勇者は千年の精霊と出会う
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
ムスク・アマルの敷地は、年末の夜に魔法をまとっていた。
ペルーの伝統楽器が奏でるリズム、賑やかな歌声、カラフルな布で飾られた提灯。
テーブルには山盛りの料理、香ばしいトウモロコシ、甘いチチャ・デ・ホラ。
暖かな灯りに包まれて、人々は笑い、踊り、杯を交わす。
リョウもその輪にいた。
キアラとルセリと肩を並べ、ほろ酔いながら笑顔を浮かべる。
三人の影が揺れ、夜空に明るく浮かんだ月がその輪を柔らかに照らした。
しかし、リョウの心はどこか落ち着かなかった。
甘い酒の酔いと幸福感の裏で、彼の中には小さな不協和音が響いている。
「これが本当に、俺の人生なんだろうか…」
システマの囁きが、遠くこだましていたような気がした。
ふと、リョウはその輪から離れ、踊る人たちの隙間を抜けて建物を出た。
タイルの道をふらつきながら、彼は近くの丘へ向かった。
月明かりだけが頼りの道。冷たい夜風が頬を撫でる。
丘の頂上に着くと、一頭のラマが静かに立っていた。
銀色の月がその柔らかな毛を優しく照らし、まるで幻の生き物のように神秘的だった。
リョウは足を止め、ゆっくりとラマに近づいた。
酔いが少しふらつかせる足取りで、彼は膝をつき、深く息を吸った。
「山の魂よ…千年の時を知るラマよ。
僕の話を、聞いてくれ。」
彼の声には、これまで誰にも打ち明けられなかった重荷が込められていた。
孤独、恐怖、愛、期待――そのすべて。
ラマは静かに反応した。
耳をぴくりと動かし、目は優しく輝いていた。
その存在は言葉を超えて、何かを伝えているようだった。
リョウはつぶやいた。
「僕にはわからない。
この世界が、どこまで本当なのか。
君は…その答えを知っているのか?」
月の光の中、ラマの影が揺れる。
風がラマの毛をそっと揺らし、木々が静かにざわめいた。
そのとき、リョウの耳にかすかな声が降りてきた。
正確にはラマの声なのか、自分の心の中の声なのか分からない。
何かを言いました
その言葉は短く、しかし、彼の胸を深く震わせた。
リョウは涙をこらえながら頷いた。
そして、ラマにそっと頭を下げた。
月の夜を背に、彼はゆっくりと立ち上がり、足元の草を踏みしめながら下山を始めた。
その背中には、少しだけ光が差しているように見えた。
――その言葉は、彼のこれからを支える、小さな種になった。
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