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運命の方程式  作者: A9
13/23

亜美+(洋介×将也)=Y

成績が悪かった事を知った愛華から亜美への電話で、心配した亜美が洋介に授業をさぼって話を聞く・・そこで洋介に今まで感じた事のないドキの瞬間が訪れる。

亜美と洋介が2人でサボったことが気になる将也はとうとう彗と亮の前で宣戦布告をする、そして洋介も・・・。

野球部の選抜試験が始まって三日経った木曜日の夜。


《日向家》


ブーーブーーブーー・・・

「おい、亜美携帯なってんぞ。」

「はーい。」

お風呂上り、台所で飲み物を注いでいた亜美。

(誰かな~♪)

リビングのテーブルの上の携帯を手に取り画面を見ると

「マナねぇだ。」

「えっ。」

楓は愛華の名前を聞いて顔を歪めた。


「もしもーし。」

『亜美~?』

「うん、どうしたの?」

『どーしたのじゃないわよ~〈怒〉どーいうことよっ!!』

「何が?!」

『バカ弟の成績よっ!62位とか契約違反でしょっ!』

愛華は洋介の成績表を見たらしく、怒りで電話をしてきたのだ。

「・・・62位だったんだ〈苦笑〉」

『まさか、亜美までそんな成績じゃないでしょうね?』

「あ、あたしは14位だったから。あはは。」

乾いた笑いをする亜美。

『そーよねー、マジあり得ないっ!そんで怒ってやろうと思ったら、最近あいつ勉強もしないで、帰ってきたら風呂、飯、爆睡〈怒〉何考えてんの!?』

「なんか今、野球部でレギュラー選抜試験中みたいだから、普段より疲れてるんだよ。

『はい?何それ?』

「聞いてないの?レギュラー選抜試験で夏季大会のレギュラーが決まるんだよ。」

『・・・そう。じゃあ、レギュラー取れなかったら、ぶっ飛ばせばいいのね。分かった、ありがと!じゃぁ。』

「えっ・・」

プープープー


「何だって?」

「・・洋介が中間考査62位だったから、部活でレギュラー取れなかったらぶっ飛ばすって・・・。」

楓と亜美は違う方向を向きながら憐れみの溜息をついた。


翌日・・・


《1限目後の休憩時間》


「ちょっと、1組行ってくる。」

「うん・・・。」

亜美は知佳に告げて、急いで教室から出て行った。

「あれ?亜美どこ行ったの。」

「急いでたね~。」

「1組行くって。」

「1組って、将也くんに会いに?」

ハッ・・

「そうでしょ、最近1組に用事あるっていったらねぇ♪」

有希と真奈美の会話で、知佳の顔は青ざめた。


《1組廊下》

「あ、真紀!」

亜美は真紀を見つけて、呼び止めた。

「亜美どうしたの?」

「洋介いる?」

「教室にいるよ、でもたぶん寝てるかな?」

「寝てる?」

「野球部連中、最近良く寝てるんだよ。」

(疲れてんだな・・。)

気の毒そうな顔をする亜美。

「起こしてくるから、待ってて。」

「ありがと。」

真紀は笑顔でそう言い、教室に入っていった。

少し経って

「洋介、ごめん寝てたよね?」

洋介は目を擦りながら、寝ぼけ眼で亜美の前に現れた。

「何?」

「あのさぁ・・。」

ふぁ~ぁ・・。

大きなあくびをする洋介を見て亜美は。

「ねぇ、授業一緒にサボろうか?」

笑顔で洋介に言った。

「・・・?」

洋介はキョトンとした表情。

「いいから。」

亜美は洋介を連れて、屋上へと急いだ。

洋介はなされるがまま、亜美に着いて行った。


《屋上》

「ちょっと待ってて。」

ピピピピピ

亜美は知佳と、真紀にメールを打った。


【授業サボるから先生に適当に言っといて。お願い。】


「誰とだよっっ!!」

教室で知佳は、メールを見て叫んだ。


1組では


「真紀ちゃん、今洋介と亜美ちゃん一緒だったよね?」

「うん、それがどうかした?若村君。」

「2人でどこに消えたの~?」

「さぁ?」

真紀は軽くあしらった。

(サボるなら屋上だよなぁ。)

将也はチャイムがなる直前に教室から出ようとしたが・・

「おーい将也、どっこ行くの?」

亮が将也をロックした。

「うわ何すんだ亮?!」

「もう授業始まるぞ♪」

キーンコーンカーンコーン

(あぁっ・・・。)

