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運命の方程式  作者: A9
11/23

両想い×失恋=Y

野球部では、レギュラー選抜試験の内容が発表され熱い戦いが始まろうとしてた。その一方、有希とワタケンの過去が真奈美の口から明かされる・・。

テスト結果が発表された日、放課後各自に成績表が配られた。

1年生の人数は、約280人。

亜美14位。

知佳は112位。

有希は86位。

真奈美は264位。


《1年3組 放課後》

アッハハハハハ

知佳がお腹を抱え笑っている。


「ちょっとーバカにし過ぎぃ!」

真奈美が知佳に怒っていた。

「でも無いわ~・・」

有希も一生懸命笑いを堪えている様子。

「これはひどいね・・。」

亜美に至っては、成績表を凝視したまま。

3人は真奈美の試験結果を見ていた。

「10教科中、7教科赤点って・・、大丈夫な訳?」

有希は必至に笑いを堪えながら真奈美に言った。

「さぁ?別に大丈夫なんじゃなーい。」

真奈美は気にしていない様子。

「でも英Ⅰと英文法だけは、90点台って・・・。」

亜美は点数の落差に驚いていた。

「凄いでしょっ♪真奈美、海外良くいくから♪」

真奈美は、ブイサインをして言った。

「いや、他ひどすぎて凄さ感じないから〈笑〉」

知佳は笑いが止まらない。

「海外旅行とかいーなぁ!セレブだねぇ。」

羨ましがる亜美。

「旅行じゃないよ、コンクールとか留学とかでだよぉ。」

「いや、そっちの方が凄いから!」


ピーンポーンぱーんポーン


《1年3組 前田真奈美さん、至急生徒指導室まで来てください。》

「あっ、呼び出しだよー真奈美ぃ」

「今の声、進路指導の筒谷じゃん?」

「そーいえばぁ呼ばれてたんだったぁ~だるーい。」

「ほらさっさと行きな、待ってるから。」

有希は真奈美を送り出した。


「あれ絶対試験結果の事だよね。」

知佳は真奈美の成績表を片手に持って言った。

「まぁそうだろうね。赤点7個はやりすぎ。」

有希は呆れながら言った。

「知佳、うちらも真奈美の戻り待とうか?」

「そーだね。」

「いいのー?」

有希は嬉しそうに言った。

ガラガラ


「あれ金井君どーしたの?」

「成績表持ってくの忘れたんだよ。」

野球の練習着を着た金井が教室に入って来た。

「あっ彗は大丈夫そうだった?」

知佳が金井に話しかける。

「えっ彗??あぁなんかギリギリ大丈夫だったみたいだよ、さっき意気揚々と監督に見せてたから。」

「良かったぁ。ねぇ亜美。あっ洋介くんは?てか金井君は?」

「洋介も俺も大丈夫だったよ、ヨッシーはアウトだったけど〈笑〉」

金井は笑顔で言った。

「そうかぁ良かったね~」

知佳は嬉しそうに答えた。

「彗が大丈夫でほんと良かった・・・。」

亜美は安堵の表情をした。


「じゃあな。」

「うん部活頑張れよー!」

金井が教室から出ていくと。

「さっきの話どーいう事?」

有希が知佳に聞く


「なんか、野球部全教科、50点以上取らないとレギュラー選抜試験に出してもらえないんだって。」

「まじ?大変だね~。」

「でも亜美、洋介くんのこと心配して無かったけど、心配じゃ無かったの?」

知佳は不思議そうに聞く。

「うん。だって洋介あたしより頭いいよ。」

「あれ?でも今回掲示板に名前無かったよね?」

有希は腑に落ちない様子。


「うん、たぶん最近部活も忙しいし、彗に付きまとわれてたからじゃん?」

「てゆーか、アンタら何なの!普段勉強なんてしてなさそうなのに!」

知佳は訳のわからない怒りに包まれていた。

「知佳、亜美のお兄さんが星城高校って名門なの忘れてない?それ考えたら打倒だって!」

有希は知佳の顔に近づき座った目をして言った。

「・・・あぁそー言えば・・。」

「関係ないよ、楓兄は〈笑〉どっちかって言うと、洋介のお姉さんのせいかな・・。」

亜美は苦笑いをしながら言った。

「洋介君てお姉さんいるの?意外・・・。」

「妹もいるよ、3人兄弟だからね。」

「えぇっ!姉と妹もあんな感じで無口で無表情なわけ〈笑〉」

知佳はちょっと小ばかにしながら言った。


「ぜんっぜん!お姉さんに関しては、楓兄も洋介もタジタジだから。」

亜美は笑って言う。


「そーなの?お姉さんいくつ?」

「大学1年生だから19歳かな。」

「何でお姉さんのせいで頭が良くなるわけ?」

「それは~、楓兄が中学の頃かなんかに、チョー悪い試験結果で、それを知ったマナねぇが・・。」


《回想》

ガチャンッ!!

