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3人の不滅の異世界の王

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

ムスク・アマルの森の向こうに夕暮れが沈み、山の稜線が金色に染まる頃、

ついに短編映画『The Thyme of Timeタイムのタイム』が完成した。


制作陣が集まった試写室には、静かな緊張が流れていた。しかしラストカットが終わった瞬間、

その場の空気は一気にほどけ、歓声と拍手が弾けた。


「やった……!」

誰かがそう呟き、その声が合図のように仲間たちが抱き合い、笑い、泣き出した。


作品の出来は想像以上だった。

トム・ピプキンの物語をもとに、時間と記憶を香草タイムの香りとともに紡いだこの短編は、

すでに「アヌシー」「オタワ」「ザグレブ」など世界のアニメーション映画祭の名前とともに噂され始めていた。

さらに、スペインの「シッチェス映画祭」やカナダの「ファンタジア映画祭」にも届くのでは――という声まで飛び交う。


その夜、会社全体で大きな祝宴が開かれた。


灯りが揺らめく食堂で、人々は音楽に身を任せ、笑い、杯を何度も交わした。

リョウも例外ではなく、ミロス、グスタボ、そしてチャールズの三人のトップたちと一緒に

すっかり酔いがまわっていた。


ふと、リョウの視線が踊りの輪の中へ吸い込まれる。


ルセリとキアラが、手を取りながらワイニョを踊っていた。

二人の動きは軽やかで柔らかく、土を踏むたびに大地の鼓動まで聞こえるようだった。


――まるで、二頭の天馬が戯れながら草原を駆けているみたいだ。


リョウは胸の奥が熱くなるのを感じた。

酔っていたが、その美しさが何かを描き出したくて仕方なかった。


「ちょっと……スケッチブック……」


呟いて森の方へふらつきながら歩き出した。

部屋に戻るつもりだったが――酔いのせいで、気づけば深い森の中へ迷い込んでいた。


風が葉をかすめ、遠くでフクロウが鳴く。

夜の匂いが濃く、星が枝の間から覗いている。


そのとき――


「……おい、こっちだ……」「あっ、転ぶ……!」


どこかで慌ただしい声がした。

リョウがそっと近づくと、ミロス、グスタボ、そしてチャールズの三人がフラフラと歩いていた。

完全に酔っている。


次の瞬間、三人は足を滑らせて――

ゴキリッという嫌な音を立てて倒れ、動かなくなった。

彼らの首は間違いなくあの落下で折れていた。


「えっ……!? う、嘘だろ……?」


リョウは凍りついた。

あまりに静かで、まるで本当に命が途切れたかのようだった。


だが、数秒後。


「……いててて、またやっちまったな」

「首の骨が折れるの、ほんと慣れないよねぇ……」

「ほら、リョウ坊、そんな顔するな。大丈夫だ、大丈夫」


三人は何事もなかったように上半身を起こし、首をコキコキ回しながら立ち上がった。


リョウ「な……なにが……どうなって……?」


ミロスは苦笑し、夜風に揺れる木々を見上げて言った。


「俺たちはな、死なないんだ。

三人とも――不死なんだよ。」


リョウは言葉を失った。


酔いの勢いなのか、三人はゆっくりと、自分たちの過去を語り始めた。


■ 三人の不死の歴史


「大昔、俺たちはただのヨーロッパの若者だった。

兵士でも学者でもない、ごく普通の人間だ」


「それがある日、理由もなく“死ねない体”になった。

病でも、戦でも、事故でも……死ねなかった」


グスタボが夜空を指さす。


「不死ってのは、面白いもんじゃない。

命が尊いのは、終わりがあるからだ。

終わりがない人生は、ただただ重い」


「だから、俺たちは考えた」

チャールズが続ける。

「きっと何か意味があるんじゃないか、と。

世界を良くするために俺たちは選ばれた、と」


「革命に参加したこともあるさ。芸術家を支えたり、科学者を助けたり。

正義の味方みたいなこともずいぶんやった」


「でもな……」

ミロスがゆっくり首を振る。

「何をやっても、不死は終わらなかった」


長い沈黙が流れたあと、チャールズがふっと笑う。


「そこで悟った。

――意味なんて、最初からなかったのかもしれないって」


「ただの偶然。宇宙の気まぐれ。

そう思ったら、肩の力が抜けたよ」


「だから今はな、好きなことをやってる。

不死を忘れるために、面白いことを探し続けてるんだ」


「それで……なんでペルーに会社を?」

リョウが尋ねる。


三人は一斉ににやりと笑った。


「ここなら、誰も思いつかないだろ?」

「腐敗も貧困もあるが、だからこそ“やったことのないこと”ができる」

「つまりは――退屈しないためさ」


リョウは思わず笑ってしまった。

その笑いのまま、四人は草の上に倒れ込み、そのまま寝入ってしまった。


森の夜は優しく、風が彼らの眠りを包んだ。


■ 朝の帰還


鳥の声でリョウは目を覚ました。

眩しい朝日が木々のあいだから差し込んでいる。


「……夢、か?」


昨夜の会話はあまりに奇妙で、あまりに幻想的だった。

酔っていたこともあり、ほとんど現実味がない。


少し離れたところで、ミロスたち三人も目をこすりながら起き上がっていた。


「おはよう、リョウ坊」

「よく寝たねぇ……」

「帰るぞ。みんな待ってる」


三人はまるで何事もなかったかのように笑っていた。

不死の話も、首の骨が折れたことも、一言も口にしない。


リョウは黙って彼らの後ろを歩いた。

昨晩の出来事を夢だと信じたい気持ちと、

どこかで“本当かもしれない”という直感が入り混じる。


森を抜けると、ムスク・アマルの建物が朝日に照らされて輝いていた。


そしてリョウは、静かに息を吸った。


――今日も、物語が動き出す。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。

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