ~男の為になら何でもするって感じだけどぉ、それ以外にやる気出すと思えないなぁ~。」
「もしかして、亮が仮装行列班なんじゃない?」
「あーそーかも!なら納得だわ。」
「納得~。」
知佳と真奈美はあきれ顔で、納得している。
「じゃぁ、洋介くんも仮装班なんじゃない?」
知佳が亜美にふった。
「どーだろ?聞いてないから分かんないなぁ。」
「じゃー今メールで聞いてみてよ!」
笑顔で亜美に詰め寄る知佳。
「えっ?何で?」
「だって、本当に理沙達がその為に仮装班になったのかきになるじゃん!」
知佳は、少しでも洋介と亜美を発展させようと意気込んでいる。
「そんなに気になるもの?知佳が亮くんに聞いた方が早いんじゃない?」
「いいからっ!」
「でも、洋介メールとかいつも気づかないから・・・。」
困る亜美・・。
「知佳ぁ、亜美困ってるよ。」
有希が半笑いで言う。
「強引すぎ~♪」
真奈美は2人のやり取りを笑顔で聞いていた。
「あ、将也ならすぐ返事来ると思うから、将也に・・。」
亜美が携帯を取り出そうとすると
「やっぱりいいっ、聞かなくていい!やっぱ興味無かった!全然興味無かった!」
(なんで、あいつが出てくんのよ~〈泣〉)
知佳は、口元は笑っているが、目元は怒りに似た表情をしていた。
「・・あ・・うん。」
(知佳怖い・・・。)
《午後の授業》
「じゃぁ、買い出し班と応援合戦班以外は今ある物で小道具作り始めてくれ。」
高橋の一言で、それぞれがグラウンドや、教室で作業を開始した。
《グラウンド》
他のクラスの人達も続々とグラウンドに出てくるなか
「なんか雨降りそうな天気だねぇ。」
知佳が空を見て言った。
「夕方から雨って言ってたよ今日。知らなかったの?」
「知佳天気予報見ないの~?」
常識のように言う知佳と真奈美。
「・・・あたしも知らなかった・・・。」
「え?」
「ほら、あたしだけじゃないじゃん。亜美も知らなかったてよ~!」
知佳は亜美に寄り添い勝ち誇った顔をする。
「あ、男子が呼んでる。」
有希は少し離れた場所から、伊藤がこっちに両手を振っているのを見つけた。
「行こう。」
4人は小走りで男子のもとへ向かった。
「あれ?武とヨッシーは?」
「あいつらも買い出し班。」
高橋が答えた。
(良かった・・・〈喜〉)
自然と笑顔になる真奈美。
「じゃぁ、とにかく練習はじめようぜ。」
「うん。」
応援合戦班は練習を始めた。
《買い出し班 商店街》
「理沙、あそこ。」
由依が指さす方向には1組の買い出し班の姿があった。
「行こう!」
舞が理沙の手を引いて、1組のもとへ。
「おーい、どこ行くんだよー。」
金井が呼び止めるが、全く聞いていない3人。
「河合、あいつら亮たちのとこ行っちゃったぞ。」
草間 凪が迷惑そうに言う。
「えぇ。困ったわね。」
「自己中はほっといて買い出しいこーぜ、付き合ってらんねーよ。」
黒沢 隆弘も冷ややかに言った。
河合は、少し考えて
「そうね、あの子たちが行った方向からするとプラザ方面だから、備品を買ってきてもらいましょう。私たちは生地を買いましょうか。」
そう言って、河合は由依にメールで買い出しの指示を送った。
「美歩って、他の女子と何かちがうよなぁ。」
松村が尊敬するように言う。
「そーだな、河合はあんま女子特有のグループ化に興味無いよな?」
黒沢も感心していた。
「そうかしら?一人は寂しいと思うけど。」
「でも、いつの間にか数人に名前で呼ばれちゃってるし、仲良くやってんだな。」
草間は笑って言った。
「そーだぞー羨ましいだろ~!お前らも呼べばいいじゃん。なぁ美歩。」
松村は無邪気に言った。
「美歩って意外と冗談通じるんだぜ。」