「楓―――っ〈怒〉」

「あら、愛華ちゃんどうしたの~?楓なら2階で友達とあそ・・」

ダダダダダッッ・・

愛華は、楓の居場所を知るなり2階へ駆け上がった。

(愛華ちゃん・・どうしたのかしら・・?)

バタンッ

―ビクッッ―

いきなり部屋に押し入って来た愛華を見て、楓と友達は驚いた。

「なな、何だよマナねぇ〈汗〉ノックぐらい・・。」

「はぁ〈怒〉楓!あんたぁ試験ひどい結果だったらしいわねぇ!」

愛華の迫力に友達は怖気づく。

「それが・・?」

「橘家と関わるいじょう、そんな成績許さないわよ。あたしの価値まで下がるわっ!」

愛華は楓の胸ぐらを掴んでメンチを切った。

「・・・えぇ~そなんなぁ・・」

(言い訳したらぶっ飛ばす・・言い応えしたらぶっ殺す・・)

「なななんか心の声が聞こえるんですけどーー〈泣〉」

バサッ

愛華は楓から手を離し、部屋にいる友達も含め仁王立ちで見下しながら。

「いい、男は顔、性格、ステータスなの!バカなんて許されるかっ〈怒〉」

「は・・はい〈怖〉」

「楓~、あたしが行ってる高校のレベル以下に行ったら許さないからね。」

愛華は悪魔のような表情で楓を見て去って行った。



「てな事があって、恐怖心からチョー勉強したんだって。」

「こわぁ~。マジで洋介君の姉??言ってる内容は真奈美に似てる気もする・・。」

「洋介君があんなんになった事が理解出来る気も・・・。」

知佳と有希の顔は青ざめていた。


「お姉さんは高校どこ行ったの・・・?」

「烏ヶ森第一だよ。凄いよね~。」

「烏ヶ森第一!私立の名門じゃんっ星城よりレベル高いじゃん!」

「うん、楓もそこにしようとしたんだけど、マナねぇが『あんたが私立なんて百年早いっ』って言って星城受ける事になったの。」


(・・・すげー自己中だ・・。)


「で、でも、それからすると洋介君だいぶレベル落とした高校じゃん?」

「うん。なんか甲子園に弟が出たらそれはそれでステータス的にありとかって言ってたかな?ただ、成績は常に30位以内じゃないと許さないとか言ってたから・・・何位だったんだろ・・。」

