変わったこと
わたしが中学校へ行かなくなってから、お父さんは、父親は家族の船頭さんにならないといけないと、急に威張りだした。
お父さんは若い時からやたら仏教の本ばかり読んでいて、まるで自分が神様か仏様みたいにお母さんやわたしに説教していた。
お母さんは朝と晩、熱心にお経を上げて、急に優しくなった。
わたしはお母さんが怒らなくなってらくになった。
家の外の人には会わないし、家の中でどんなことをしても誰も怒る者はなかった。
お母さんは鬼の顔から優しい顔になるのが大変なようで、鏡を見て、に~っと笑顔を作る練習をしていた。
お母さんはわたしと一緒に寝るようになった。わたしはわざと甘える振りをして抱きついて寝た。
小さいときやってもらわなかったことをやっていただけで、本当はちっともうれしくはなかった。
家族の者はわたしが子供返りをしていると思ってたようだけど、わたしはちゃんと分かっていたし、心の中は段々大人になっているのを感じていた。
今に見てろ!という気持ちがぐんぐん強くなった。
でも自分独りでは外に出ていくやり方がわからなかった。
あれからわたしがどんな思いをして大人になったか、本当のことは誰もわかってはくれないだろう。
お母さんはきっと、自分は頑張ったと思ってるだろうけど、今更わたしの心の傷を繕うことなんてできっこないんだ。
これまで腹が立ったりいらいらしたりすると、お母さんに酷いこと言ってすっとしていたけど、このごろは可哀相な気がしてきた。
何だかんだと言ってる内に、お父さんもお母さんも年をとって死ぬんだろうなと思う。
わたしは相変わらず生きてるのしんどいけど、死ぬまで生きてなきゃいけないんだと思って暮らしている。早く年をとりたいなあと思うことがある。
娘が成長して、子供の時の気持ちを話しました。
私は驚いたし悲しかったけど、過ぎたことは仕方ないので黙って言い分を聴いていました。
今、娘は良い子育てをしているようです。