多くの世界が混ざり合う
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。
涼とキアラは、クスコへ向かう飛行機に乗り込む。
最初に見えた機体は、
冷たく光るダイキャストの金属。
しかし次の瞬間、
それは巨大な龍となり、
墨と水が滲むような日本画の空を翔け抜けた。
やがて龍は銀色の雲に変わり、
油絵の筆触が重なる世界で漂う。
厚い絵具の匂い、重たい色彩、
そこを裂いて、
流星のような彗星が生まれる。
その彗星は無限の宇宙を駆け抜け、
ポリゴンと光で織り上げられた
三次元の虚空を走る。
そして姿を変え、
空を舞う鷲の羽ばたきとなる。
アニメーションの二次元、
鮮やかな線と影が大地を切り取る。
次に現れたのは、
ナバホの伝承に語られる角ある蛇。
その身は光に縁取られ、
ロトスコープの幻影として
ゆるやかに蠢いた。
白き獅子は、粘土の世界で咆哮する。
指先の跡が残る肌、
土と汗が刻んだ命の温度。
そこに、確かに心臓の鼓動があった。
そして最後に現れたのは、
北方の王、魔術を操る支配者。
竜の背に跨り、
糸に導かれる人形劇の世界で
威厳を放つ。
——現実と幻想の境は溶け、
飛行機は幾千もの姿を持ちながら進む。
やがて涼は瞼を閉じた。
夢の底に、クスコの森が広がる。
木々と草花は
四次元に縛られぬ存在。
彼らは過去の根と未来の枝を結び、
時を超えて言葉を交わす。
千年前の風を知り、
万年後の陽を見通す。
やがて人が滅びても、
地球が呼吸を続けることを。
——森は未来を歌い、
その歌に包まれながら、
涼は眠り続けた。
「……涼さん、起きて。」
キアラの声。
目を開けば、窓の外に広がる
クスコの大地。
山の息吹が、
彼を迎えていた。
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