急に心配になる亜美。


「ヤバいじゃん今回。」

「うん・・・。あたしは何とかなったけど。」

「亜美もそー言われてるの?」

「楓兄がマナねぇにシバカレルから・・。バカな女にイイ男は寄って来ないっ!とか言って。」

「大変だね・・・。」

2人は心が痛くなていた。


「あーー疲れたぁぁぁ」

「あっ真奈美お帰り!」

「たっだいまぁ~。」

真奈美の手には大量のプリント。


「何それ?」

「えー一週間後の追試までにこれ全部課題だってぇ。」

真奈美はうんざりした様子で言った。


「うわー大変そう・・・。」

有希はプリントをみて吐き気がした。


「ほんと、ペンダコなんて出来たらそうすんの?って先生にいったら怒られた。」

真奈美はほっぺを大きく膨らませた。

「当たり前でしょうが!」

有希は思いっきり突っ込んだ。

「何でよ~」

「ほら帰るよ」

知佳が鞄を手に促した。


《野球部》

「チース。」

「金井証拠の品ちゃんと持ってきたか。」

「はい。」

金井は監督に成績表を渡した。

「よし、金井は選抜試験受けて良し。」

「あざっす。」

金井は1年の集まる場所へ駆けていった。

「やったなぁ金井♪」

「はぁ?俺はお前と違って余裕ありありだから。」

「そーゆーなって、合格組は合格組だろ。」

彗は浮かれている。

「ヨッシーは?てか全体的に人数少なくねーか?」

「それがさぁ、選抜試験不合格の奴が監督の想像以上に多かったらしくて、外周20周させられてる・・。」

「マジか。良かった、合格組で。」

「だから、夏季大会のレギュラー1年でも狙えるかもよー!」

彗の目は輝いていた。

「それはねーんじゃね?」

「何でだよ森山?」

森山(もりやま) 博樹(ひろき)1年2組ポジションキャッチャー

「良く見てみろ、現レギュラーは全員残ってるだろ。」

彗はグラウンドを見渡した。

「・・・ほんとだ。やっぱ厳しいかぁ。っつーかお前もキャッチャー希望だしな。」

彗は溜息をついた。

「でも補欠枠ならなんとかいけるかもな。」

「補欠ねー。」

(ぜってぇ負けねぇけど。)


「あっそーだ。3組の相沢と日向がやけにお前の事心配してたぞ。」

「そうか、後で亜美にはお礼言わないと。」

彗は頭をかきながら苦笑いをした。

「洋介の幼馴染みだろ?何でお前の心配してんだ?」

「亜美は俺とも幼稚園からの仲なんだよ。」

「へ~。まるでタッチだな。」

「いや、俺は亜美とラブロマンスする気ないから。」

「集合っっ。」

キャプテンが号令をかけた。

「はいっ!」

監督の前に合格組全員が集合した。

野球は全員で73人。

そのうち合格組は58人。

3年22人中20人

2年26人中20人

1年25人中18人

「えー今回の夏季大会は3年の最後の大会になるが、残念ながら、内田と小山内は試合出場条件を満たさなかった。その為先ほど退部届が提出された。」

ザワザワ・・

1年がざわめく。

しかし、2年と3年は微動だにしない。

「1年はまだ分かって無いかも知れないが、東平高校野球部は、進学校の名も背負ている。赤点をとるような奴は試合参加を学校側が認めていない。それはどんな優秀な生徒でもだ。」

監督は部員をじっと見た。

「もちろん悪さなどしたら即退部。下級生いじめも勿論。そして、レギュラーの座は常に下剋上としている。今回の選抜試験に合格し、レギュラー枠を勝ち取った者も、油断すれば即補欠組と交代だからな。分かったか。」

「はいっ!」

「では、今回の試験内容を発表する。」

監督はノートを取り出した。

部員内には緊張が走る。

「えっと、明日から一週間の試験で、ポジション別に行う。あ~ポジションが決まって無い奴は希望ポジションの試験を受けろ。各ポジション毎に、体力・バッティング・守備力・の総合力で決めるからな。」

「はい。」

「で、ピッチャー3人、キャッチャー2人と各ポジション一人ずつをレギュラー枠とする。計14人だ。そして、2軍枠で、各ポジション1人ずつとする。その中から最終的にベンチ入り出来る6人を選出し、20人を決定する。以上。」

「はい!」

「じゃ、練習に入れっ」

先生の一声で、全員がいつもの練習に入った。


夏季大会のレギュラー枠争いがとうとう始まったのだ。

洋介はピッチャー枠。

彗と森山はキャッチャー枠。

金井はセカンド枠。


1年から3年までの、熱い戦いが。


《その頃》

昇降口に着いた4人の前に。


「有希っ。」

(あっ・・ワタケンだ。)

(ワタケン?)

(きゃぁ♪)

ワタケンが現れた。

3人は目だけを動かし有希を見る。

「何?」

いつもと変わらない様子の有希。

「あ、あたし達先に行くね~♪」

真奈美はニコっとしながら、亜美と知佳の手を引っ張った。

「何でっ!ちょっと、アンタの事待ってたのよっ!!」

「えっ?なにぃぃ」

真奈美達は聞こえないふりをして、ダッシュで去っていった


有希は目を大きく見開き固まっていた。


「ちょっと、真奈美~あんた何考えてるのさぁ~。」

(つーか逃げ足早すぎ・・・。)

