表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

勇者とディーゼルパンクの魔王の終わりのない最終決戦

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。


翌朝。

リョウは頭の奥で鈍い鐘の音が鳴り続けるような、ひどい二日酔いで目を覚ました。

身体は重く、喉は乾き、昨夜の宴の余韻がまだ血の中に漂っている。


しかし、それよりも重くのしかかるものがあった。


――システマだ。


部屋の隅で、油と金属の匂いを含んだ空気が揺らぎ、

ディーゼルエンジンのような、低く荒い機械音が響く。


「……起きたか、リョウ。」


声は金属を削るようにざらついていた。

世界の輪郭がにじみ、光がひずむ。

まるで現実そのものがノイズを含んだ映像になったかのようだ。


「まだ気づかないのか?」

システマは一歩近づくたびに、現実の空気が波紋のように揺れた。

「何もかも偽物だ。

お前の幸せも、友情も、愛も。

ここは、お前が壊れかけた脳が作り出した“逃避先”だ。」


リョウは布団の端を握りしめながら、乾いた唇を開いた。


「……やめてくれ。」


「やめない。」

システマの赤い瞳が、鋭く光る。

「お前程度の人間が、こんな“ご褒美みたいな人生”を得られるわけがない。

現実がお前を千回砕けば、お前は千回倒れる。

それだけだ。」


リョウの心に、冷たい恐怖が走る。

胸の奥が締めつけられ、呼吸が浅くなる。


世界がぐにゃりと歪み、

ムスク・アマルの作業室、キアラの笑顔、ルセリの歌声――

すべてが一瞬でノイズ混じりの断片映像へと変わった。


「ほら見ろ。」

システマの声が頭の内側を直接叩いた。

「お前の現実なんて、この程度なんだよ。」


リョウは目を閉じた。


すると、夜の丘で聞いたあの声が、静かに胸の奥から浮かび上がってくる。


――覚えていろ。君の道は、君だけのものだ。


ラマの姿。

月光の中でゆれる柔らかな毛並み。

不確かなはずなのに、どこか揺るぎない存在感。


リョウはゆっくりと目を開けた。


「……システマ。」


「なんだ?」

金属的な声が、薄暗い部屋に鋭く響く。


「お前はこう言ったよな。

“現実は倒せない”って。」


システマの瞳がわずかに揺れた。

「そうだ。お前は現実に勝てない。」


リョウは頭痛をこらえながら、しかし確かな声で言った。


「――俺はお前を倒したいわけじゃない。」


しばしの沈黙。

部屋の空気が灯のように揺れ、風もないのにカーテンがふわりと持ち上がる。


「……何?」

システマの声がわずかに低くなる。


「お前がそこにいてもいい。

消えなくてもいい。」

リョウは胸の奥に溜めていた息を静かに吐き出した。

「怖がりでも、不安でも、システマが囁いてきても――

俺は、俺の人生を続ける。」


システマの機械音が、ひとつ、またひとつと弱まる。


「永遠にだ。」

リョウは続けた。

「お前が“永遠に”俺を苦しめると言うなら、

俺は“永遠に”生き続ける。

倒れても、また歩く。」


「……お前は……」

システマの輪郭が、白いノイズに包まれはじめる。

「本当に……愚かだ……」


「そうだよ。」

リョウは微笑んだ。

「だから、生きられるんだ。」


金属音が途絶えた。


システマの姿が、静かに、砂のように崩れて消えた。

あるいは――

まだどこかにいるのかもしれない。

ただ、もう彼を支配するほどの力は残っていなかった。


部屋に静寂が戻る。

頭痛も、胸の圧迫も、まだ完全には消えない。


しかしリョウは、ベッドの縁に座り、

柔らかな朝日の中で小さく息をついた。


「……不確かでいい。

それでも、進む。」


その声は、どこか晴れやかで、

これまでの人生で最も静かに輝いていた。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