心の叫び
わたしは幼稚園の頃から、便所の中でよく考え事をしていた。
何の為に生まれてきたんだろうって考えながら、じっと便器に座っていた。世の中にはちっとも面白いことがないと思っていた。
お母さんがわたしを怒ったとき、わたしはお母さんのことを鬼かと思った。早くご飯を食べなさい、歯を磨きなさい、と毎晩ロボットのように急かされ、お姉ちゃんと喧嘩するとわたしばかり怒られた。
抱きしめてほっぺにキスなんてしてくれたこと覚えてない。
洋服は買ってくれたけど、蛙のような緑色のシャツを着るのが嫌でたまらなかったけど、怒られるのが怖くて、黙って言われるままに着て幼稚園に行った。
わたしは洋服より、優しいお母さんがいいと思っていた。
お母さんの英語塾の仕事が八時に終って部屋に戻ってくると、すぐ寝なさいといわれ、子供部屋のベッドに寝かされた。
わたしが良い子にしていたら、おかあさんは怒らなかった。だからわたしは駄々をこねちゃいけないんだと思っていた。良い子にしていると、悲しくなって泣きたくなった。
お姉ちゃんと喧嘩して怒られたとき、わたしはふたりで育てていた畑の野菜の苗を全部引き抜いてやった。何か無茶苦茶をすると気分がすっとした。
わたしはお母さんの顔を見ると、いつもにっこしてあげた。
お母さんはわたしの半分ぐらいの笑い顔でにこっとした。
わたしがいつも良い子でいたら何も怒られないんだと思っていた。でも夜、布団の中に入ったとき、救急車の音が聞こえてきた。ガス栓が締まってないと安心できなくて、夜中に起きて確かめに行った。
裏山に転がっている昔の墓石にお水をあげたら幸せになるような気がして、毎晩一人でこっそり山へ行ってお水をあげて拝んでいた。仏様がわたしを守って下さっているようで安心して眠れた。
わたしは大きくなるまでずっと、人間はどうして生きていなきゃいけないの?という疑問を持ち続けていた。