〈洋介をつけるなんて、男がやる事じゃないぞ。〉

〈わ~ったよ・・。〉

亮が忠告すると、将也は諦めた。


《屋上》


「よし、ちゃんとサボること真紀に言ったから安心して。」

「安心って・・。」

洋介は屋上の柵に背中をもたげてボーっとしている。

「昨日、マナねぇから電話来た。」

亜美も隣に座って、膝を抱えた。

「・・マジか。」

洋介の顔にさざ波のような線が入った。

「うん、マジ。62位だったんだって?」

「あぁ。」

「やっぱり高校の部活と勉強の両立は大変?」

「・・まぁ。」

「これでレギュラー取れなかったらぶっ飛ばすって言ってたよ〈苦笑〉」

ふぅ・・

洋介は小さな溜息をついた。

「どうなの?レギュラー取れそう?」

亜美は優しく聞いた。

「どうかな、分かんない。」

洋介も優しく言った。

ひゅぅぅ~

少し冷たい風が吹く屋上

亜美は体を少し丸めた。

「寒い?」

「ちょっとね。」

そういうと洋介は制服の上着を脱ぎだした。

「いいよ、洋介風邪ひいたら大変。」

亜美は、洋介が制服を脱ぐのを止めたが、

「大丈夫。そんな軟じゃないから。」

そう言って、亜美の膝に上着をかけた。

「ありがとう。」

(そーいえば、洋介が風邪引いたの小学生の時以来見てないな。)

ふと洋介を見ると、今にも瞼が閉じそうになっていた。

「洋介寝ていいよ、その為にサボったんだから。」

亜美は久しぶりに見た洋介の無防備な姿に安心感を抱いていた。

「あぁ、わりぃ・・。」

「いいって。」

真っ直ぐ前を向き答える亜美

「・・なぁ、将也と何かあった・・?」

(最近・・彗の様子が変なのはそのせいの気がする・・。)

「えっ?」

突拍子もない質問に目をパチクリさせる亜美。

「特に何も・・」

コテッ・・

亜美は左肩に重みを感じそっと左に目をやると、洋介の寝息が聞こえた。

亜美の肩に頭をもたげ、気持ちよさそうに眠る洋介。

(質問しといて・・何なんだか〈笑〉)

亜美は穏やかな顔つきで6月の空を見上げた。

(でもなんで、将也のこと聞いて来たのかな?)


《2限目終了》


「洋介、起きて。」

亜美は洋介を起こした。

洋介が目を開けると

ドキッ

今にも顔同士がくっつきそうな位置に亜美の顔が

サッ

洋介は柵を這うように亜美の肩から体を起こした。

「良かった、起きた。」

亜美は全く気にしていない様子で、いつも通りの笑顔

「あぁ・・。」

洋介は片手で顔を覆いながら返事をした。

「戻ろう。3限目は出なきゃね。」

そう言って亜美は、洋介に制服を返し立ち上がった。

洋介も無言で制服を羽織り、立ち上がり、教室に戻った。


《1年3組》

ガラガラ

亜美が教室を見渡すと、3人の姿が無い。

「ねぇ、美歩、3人どこ行ったか知らない?」

亜美は近くに座っていた河合に尋ねた。

「知らないわね。お手洗いかしらね?」

「分かったありがと。」

亜美はとりあえず席に着いた。


《1年1組廊下》


〈いる?あいつ教室にいる?〉

〈うーん・・あっいるよ〉

〈じゃぁ、亜美一人でサボってるの?〉


廊下の窓から1組内を覗く、知佳と有希と真奈美。


トントン

ビクゥゥーーー

背中を誰かに突かれて飛び上がる知佳。

振り返ると

「な、何してるの?」

「あっ、絵里っ」

「絵里ちゃん。ハハ」

「おっひさぁ~♪」

絵里は不審な3人を石ころのように無表情な顔で見ていた。

「い、いや~・・・。」

知佳は笑顔とは受け取れない歪んだ表情で目を泳がせた。

「ねぇ、さっきの時間、誰か授業出なかった人いる?」

真奈美は普通に切り出した。

その様子に知佳は唖然とした。

「うん、洋介いなかったよ。」

「洋介君!〈喜〉」

知佳はあからさまに喜んだ。

「なーんだ、そう♪ありがと絵里ちゃん。」

「ありがとね。」

「どういたしまして。」

絵里は首を傾げながら、3人を見送った。


「聞いた?洋介君と一緒だったんだよ~亜美!」

「聞いた聞いた、でもだから何って感じよ。」

有希は憂鬱そうに言った。

「あれ~何か言いたげだね~。」

真奈美が言うと。

「だって、それが2人の進展に繋がると思えないし。」

冷静な有希。

「確かにね~♪」

「でも、あいつと一緒じゃなかったってだけでも安心なのよあたし〈泣〉」

知佳は、安堵の感情で漲っていた。


教室に入ると


「どこ行ってたの~?」

知佳の心配なんてつゆ知らず、のほほんと話しかける亜美。

「・・あんたは呑気でいいね。」

からかう様に肩をすぼめて言う知佳。

「え?」

何が何だか分からないまま3限目が始まった。


《1年1組 3限目》


洋介は机に頬杖をついて窓の外をボーっと眺めていた。

「じゃあ橘、この問題解いてみろ。」

し―――ん・・・

「橘~?」

いくら先生が呼んでも反応しない洋介。

〈洋介くん、洋介くん・・〉

隣の席の子が机の下で洋介の腰のあたりをつついた。

「ん?」

それに反応し、隣をじっと見る洋介。

クラス中がその様子に戸惑いながら仕方ないといった表情で固まっていた。

「あ、いや、あたしじゃなくて・・。」

「た~ち~ば~な~・・。」

先生は怒りたいが怒れない呆れた様子で、洋介を再度呼んだ。

「あ・・はい?」

「おまえなぁ、女子を無表情でジッと見るんじゃない!」


(そこっ!!)