「意外とで悪かったわね、武。」
河合はツンとして言った。
「あぁごめん!悪い意味じゃ無いから!ごめん!」
「冗談よ〈笑〉」
河合は口元を抑えて笑った。
その様子を見ていた、草間と黒沢は今まで見ていた河合と印象が違う為、少し戸惑いながらも好感を抱いた。
「マジ、河合ってなんなの?ウケんだけど〈笑〉」
「清楚でお堅いイメージ崩壊って感じ〈笑〉」
「イメージ何て、個人の勝手な想像にしか過ぎないのよ。」
河合の凛とした表情。
「じゃ、俺らも美歩って呼ぶかな。」
黒井が美歩に笑いかける。
「そーだな、俺、凪って呼ばれてるから凪でいいよ。こいつはタカって呼ばれてるからタカでいいんじゃない?」
「分かったわ、そう呼ばせてもらうわね。」
5人はその後着々と買い出しを行た。
《1年1組 買い出し班》
「亮、とりあえずプラザでいいよね♪」
「いいんじゃね?」
「プラザに行けば、全部揃いそうだよね~亮♪」
「あ・・うん。」
亮の両サイドには、亮に好意を抱く女子達が陣取っていた。
「なんで~亮にだけ女がベッタリなんだぁ・・。」
彗は羨ましそうにその光景を見ている。
「仕方ないだろ、亮昔からモテるんだろ?」
将也は特に興味が無い様子。
「そりゃそーだけど、女子5人中4人ってやりすぎじゃね?」
「前には、あれがいるじゃん♪」
将也は前を歩く神崎を指さした。
「何でだよっ!」
「だって、自ら手とか握ったじゃんか〈笑〉」
「あ、あれは願掛けのためだっ!」
彗はムキになって言った。
「かわいそ。神崎さん〈泣〉」
演技じみた態度で顔を両手で覆った。
「やめろー!」
弄ばれる彗。
その時
「亮、久しぶり~。」
背後から声をかける舞
その言葉に、亮を取り囲んでいた女子が一斉に振り向く。
「ま、舞?どうしたのこんなところで?」
顔を引き攣らせながら尋ねる1組の女子。
(理沙のやつ〈怒〉)
(なんで他のクラスの女子がいんのよっ〈怒〉)
女子達からは殺気が漂っていた。
「え~買い出しだけど?」
舞は挑戦的な態度。
「お前らも買い出し班なんだ。」
亮は普通に話す。
「う、うん。亮は今からどこにいくの?」
「関係ないでしょ、理沙達には。」
「亮に聞いてるの。」
「え、何でそんな喧嘩ごし??プラザだよ。」
亮は妙な空気に戸惑っていた。
「そーなんだぁ、一緒だね。」
理沙は飛び切りの笑顔を見せた。
(むかつくー!!亮のこと狙ってんのあからさま何だよっ!)
(ぶりっこしてんじゃねーよ!)
(どっか消えろっ)
イライラが募る1組女子のことなど気にもせず、ちゃっかり隣を陣取る理沙。
由依と舞は後ろをついて歩いていた。
「ねぇ、舞あれって。」
由依が何かに気づいた。
「あ。日向さんと噂の男だ。」
2人はニヤっとして、彗の所へ移動した。
「こんにわ。」
由依が笑顔で声をかける。
(こいつ確か、日向さんを連れ去った人。)
(女子来たぁぁぁぁ〈喜〉)
彗は思わずニヤけた。
「なに?」
「ちょっと聞きたいんだけど、あの人って日向さんの彼氏なのかな?」
ボーっと歩いている洋介を指さした。
「え?洋介のこと?てか亜美の知り合い?」
キョトンとする彗。
「うん、私たち3組だから。」
舞があたかも友達といった風に言う。
「違うよ、彼氏じゃないよ♪」
将也がよそ行きの笑顔で2人に言った。
(なんだよその笑顔・・花とんでますよ・・。)
その様子に冷めた目をする彗。
「違うんだーじゃあ、日向さんがあの人好きとか?」
「何でそんな事聞くんだよ。」
彗は冷静になって、質問を返した。
「え、あぁクラスにあの人のこと気になってる子がいて、それで。」
目を泳がせながら答える由依の様子にピンときた将也は
