表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

前日 女神の自宅警備員募集中

大体4話ぐらいになると思います。

 天界 癒しの間にて


「はぁ、毎日毎日、何でこんなに鬱病の亡者が出てくるのかしら?癒しているこっちが鬱になりそうよ」


 ため息と同時に誰に聞こえる訳でも無い独り言をつぶやく。

 彼女は天界在住の偉大なる女神だ。主な仕事は亡者に癒しという名のカウンセリングをすることである。


「もう逃げだしちゃおうかな……い、いや違うわよ!休暇!もう何千年も仕事してたんだもん。少しくらい休んだって罰は無いわよ!……まぁそれを決めるのは別の部署だけど…」


 偉大なる女神は一通りの正当化を終えると、地上に向けて飛び立った。全ての仕事を後輩の天使に押し付けて。

 _______________________________________

 地上

 大学生 檜山 康一の部屋


 飲みかけのビール缶や散らばった漫画、電源を入れっぱなしの携帯ゲーム機、自堕落な生活を象徴しているかのような物質の中心に檜山(ひやま) 康一(こういち)は寝ていた。


「おい起きろ。そろそろ朝だぞ」


 不意に康一の意識を覚醒させたのは中学からの悪友である、長尾(ながお) 清十郎(せいじゅうろう)である。その古風な名前とは裏腹に、外見は細身のいかにも頭の良さそうな眼鏡の美青年だ。


「ん?あぁ?朝だから…何?」


 一方の康一はボサボサの髪や、何日も剃っていない髭を気にすることもなく、ただのんびりと過ぎる大学生生活を浪費し続けていた。


「康一は今日講義あるだろ?起きた方が身のためだと思ってな」


「いや、1、2年の時に単位は余裕を持ってとっている。だから、今日一日くらい休んだっていいんだよ。それより清十郎、俺が寝落ちしてからずっとゲームしてたのか?」


 康一は自分が寝落ちする前から清十郎の手に握られている携帯ゲーム機に目をやった。


「ゲーム機と充電器さえあれば僕と愛菜ちゃんはずっと一緒なんだ!誰にも邪魔は出来ない!」


 清十郎は叫ぶと同時にクイッと中指で眼鏡をあげる仕草をした。


「本当にいつも思うが、外見に全く似合ってないな…清十郎がそんなものやっているって知られたら、清十郎を知っている女子はどう思うだろうな」


「僕は全ての女子に平等なだけだよ。たとえそれが二次元の世界でもね。あ、因みに今日は合コン二件入ってるから、夜にまた飲みながらゲームなんて無理だよ」


「何で一日に二回も合コンしてんだよ!全く、じゃあ今日は何もすること無いわ。寝てるかな」


「学校行けよ…まぁ真面目な話、バイトでもしてみたら?結構稼げるのもあるからただ寝てるより有意義だと思うよ?」


 清十郎はそう言うと、床に転がっている本の中から求人雑誌を手渡した。どうやら清十郎が何故か持ってきていたらしい。


「うーん。バイトかぁ。何かいい奴あるかな?って何だこれ?」


 何気なくページをめくるとそこには目を疑う好条件のバイトがあった。


(急募!! 自宅警備員 時給 九千五百円 男女問わず 交通費支給 三食付き 詳しい仕事内容はこちらで)


「どうした?うわっ怪しいなこのバイト…時給九千五百円とかどう考えてもおかしいだろ。康一、このバイトはやめとけ」


 清十郎は当然、康一がやめると思ったのだが、康一の思考は普通の人とは少しばかり違っていた。


「いや、むしろやるだろ。時給九千五百円だぞ?一日働いたら、すごいことになるぞ」


 清十郎はまたもや眼鏡をクイッと上げ眉をひそめた。


「嘘でしょ?本当にやるの?やめた方がいいと思うけど」


「いやいや、こんな好条件のバイト見逃したら後で後悔するって」


「呆れた。僕の予想では、君は逮捕されるか、最悪死ぬね。」


「んなわけねーだろ。ここは日本だぞ?きっと大丈夫だって。ちょっと電話してみるよ」


「もし君が死んだらゲーム全部貰っていいかい?」


 _______________________________________


 地上 あるマンションの一室



「よし、これで完璧」


 天界から逃げてきた女神は部屋の模様替えに没頭していた。彼女が天界から逃げて3日になるが、天界から見つけられないように一度も外にでていない。何も無いところから神の力で生み出した金で買うというギリギリ合法的に手に入れたマンションに身を隠し続けている。


「部屋の雰囲気も大分かわったわねー……………でも寂しい………………もう、3日も誰とも話して無い…でも外には出れないし。誰かと話したいなー………しょうがない、あの手を使うか」


 神の力でその場にあった求人雑誌のある一部分を書き換えた。やや奇妙な文面に。


 _______________________________________



 次の日


 康一は眼前にそびえる堂々たる光景に震えていた。自分とは確実に場違いな超高級マンション。その威圧感は貧乏大学生 康一 にとっては入りづらいことこの上ない。


「ここが…俺のバイト場所?間違えたかな…でも確かにここだよな…」


 おそるおそる玄関に近づき、書かれていた部屋の番号を押した。


「あ…あの…えと、求人にここがバイト先だと書いてたんですけど…」


「あ、は〜い。じゃあこっちでバイトの説明するから上がってきてね。君が三人目だからあなたで最後かな」


この後、友人のアドバイスを素直に肯定するべきだったと康一は後悔することになる。このバイトは怪しい仕事だからなどではなく、世界一聖なる仕事であるが故に。


評価してもらえると嬉しいですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