クラス中が先生の指摘に唖然とした。


「すいません・・。」

「まぁいいから、この問題解け。」


洋介は黒板の前に立ち、問題を眺めた。

「分からないか?先生の話聞いてない・・・・。」

カッカッカ・・・

先生が話し終える前に、黒板に回答を書き出す洋介。

おぉっ・・

スラスラ解いてゆく洋介に、凄いといった感じの声がもれる。


「・・・出来ました。」

「よ、よし。正解だ。席に戻れ。」

先生も驚いていた。


洋介は席に戻るとまた、窓の外を眺めた。

(・・・何か・・目・・閉じると、開くのが怖くなる・・・。)


洋介は、屋上で起きた時、亜美の顔が至近距離にあった衝撃がトラウマになっているようだった。

亜美に対して初めて感じた、ドキッという緊張感が洋介を戸惑わせていた。


《昼休み 1組ベランダ》


「あれ~亮はとか彗は?」

「・・・売店。」

ベランダには、将也と洋介の2人きり

「よいしょっと、なぁ洋介~。」

将也は洋介の隣に座って冷淡な顔つきで話しかけた。

「何?」

「さっき亜美ちゃんと何してたの~?」

「別に何も。」

洋介は牛乳を飲みながら答えた。

「幼馴染みの特権てやつ?理由なく一緒にサボりとか。」

「そうかも。」

(否定しねーんか・・。)

「つーか、洋介の気持がはっきりしないと、俺が彗とか知佳ちゃんとか亮に睨まれるんだけど。」

将也は迷惑そうに言った。

「・・・。」

無言のまま、表情ひとつ変えない洋介。

「じゃぁ、もし俺が、亜美ちゃんと付き合いだしたとしたら、俺はお前と幼馴染みだろうが2人きりにさせる事は許さないし、今までお前が亜美ちゃんに当たり前にして貰ってたことは全部俺がしてもらう事になる。必要最低限以上の洋介との付き合いは無しだ!それでもいいんだな?!」

将也の具体的な忠告。

「あの・・」

洋介が何か言いかけた時

「おまたせーー」

彗が意気揚々とベランダに乗り込んできた。

「ったく。」

将也は天を仰いだ。

「え?どうかした?」

彗は何が何なのか分からない。

「どうした?」

亮も続いて入って来た。

「せっかく洋介の許可もらおうと思ったのによ~・・。」

将也は落胆している。

「許可!?何のっまさかっ!」

彗はおどおどしている。

「もうこの際、洋介の気持ハッキリさせた方がお前らも楽かと思って。」

将也は頭の後ろで両手を組み半分寝そべりながら言った。

「まぁそーだけど・・。」

「洋介が今それ言えるくらいなら、将也を止めてると思うぞ。」

亮は半笑いで言う。

「じゃーさぁ。正々堂々恋してる俺を邪険にするなよ~。」

将也は寂しそうに言った。

「それも一理あるけど・・。」

彗は言い返しようがない。

その時・・。

「あのさ・・・将也が亜美と付き合うのはどうでもいいんだけど・・・。」

「どーでもいいのかよっ!」

彗は洋介のの肩を鷲掴みする。

「でも?」

「俺は・・今までと同じ様に亜美に接すると・・思う。」

その言葉に3人は固まった。

「だ~か~ら~〈怒〉洋介、お前が今してることは、彼氏が出来たら、彼氏の特権なんだよっ!!」

さすがの将也も感情的になった。

「そーだぞ、洋介それは間違ってる・・。」

彗も将也に合意した。

「そーなのか?」

「まぁ、そうだろうね。」

亮も冷笑していた。


「じゃあ、ダメかも。」


洋介の言葉に3人の目の色が変わった。

「えっ・・・それは、亜美を渡せないってことか?」

亮が確認する。

「・・そういうことになるな。」

洋介は将也を見た。

「でも、お前好きって感情ないんだろ。」

将也は真剣に聞く。

「わかんねぇ。けど、必要だから・・。」

洋介の精一杯の正直な気持ちだった。

(おぉ~洋介~〈泣〉)

彗は感動している。


「分かった。じゃあ、ライバル成立♪で、やっぱ俺洋介には渡せねぇな!好きでもない男に女としての幸せは無いからな。」


将也は立ち上がり、洋介に宣戦布告。

「いいのか洋介?」

亮は心配そうに聞く。

「いいも悪いも、こっからは早いもん勝ちっしょ。俺はLOVEの愛で亜美ちゃんをゲットするし、それが嫌なら、洋介自身で亜美ちゃんを振り向かせろ。彗も亮も手出し無用だ。」

将也は凛としていた。


「分かった。」


洋介の了解とともに戦いの火ぶたが切って落とされた。


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