「へ~そうなんだ。じゃあ安心しなよ、洋介と亜美ちゃんはほんと何でもないただの幼馴染みだから。」
「そっか、ならいいんだ。」
由依は笑顔で言った。
「それに、亮とも何でも無いから♪」
「え?!」
由依と舞はドキッとした表情をした。
「何?どーいう事?」
彗は全く理解出来ていない。
「な、何言ってるの?意味分かんない。ねぇ舞?」
「うん、亮の事聞いてないじゃん。」
2人は明らかに動揺している。
「そう、ならいいんだけど。亮と仲良くする亜美ちゃんに嫉妬してんじゃないかなぁって思ったもんで♪ごめんね~勘違いだったかな?まぁ、亮と仲良くしないでって言っても、亜美ちゃんは聞き入れないだろうし、だったら同じことして、同じ思い味あわせよう的な考えに至ったみたいなこと、考えてる訳ないよね~♪」
アハハと笑いながらいう将也
「ちょっと、何言ってんのバカじゃない!」
「そーよ、意味わかんないし。」
将也の態度に怒る2人
「だったら、亜美ちゃん詮索することするなよ。」
キリッとした目で2人を威嚇する将也。
始めてみる将也に彗もゾクっとした。
(・・お・・おい。)
2人は何も言わず、理沙のもとへ去って行った。
(何なのあいつ・・。)
(全部見透かされた・・・。)
「ん?どうしたの彗?顔青いぞ。」
軽く微笑んでいる将也。
「・・い、いやお前・・二重人格者か!?」
恐怖を感じる彗だが
「何言ってんの?普段怒る事無いだけで、俺だってたまにはイラッとするんだよ♪」
「何にイラッとしたんだよ・・色々言ってたけどよ。」
「亜美ちゃんの敵は俺の敵って事♪」
ニコニコする将也
「あっそ。」
《プラザ》
「由依~あと何買えばいいのぉ~・・。」
「マジ持てないんですけどぉ。」
「仕方ないよ・・、勝手に別行動しちゃったし・・。」
備品は思っていたより量が多く、荷物の重さに苦労していた。
「これで買うもの大丈夫なはずだから、学校に戻ろう。」
3人は両手に袋をぶら下げ、しんどそうに歩いていた。
プラザの入り口に着くと。
ザザザ―――
「あ、雨降ってるし!」
「最悪。どうする?」
「駅まで行ってタクシー使うしかなくない?荷物多くて傘もって歩けないよ。」
3人が相談していると。
「うわぁ雨だよ~。やっぱ天気予報当たるね!」
「ほんとだ。」
1組のメンバーも買い出しを終えて、ちょうど入り口に来た。
「大丈夫?重そうだけど?」
亮が、重そうに荷物を持つ3人に声をかけた。
「亮・・。う、うん」
頑張って笑顔を作る理沙。
「亮、いくよー。」
女子が亮を呼ぶ。
「あぁ。」
返事をして、1組の方へ向かう亮。
(亮・・行っちゃった。)
理沙は寂しそうな顔をした。
「理沙、うちらも駅までがんばろ。」
由依が理沙を励ます。
3人が歩き出そうとすると。
「荷物持つよ。」
亮が、将也と洋介を連れて戻って来た。
「え?」
理沙は亮の優しさに一瞬泣きそうになった。
亮の手を見ると、1組の買い出しの荷物も持っていた。
「でも、亮たち荷物持ってるし・・。」
「大丈夫。理沙達よりは力あるつもり〈笑〉」
優しい笑顔。
そして、理沙の右手から袋を一つとった。
「あ、ありがと。」
「どういたしまして。あ、由依と舞の荷物も、そこの2人に持たせていいから。」
「う、うん。」
(げっ・・あいつかよ・・。)
(微妙に気まずいんですけど・・。)
由依と舞はうつむいたままたたずんでいる。
「ほら、早くかしなよ♪手痛くなるよ。」
将也は何事も無かったかのように、由依に手を差し伸べた。
「え・・でも。」
気まずそうに視線を落とす由依
「たく、そんな事いってると・・・」
ヒョイッ
えぇっ!!!