正門までたどり着くと、真奈美は止まった。

「はぁ、はぁ、疲れたぁ~・・♪」

「疲れたぁじゃないよ~、いいの有希おいてきちゃって?」

亜美は心配そうに昇降口の方を見た。

「ふう~・・・、いいじゃん♪」

「何が?」

真奈美の無責任な言動に不信感を抱く2人。

「もう、3年だよ?もどかし過ぎると思わない?」

「3年?」

亜美は首を傾げた。

「3年って、ワタケンが有希に告白してからってことでしょ?でも、有希にその気が無いなら余計な事しない方がいいんじゃない。」

(あぁ・・そっか。)

知佳は悩まし気に言う。

「まぁそれも3年なんだけど~・・。重症なのよあの子。」

真奈美は困った顔をした。

「重症?何がよ。」

知佳は眉間に皺を寄せる。

「あんた達もたいがい鈍いよね~、有希がワタケンを好きなのも3年目ってこと。」

知佳と亜美は目を大きく見開いた。

「うそぉ~!それ真奈美の勘違いじゃないの?」

「そーだよ、仲はいいけど好きって感じじゃ無くない??」

真奈美はバカにするように溜息をついた。

「なんなのさっ〈怒〉だって、有希その後彼氏いたじゃん、ワタケンもいた時あったよね?」

「それなのよっ原因はっ!」

真奈美は知佳を指さした。

「原因?どーゆーこと??」

亜美は全く話に着いていけていない。

その様子を見た真奈美は・・・


「ワタケンが告白→自己完結→でも有希は好きだった→有希はモテる→ワタケンは友達として接する→有希は失恋したかのような気持ちになる→男から告白される→付き合う→それを見たワタケンも失恋したと思う→ワタケンを好きなマニアックな女と付き合う。」


淡々と経緯を説明した。


「・・・え?」

「でも、まず有希がワタケン好きってあたりが・・・。」

「それは間違い無いの、視線見てれば分かるよ。だってずっと友達なんだもんあたし達。」

真奈美は、優しい笑顔を見せた。

その笑顔には、いつもの真奈美とは違った有希との絆が溢れていた。


「そーなんだ。真奈美がそんな風に言うなら、本当なんだね。」

知佳も納得し、笑顔を返した。

「・・ねぇ、ちょっと分かんないんだけど・・いい?」

亜美は気まずそうに2人の目を見た。

「何?」

「何で、両想いだったのに、お互勘違いで今に至っちゃうの?好きって思ってない人と付き合えるものなの?」

真っ直ぐな亜美には理解が出来なかった。

「それは・・。」

知佳は言葉に詰まった。

「付き合えるでしょ、みんながみんな最初から両想いなんてまれ。それに、有希は自分の事をワタケンが本当に好きか確信が持てない状態で、今までと変わらない態度とられたらヤケクソにもなるでしょ。」


「そうだね。」


「しかも、それを知ったワタケンまでヤケクソになって、他の女と付き合うから、有希はもうあの告白は全部嘘だって思っても仕方ないよ~。そしたらもう、ワタケンへの恋心封印するしかないでしょ。」

「真奈美は、ワタケンが本当に好きだって事伝えなかったの?」


「言ったよー、ワタケンが他の女と付き合うって知った時に、慌てて有希に言ったら、『あの告白の時はそうだったかも知れないけど、今はもう違うんだよ。』って割り切っちゃって。ほんとは後悔してんだよ有希。あの時自分がちゃんとワタケンの気持に気づいて、自分から好きって言ってたらって。」


「なんか難しいね恋って。」

亜美は神妙に言った。

(そっか、だからあの時・・『うちらの好きなんて、思春期の魔法なんだよね。どれだけ好きって思ったってすぐ心変わり出来ちゃうんだから。ただ、手遅れになって悲しむような想いは、して欲しく無いかな。』って言ってたんだ・・。)

知佳は有希の言葉を思い出していた。

「どーしたの知佳?」

無表情で黙り込む知佳に声をかける亜美。

「何でもない。よし、有希の恋を応援するぞー!」

知佳は笑顔で腕を振り上げた。

「そーこなくっちゃ!」

亜美と真奈美も嬉しそうに両手を振り上げた。

「おー」


「ってゆーか、うちら上履きのままなんだけど。」


ハッッ!!


その後、有希が昇降口から出てくるまでに時間はかからなかった。

何事も無かったかのように颯爽と歩く有希の姿を隠れて見る3人。

そこにワタケンの姿は無かった。


有希が通り過ぎるのを待ち、靴を履きかえ家路に着いた。


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