将也は由依の脇の下に手をやり、軽々持ち上げた。
「いやぁぁぁ!!何してんのよぉぉ!!」
由依は足をバタバタさせた
「アハハ。」
将也は楽しそう。
「おい、将也何してんだよっ!」
亮は驚いて、将也に注意する。
ストン。
「だって、荷物渡してくれないから~、本人ごと運ぼうかと〈笑〉」
「バカっ変態!!」
由依は赤面しながら怒っている。
理沙と舞はあまりの衝撃に目が点になっていた。
「大丈夫か由依?ごめんなぁ。」
亮が心配そうに謝る。
「べ、別に・・亮が謝ることじゃないし。」
「そーんなんだけど・・、とりあえず荷物。」
亮は、由依の荷物を一つとり将也に渡した。
「ったく、お前何考えてんだよ〈汗〉」
「別に~〈笑〉」
洋介は無言で、舞に手を出した。
さっきの様子を見ていた舞は、サッと荷物を渡した。
「お願いします。」
「あぁ。」
「あ、荷物持つ代わりに、傘お願いしていい?」
亮は3人に言った。
「あたし達傘もってないの・・。」
慌てて返答する舞。
「大丈夫、俺らのあるから。」
亮は傘立てから傘を3本持ってきた。
「でも、傘お願いって・・?」
由依が眉間に皺を寄せて聞くと。
「俺ら両手に荷物あるから、君たちが傘さし当番だよ~♪相合傘ってやつ♪」
恥ずかし気も無く言う将也。
(えぇぇっ)
3人は顔を見合わせた。
「俺らで悪いけど、勘弁して。濡れたくないから。」
亮が笑顔で言うと。
「全然気にしてないから大丈夫!」
理沙が笑顔で言った。
「そ、そうだね。荷物まで持ってもらって、傘まで貸してもらえるんだし、ね。」
舞が由依に振ると。
「・・・・うん。」
あからさまに嫌そうな顔をする由依。
「じゃー行こう♪」
将也の一声で、ペアに分かれ相合傘をする6人。
理沙は亮に雨が当たらない様に一生懸命傘をさしていた。
「理沙、濡れちゃうからもっとそっちに傾けなよ。」
「う、うん〈照〉」
舞と洋介は、会話が弾まないままひたすら歩く。
「あのさ、日向さんの幼馴染みなんだって?」
「あぁ。」
「日向さんってどんな子?」
「あぁ。」
「そ、そう・・・。」
(会話にならないんですどっ〈困〉)
由依と将也は・・
「あのさ~・・めっちゃ雨かかってるんですけど~・・・。」
「そう、身長差あり過ぎてうまく傘させないの。我慢して〈怒〉」
「えぇ・・。」
その頃他の1組買い出し班は・・
「何で!何でっ亮が行っちゃうわけ!」
「信じらんないっ!」
「絶対計算だよっ!」
「買い出し班になった意味ないっ!」
女子は怒りが収まらない。
「なぁ、神崎ぃ。何で俺だけこっちなの〈泣〉」
「な、何でだろうね?荷物大丈夫?」
「う、うん・・。」
(なんで・・神崎と相合傘してんだよ・・俺〈泣〉)
彗は他の荷物持ちとして残されていた。
《1年3組 教室》
「意外に早く雨降って来たね~。」
「買い出し班大丈夫かな?」
「ミッポはしっかり者だから傘持っていってるよ~。」
応援合戦班は雨が降って来た為教室に戻っていた。
「あーあれ、河合達帰って来たぞ。」
教室の窓からグラウンドを見てた男子が言った。
「でも人数少なくね?」
「宮間と波崎と田中がいねーよ。」
「どーせ、亮のけつでも追っかけてんだろ。あいつも買い出し班って言ってたから。」
「やっぱり、そうだったか。」
「行動読みやすすぎ〈笑〉」
「あんだけアピールして相手にされて無いんだしぃ諦めればいいのにねぇ♪」
「それより、荷物持つの手伝いに行こう。」
亜美が3人に促す。
「そうだね。」
有希と知佳が立ち上がる。
「真奈美行かないの?」
「行かない。ヨッシーいるし。」
真奈美は険悪間たっぷりの表情で3人を見た。
「そう・・。」
3人は昇降口へ向かった。
「あれぇ、おいおいあれ見ろよっ!」
一人の男子が興奮しながら、皆を窓に呼んだ。
「何?」
「あれ、亮と理沙相合傘してんぞ!」
「マジ??」
「嘘でしょう!亮がぁ!?」
女子がザワツつき始める
「つーか、他の2人もじゃん!誰だよ相手~!?」
「えーマジぃ!?」
真奈美も興味津々で窓越しにグラウンドを見た。
「・・あ。」
(洋介くんと、将也くんじゃない・・。)
真奈美は、自分の席に戻りながら一人ニヤついていた。
(他の子と仲良くしてる様子を見た亜美ってどんな反応するのかなぁ~♪もしかして、ヤキモチやいたりしてぇ~♪まぁ可能性は低いけど・・・見に行こうっと♪)
真奈美は急いで昇降口に向かった。
《昇降口》
「買い出し班お疲れ~!雨大変だったね~。」
亜美は河合達に駆け寄った。
「えぇ、でも傘持ってたし、荷物は男子が持ってくれたから助かったわ。」
「そっかぁ、偉いね男子♪」
「でも、あと3人はどうしたの?」
知佳は分かり切った事を聞く。
「あぁ、別行動で買い出し。」
「1組と一緒じゃね?」
「へ~。あ、荷物持つよ、制服拭いたら?」
「わりぃ、サンキュウ。」
「あたしも持つ。」
有希も荷物を受け取った。
「はい、あたしも持つから貸して。」
亜美も男子から荷物を受け取った。
その時1組の彗たちが昇降口に入って来た。
「神崎ありがと。」
「いいえ。」
「彗~!知佳が声をかける。」
「おう、知佳。」
どことなく元気のない彗。
「ちょっとぉ知佳〈怒〉」
「何?」
1組の知佳の知り合いの女子が怒って知佳に詰め寄る。
「理沙の奴マジ迷惑っ!!」
「はぁ?」
「どーしたの美香?」
「有希ぃ!あいつ、うちのクラスの男子に荷物持たせてんのよ!ほらっ!」
美香はグラウンドを指さした。
「うっわぁ、相合傘!?」
「どーゆーこと?」
「知らないっ!亮の優しさに甘えてっ!ムカつく」
「あれっ、後ろ・・って。」
「あ~、洋介くんと将也よ。」
(洋介くんが相合傘!ちょっとウケる〈笑〉)
有希は笑っていた。
「何がおかしいのよ有希!!」
「ごめんごめん、うちのクラスが迷惑かけてごめんね。」
有希は申し訳なさそうに謝った。
「別に、有希に謝って欲しい訳じゃ無いけど。」
「じゃぁ、またね有希。」
「うん。じゃあ」
「ちょっと、洋介くんが舞と相合傘とか、何か企んでるんじゃな無いでしょうね!」
知佳は心配そうに有希に言う。
「えっ?それは無いんじゃない?でも、亜美どんな反応するのかな?」
「特に反応しなさそう・・・。」
「そーよね、期待するだけ無駄かぁ〈笑〉」
「ちーか、ゆーき、何話してるのぉ?」
亜美が2人の傍に寄って来た。
「ん?亮と洋介くんと将也君が、理沙と舞と由依と相合傘してるって話。」
そう言いながら、グラウンドを指さした。
「えっ・・。」
亜美がグラウンドを見ると、すぐそこに6人の姿が。
無表情で6人を見る亜美だったが、無意識に洋介の相合傘に目が行っていた。
そして何故か心がざわついているのをハッキリと感じていた。
どんどん近づいてくる6人・・。
近づいて来るほどに、亜美の視界は洋介と舞にクッキリと視点があう。
(女子と、相合傘・・・。近い距離・・。)
ボーっと見続ける亜美。
その姿から少し切なさを感じた、有希と知佳・・そして陰でこっそり見ている真奈美。
「着いた―。」
「ありがと、亮。」
「ありがと、えっと・・・」
「洋介だよ、そいつ。」
「洋介くんありがと。」
「あぁ。」
「どーもっ〈怒〉」
「いえいえ~♪」
昇降口に着いた6人
「あれぇ亜美ちゃん♪」
将也は亜美を見かけるなり、駆け寄った。
「・・・。」
亜美は将也のことが目に入っていない様子。
その視線の先には、舞に荷物を渡す洋介がいた。
(あれ・・。亜美ちゃん?)
「ほんとありがとね。助かった。」
「教室まで持たなくて大丈夫?」
「うん、あとは大丈夫。」
「ごめん・・・。」
「えっ?」
洋介は舞の左肩を見ていた。
「制服濡れたな・・。」
そう言って、さりげなくハンカチで肩を拭く洋介。
―ザワザワザワ・・・―
洋介が舞の肩に触れた瞬間、亜美の心のザワつきが大きくなって、肩に触れる洋介の手以外何も見えず、何も聞こえなくなっていた。
「亜美、亜美。」
何回か呼んだ、知佳の声でハッと我に返る亜美。
「ご、ごめん何?」
その時すでに舞の姿は無かった。
想像以上の亜美の動揺っぷりに、知佳と有希はからかうことも出来ずにいた。
真奈美も出て行くタイミングを失い、こっそり教室に戻った。
「亜美ちゃん大丈夫?」
将也が心配そうに亜美に声をかける。
「え~何の事〈笑〉」
一生懸命作る笑顔だが、周囲を心苦しくさせる笑顔だった。
「あっ教室戻ろう!」
亜美は、方向を変えて階段に向かおうとした。
タタタ・・
ドンッ
「きゃっ。」
「亜美っ」
靴箱から出てきた亮とぶつかる亜美。
「ごめん、亮君」
「大丈夫?こっちこそごめんひなっちゃん。」
「大丈夫か?」
一緒に居た洋介が亜美に声をかけると、亜美と洋介の目があった。
すると、洋介が舞の肩に触れる光景が一瞬にして脳裏を駆け巡る。
「亜美・・?」
バッッ!!
亜美は一瞬とても寂しそうな表情をして、亮の手を振り払い走り去ってしまった。
「ひなっちゃん!?」
そこに居た全員が、亜美の行動に驚いていた。
(亜美・・・。)
洋介は、一瞬みせたあの表情に戸惑いを隠せないでいた。
不安そうな表情をする洋介を凝視する将也。
有希と知佳は急いで後を追った。
亜美はゆっくり廊下を歩く真奈美を見つけ後ろから抱き付いた。
「ぎゃぁッ!!」
真奈美は驚いてそっと後ろをみると、そこには背中に顔を埋める亜美の姿。
「どうしたの・・・?」
ブンブン
亜美は背中の制服をギュッと掴み、顔を横に振るだけで、言葉を発しない。
そこへ、有希と知佳がやって来た。
「亜美。」
「大丈夫・・。」
心配そうに亜美に近づき、無言で背中は撫でる2人。
有希は、亜美が落ち着くまで一緒いいることを河合に伝え、荷物だけ教室に一旦運んだ。
その後保健室で、亜美の話を聞いた。
「ごめん・・、なんか、何だろ。自分でも良く分からないんだけど、たぶんまた幼馴染みシック何だと思う・・。」
「幼馴染みシック?」
「うん、いつか洋介にあたしより大事な人が出来て、今までと同じ様にはいかなくなるって思ったら寂しくなっちゃう事〈笑〉」
亜美は泣き笑いで言った。
3人は顔を見合わせる。
「今回は、なんか現実見ちゃった気がして、凄い動揺しちゃって・・恥ずかしいな。」
亜美はうつむいた
「なんでこんな寂しくなるのか・・なぁ・・。」
ポロポロ
制服のスカートを握りながら堪えていた涙を流す亜美に、知佳まで目が潤んでしまった。
「亜美、それ好きってことじゃないの・・。」
亜美の背中をさすりながら切実に言う知佳。
(好きって・・こういう事なの・・・。)
「そろそろ幼馴染み卒業してみなよ、ただの男だと思って洋介くん見てみたら?そしたら、これがヤキモチだって思えて、先が見えてくるよきっと。」
「そーだねぇ、まだ気持ち整理出来ないだろうし~。これからの洋介くんと自分の気持と向き合ってみたらいいんだよ♪」
3人の優しさに溢れた言葉に余計に涙が止まらなくなる亜美だった。
「うん・・。」
―ずっと・・幼馴染みだと思ってた男の子を・・急に好きと言う言葉に置き換えられるのか・・本当に分からないけれど・・本当にこれが恋というものなのかも分からないけれど・・分からない事ならば・・答えを導いていかなければ・・ずっとモヤモヤしたまま。
始めての問題は・・解き方も正解も分からないけれど・・何かを当てはめなければ・・何も始まらない・・・自分で考えなきゃ・・いけないんだ・・・。―